覚醒剤130キロの密輸を意図的に見逃した!? 元刑事が語った北海道警の闇
かつて、「銃器取締」として何百丁と押収した拳銃のそのほとんどが、自演によるものだった!? 2011年10月21日のニコニコ生放送「ニコ論壇in北海道「覚醒剤130キロ『密輸』の真相~元道警釧路方面本部長生出演!~」では、覚醒剤130キロと大麻2トンを、北海道警察と函館税関が、組織的に密輸していたとの疑惑をあらためて浮かびあがらせた。
今を遡ること9年前、北海道警察元刑事の稲葉圭昭氏は、覚醒剤使用の容疑で逮捕され、懲役9年の刑に処された。今年9月、刑期満了で出所した稲葉氏は、手記『恥さらし』を出版。稲葉氏は自身の罪を認めたうえで、北海道警察の暗部を白日の下にした。
■警察の「闇」が露見する端緒となった「稲葉事件」
事件の端緒は、2002年7月5日。稲葉氏の「エス」(犯罪捜査に協力する、情報提供者)だった男が、覚醒剤の使用を自ら告白し警察へ出頭した。その5日後、稲葉氏自身も覚醒剤取締法違反容疑で逮捕される。「現役警察官による不祥事」と世間の耳目を集めるが、その新聞報道の影で、稲葉氏の関係者が次々と自死を遂げていた。
同月末には、稲葉氏の上司であった、元銃器対策課指導官・片山俊雄氏が札幌市内の公園で自殺を遂げ、その翌月には拘留中であった前述の「エス」が、札幌拘置支所内で靴下を喉につめたうえで、首に巻いた他方の靴下を鉛筆を用いて徐々に締めあげるという壮絶な自死を図る。当時の心境を、元北海道警察釧路方面本部長で稲葉氏の上司だったこともある原田宏二氏は、
「たぶん道警は『稲葉の個人的な事件』として処理するだろうと、私は思った」
と振り返る。その一方で原田氏は、事件の背景に警察組織としての「闇」があり、稲葉氏はその犠牲になったのでは、と見ていた。
■覚醒剤と大麻を見逃す代わりに、拳銃を摘発
2005年には、北海道新聞の社会面に『道警と函館税関「泳がせ捜査」失敗』との見出しが躍った。当時、北海道新聞で警察担当デスクをしていた高田昌幸氏はこの記事について、こう解説する。「覚醒剤130キロ、大麻2トンを、道警があえて税関を通過させ、そこで一網打尽にするはずが取り逃がしてしまった」との記事であった、と。だが警察からの強い抗議によって、のちにこの一連の報道に対するお詫び記事が、異例ともいえる一面に掲載されることとなる。
ところが、出所後に書かれた稲葉氏の手記や、高田氏自身が行ったインタビューで、驚愕の事実が明らかになる。
「(道警は)最初に、覚醒剤を(国内に)入れさせようと、警察と税関が一体になって見逃した。覚醒剤でも大麻でも、他の薬物でもなんでもいいから3回、4回と入れさせる。そして、この3、4回目のときに初めて(密輸入者に)拳銃を入れてもらう。当時、稲葉さんは銃器対策課ですから、拳銃を摘発することが目的なんですね。そこで拳銃を捕まえる、そういう構造のなかで、先に入ってくるものは積極的に見逃していた。それを銃器対策課という当時の組織全員が知っていた」
稲葉氏はこのほか、「当時、何百丁と挙げた拳銃のほとんどがやらせだった。8年間の捜査のなかで、実際の捜査による拳銃の押収は、たった2丁」とも語ったという。つまり、あらゆるルートから手に入れた拳銃を、「今月は(拳銃が)1丁もあがってない」というような時、さも摘発したかのように見せかけるのに使っていたというのだ。
こうした摘発について、原田氏も具体的な数字をあげ、その実態を指摘する。1992年の暮れ頃、警察庁の指揮で「平成の刀狩り」と呼ばれる拳銃取り締まり強化が始まった。1995年にはオウム真理教による地下鉄サリン事件で騒然とするなか、当時警察官僚のトップである国松警察庁長官が狙撃される事件が起こったこともあり、この年には全国で押収された拳銃の数は1880丁にのぼる。だが、去年、全国で摘発された拳銃数はわずか397丁に過ぎない。原田氏は、「これが警察の実力」とし、この千丁を超える数の差に、”やらせ”の闇が現れていると語った。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 覚醒剤の密輸を「積極的に見逃した」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv67135960?po=news&ref=news#0:22:04
(ハギワラマサヒト)
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