「いつのまにか“自主退職”に追い詰められる……」某大手不動産会社で働くふたりに話を聞いた
Yさん(30代)とNさん(40代)は、都内の某大手不動産会社に入社して10数年。今年の4月に人事異動があり、今の内勤部署に異動になった。2人は、そこで知り合ったという。
「新設の部署なんですが、集められた3人のメンバーを見て、おかしいと思ったんですよね」とYさんは話す。
「私は、以前に自律神経の病気で半年ほど休職していたんです。Nさんも、以前の上司とうまくいかず降格させられた直後だった。もうひとり来ると言われていた方も、1年半ぐらいストレスで精神的な病気を患って休んでいた。復職のタイミングで異動してくる予定だったらしいんですが、結局は来なくなったんだけど。異動でこの“いわくつき”の面子が集まったということは……人事とか経営サイドの意向もあるんじゃないかと、思ったんですよね」
2人が異動してきた部署は、会社内で行き場をなくしてしまった社員を“自主退職”に追い込むための部署だったのではないか……。YさんとNさんは、そのように考えているという。あなたはどう思うだろうか? ぜひ2人の話を聞いて判断してほしい。
■6月に作り始めた1つの資料が、7月になっても8月になっても完成しない
2人の主な業務は、彼らの上司(30代後半の男性)のための、会議用の資料作りだという。
「資料を作って上司に持って行くと、『ここに新しく項目を追加してくれ』『ここを修正してくれ』と言われ、やり直しになります。直して持って行くと、また別の修正が入る。そこを直して持って行くと、また別の修正が……。こんなやり取りが何度も何度も、延々と続くんです。数枚程度の書類でも、5回から10回、ちょっと大きなものになると、20回とか……。最初にA4の書類だったものが、どんどん項目が増えてA3になったこともありました。
他にも、物件を直接調査する必要があるような書類を作るのであっても、絶対に外出が許されない。うちの会社で管理してるマンションの設備を調べて台帳にしてくれ、と言われるんだけど、例えば台所のディスポーザー(注:生ごみを粉砕する機械)とか、そんな小さなレベルになると、ネットで調べただけだと詳細まで分からない。会社から数分自転車で走れば、管理してるタワーマンションがあるんですよ。だから『2時間、3時間でいいから、ちょっと行かせてください。ネットだけで書類を作るのは限界があるから』と言っても、駄目だと。2人して行き詰ってしまいましてね。
そんなことばかりしてるから、ちょっとした書類を作るのでも、1か月2か月かかるのがあたりまえで……しかもお客さんに出す大切な資料ならともかく、社内の会議用の資料ですからね。さすがに嫌になりましたよ」
これだけならば、「指示が下手な上司なんじゃないの?」「退職させようという意図はないのでは?」と思われる方もいるかもしれない。しかし、彼らは他部署の社員は付けていないような、細かな“一日の業務スケジュール”を付けさせられていた。
■毎日付けさせられていたスケジュールの意味
「査定の時期になった時、上司から突然『どうして、こんな簡単な仕事に対して、こんなに人工(注:作業員1人が1日働いた分に相当する作業量のこと)がかかってるんだ? 君たちの能力が低いからじゃないのか? このことは人事に報告させてもらう』と言われて、びっくりしたんですよ。あ、僕らが毎日、細かく仕事のスケジュールを付けさせられていたのは、こんな風に人工代を計算されて、“無能な社員”として評価するためだったんだって。確かに成果物とスケジュールだけをみると、1枚、2枚の書類を作るだけなのに何日も、何か月もかけてることになる。ヤラれた、って思いました。
とにかく上司はすぐに人事に、我々のことを報告するんです。例えば電車遅延で遅刻して、遅延証明書を持っていたのに、人事に話が持っていかれて、問題化されてしまったことがあった。まるで、自分たちがどんどん追い詰められていって、懲戒解雇の原因を作られてしまうような状況。実際に、先日、人事部長から『このままだと懲戒処分を取らざるをえない』と言われましたしね」
このような中で、Yさんは元々の精神的な疾患を悪化させてしまう。最近、Nさんも医師から欝と診断され、ふたりとも休職中だ。
「職場に戻ろうと思えば戻れるのかもしれないが、状況が改善するとは思えない。個人で参加できるようなユニオンに参加して、せめて会社都合ということで退職できないか、道を探したい」
長い会社員生活の中で、一度や二度は大きなミスをしたり、体調を崩すこともあるだろう。しかし、そんな状況から二度と復活できず、退職に追い込まれてしまうようなシステムが社内にあるとしたら、それは本当に正しいのだろうか。
「テレビでCMをやっているような大手企業が、こんなことをして本当にいいのか。今日はなんとか告発したいと思って、お話に来たんです」
皆さんはどう思いますか?
著者ブログ(http://d.hatena.ne.jp/shanaineet/)
※この記事はガジェ通ウェブライターの「増田不三雄」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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