「土地は預貯金や株式より有利な資産と思う」が30.1%で過去最低に
国土交通省が公表した、平成27(2015)年度の「土地問題に関する国民の意識調査」によると、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か」と聞いたところ、「そう思う」と回答したのは、調査開始以来最低となる30.1%だったという。土地は有利な資産なのかどうかに焦点を当てて、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」を公表/国土交通省
根強い持ち家志向。8割が土地も建物も所有したい
まず、「住宅の所有」についてどう思っているか、確認しよう。
「土地・建物については、両方とも所有したい」と答えたのは79.5%、「建物を所有していれば、土地は借地でも構わない」と答えたのは4.5%、「借家(賃貸住宅)で構わない」と答えたのは12.7%だった。約8割が持ち家志向であるが、この傾向は過去の調査結果と比較してあまり変化がないという。【画像1】住宅の所有に関する意識(出典:国土交通省「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」より転載)
土地・建物の両方を所有したいと答えた1275人に、その理由を聞いたところ、
1:「子どもや家族に土地・建物の形で財産を残したいから」(51.9%)
2:「土地・建物は他の資産と比べて有利な資産だから」(37.4%)
3:「土地・建物が所有できるなら、家賃等を払うよりローンを支払う方がいいから」(30.6%)
などとなり、この傾向にも変化が見られないという。
持ち家志向の背景には、土地や建物が「財産や資産である」と認識していることがうかがえる結果だ。
“土地は預貯金や株式より有利な資産”という意識は過去最低に
次に、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産である」と思うかどうかについて見ていこう。
「そう思う」と答えたのは30.1%、「そうは思わない」と答えたのは41.3%、「どちらともいえない」と答えたのは21.6%となった。「そう思う」という回答は平成5(1993)年度調査においては6割を超えていたが、その割合は年々低下し、今回調査では調査開始以来最低となった。
平成3(1991)年~5(1993)年の「バブル崩壊期」を経て、土地や住宅の価格がどんどん値下がりを続けたことや、平成7(1995)年の阪神・淡路大震災など度重なる大きな災害に遭遇したことなどから、土地神話が崩れ、土地が有利な資産であると思う人が減り続けているという背景があるのだろう。【画像2】土地は有利な資産か(出典:国土交通省「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」より転載)
「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産であると思う」483人に、その理由を聞いたところ、
1:「土地はいくら使っても減りもしなければ、古くもならない、なくならない(物理的に滅失しない)」(42.4%)
2:「価格の変動リスクの大きい株式等と比べて、地価が大きく下落するリスクは小さい」(17.4%)
3:「土地は生活や生産に有用だ(役に立つ)」(14.5%)
などが上位に挙がっている。
たしかに土地は物理的に滅失しないし、最近では地価の動きも安定してきており、一部の利便性が高い場所では上昇に転じていたりもする。土地を活用すれば、生活や生産にも有用だ。一方、株式などはグローバル経済のなかで価格変動が激しくなっているが、流動性が高い(売り買いがしやすい)ので、上手に運用すればリスクを小さくすることもできる。
結局は、土地も株式も所有しているだけでは資産価値は定まらないし、利用方法を見直したり移し替えたりすることも大切といえるだろう。
不動産取引については、不安や難しさを感じる人が過半数
では、「不動産取引に対する印象」についてはどう感じているのだろう。
「難しくてわかりにくい」は 29.4%、「なんとなく不安」は 30.4%、「特に不安はない」は 26.6%、「わかりやすくて簡単」は 1.4%という結果だった。
不動産取引については、不安や難しさを感じている人が過半数だが、「難しくてわかりにくい」・「なんとなく不安」と答えた958 人に、その理由を聞いたところ、
1:「不動産の価格の妥当性を判断しづらいから」(44.2%)
2:「不動産取引の流れが分かりづらいから」(40.1%)
3:「不動産の品質の良否を見極めづらいから」(34.1%)
などが上位に挙がっている。
株式市場などと比べると不動産市場が不透明で判断材料が乏しいということも、資産としての土地の有利さを実感できないということかもしれない。【画像3】不動産取引が「難しい」「不安」と感じる理由(出典:国土交通省「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」より転載)
土地を有利な資産と思うかどうかは、意見がわかれるようだが、預貯金や株式などと違って、生活や生産の場となる特徴を持つ。つまり、「使い勝手がよい」ことも重要となる。ライフステージに応じて、使い勝手を見直し、移し替えなども検討してほしいものだ。
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