マンション理事会のお悩み[3]管理組合役員のなり手不足、解決方法は?

マンション理事会のお悩み[3]無関心、高齢化、賃貸化……管理組合役員のなり手不足をどう解決する?

もともと無関心層が多いなか、分譲マンションも築20年に近づくと、高齢者や賃貸住戸の増加などで役員の担い手確保に苦心する管理組合が少なくありません。

そこには、「なるべく自分は理事になりたくないのでほかの人に任せたい」という本音も隠れているのは間違いないでしょう。でもその結果、役員の負担が特定少数の組合員に偏って不平不満が噴出してしまうことも……。筆者が顧問を務める管理組合では、この問題をきっかけに新たな施策が打ち出されることになったのですが、その経緯や議論の経過をご紹介しましょう。【連載】マンション理事会のお悩み相談

マンションは、いろんな価値観をもった人たちが住む集合住宅。直面する問題もさまざまです。でも理事会では経験豊富な人が少なく、解決が難しいこともあります。

今回は、日々、理事会から多くの悩み相談を受けているマンション管理士が、そのなかでもよくある問題をご紹介し、解決方法を提案します。

理事会役員の労苦に報いる「報酬制度」の検討

築16年目を迎える都内のマンション(総戸数23戸)では、意識の高い2名の女性が毎年理事に立候補して事実上管理組合の運営をリードしています。

ただ、ほかの組合員は消極的な方がほとんど。また、いくつかの賃貸住戸があり、所有者が居住していないために管理規約上役員にならないで済む方もいます。

毎期立候補する2人自身は役員に就くこと自体はいとわないのですが、やはり役員就任を要請されても引き受けない人や、役員就任を免れる外部所有者たちと比べたときに「違和感」があったようです。

そこで、「役員に対して何らかの報酬が支払われるべきだ」という意見が理事会で提起されました。毎月定例の理事会が開催されており、その都度1時間半から2時間の拘束があるため、1年分の労働対価に対する報酬があってもよいのではないかということです。

ちなみに、国交省が公表している「平成25年度マンション総合調査結果」によると、役員報酬制度を導入している管理組合は全体の約2割あり、役員一律で支払っている場合の報酬は平均月額2600円とのデータがあります。なお、理事長の責任が大きいこともあり、ほかの役員に対して2倍の報酬を支払っている組合もあるようです。

また、この組合では役員に就任しても理事会を欠席する場合を想定して、「会議の出席回数に応じた報酬が支払われるべきだ」との意見が出ました。

こうした意見やほかの管理組合のデータをもとに審議した結果、役員報酬制度の導入を以下の内容で総会にはかることになりました。

◆理事会に出席するごとに、管理組合は役員に対して下記の報酬を支払う。

・理事長:2000円

・そのほかの役員:1000円

◆報酬の支払い方法

任期終了後に、各役員の出席実績に応じた報酬額を算出のうえ精算する。

非居住者から「協力金」を徴収するか検討

この理事会では、役員報酬制度とあわせてもう一つの検討テーマが提起されました。

このマンションでは、管理規約上、居住しない組合員は役員の資格要件を満たさないため、輪番リストの対象からも外されます。居住しない事情としては、賃貸での運用のほかにも、転勤などのやむを得ない事情などもありますが、居住しない間は少なくともこの「負担」を免除されているのだから、その見返りとして「組合運営協力金」を徴収してはどうかという提案です。

管理会社にこの制度を導入している事例がないか調べてもらったところ、少数ながら月額2000円を徴収している組合が2件見つかりました。

ただ、こちらについて理事会で審議したところ、下記の理由で導入を躊躇する意見が出ました。

◆現状ではまだ非居住者はわずかであり、特定少数の人に追加負担を求めることは慎重になるべきだ

◆協力金を別途徴収しなくとも、組合の財政上役員への報酬を賄うことはできる

その結果、協力金の徴収は見送られることになりました。ただ、非居住者の割合が今後さらに増える事態になった場合には、再び遡上(そじょう)にあがる可能性もあるでしょう。

理事会役員を「外注」する時代も近い!?

今回ご紹介したマンションは、少数とはいえ常時役員を引き受けてくれる意識の高い人材がいるため、まだそれほど深刻な問題は抱えていないといえます。

しかし老朽化したマンションのなかには、輪番制すら機能せず、もはや理事会が成立しないために管理費などの滞納が深刻化し、必要な修繕を実施できない状況に陥っている管理組合も出てきています。

こうした事情も踏まえて、今年3月に管理組合運営の指針となる「マンション標準管理規約」が国交省によって改正されました。その改正項目の1つとして、理事長などの組合役員にマンション管理士や弁護士などの外部専門家が就任するケースを想定した条文やコメントを新たに定めています。

ただ、外部専門家に役員就任を依頼する場合には、その人材をどう選ぶのかはもちろん、組合として外部役員を監督するしくみも必要になると思われ、慎重に検討しなければならないでしょう。また、実際に本制度を導入する際には管理規約の改正も必要になりますから、そう簡単な話ではありません。

マンションがわが国に誕生してすでに半世紀。管理組合は、「居住者自治主義」にもとづいて運営することを前提としてきましたが、築30年超の老朽マンションの増加や高齢化の進行などでそれが「曲がり角」を迎えているのは間違いありません。

管理組合の健全な運営を維持するための仕組みづくりはもちろん、それを担う人材の活用や、一部の区分所有者に負担が偏らないよう調整するなどの課題も解決していくことが求められているのです。●参考

株式会社マンション管理見直し本舗

・平成25年度マンション総合調査結果

・マンション標準管理規約及び同コメント(平成28年3月改正)
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