入居希望者があとを絶たない「DIYできるシェアハウス」の魅力

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住民がDIYできるシェアハウス、入居待ちが続く人気物件の秘密とは?

このところ、シェアハウスが多様化している。ペットと暮らせるシェアハウスや、住民が切磋琢磨し英会話の上達を目指すシェアハウスなど、さまざまなコンセプトが生まれているようだ。なかには、住民が共用部や部屋を自由に改造できる「DIY」可能なシェアハウスもあるという。現地へ足を運んでみることにした。

下地がむき出しの内装を住民の手で自由にDIY

訪れたのは東京の下町に広がる閑静な住宅街。もとは印刷工場だった築42年のレトロな雑居ビルを一部リノベーションしたのが、アトリエ型シェアハウス「COURI 009 CAMP!」だ。

共有スペースや自室などは、基本的に自由に改装OKというこの物件。共有スペースも専有部も内装の施工はされておらず、壁や天井はコンクリートの駆体がむき出しになっている。そこから、入居者自身が必要に応じてDIYでカスタマイズできるという。

「シェアハウス物件は、共有スペースも個室もオーナー側でリノベーションしているものが一般的ですが、こちらの物件に関しては未改装の状態で貸し出しています。自分自身で手を加えられる余白を残しておくことで、DIYをしたいと思っている人に興味を持っていただければと思っています」

と話すのは、同物件を管理・運営するシェアカンパニーの大橋さん。同社では現在36棟のシェアハウスを管理しているが、特にこちらの「COURI 009 CAMP!」は、入居希望者があとを絶たない人気物件なのだとか。【画像1】2年前に当時の入居者の大半が引越したタイミングで「DIYできるシェアハウス」というコンセプトを掲げてリスタート。共有スペースはあえてリノベーションせずに、入居者が自由にDIYでカスタマイズできるようにした(写真提供:Riwa Tarui) 【画像1】2年前に当時の入居者の大半が引越したタイミングで「DIYできるシェアハウス」というコンセプトを掲げてリスタート。共有スペースはあえてリノベーションせずに、入居者が自由にDIYでカスタマイズできるようにした(写真提供:Riwa Tarui)【画像2】こちらが現在の共有スペース。入居者同士でインテリアをDIYで製作したり、持ち寄ったりして、居心地のいい空間をつくり上げている(写真撮影:飯田照明) 【画像2】こちらが現在の共有スペース。入居者同士でインテリアをDIYで製作したり、持ち寄ったりして、居心地のいい空間をつくり上げている(写真撮影:飯田照明)【画像3】以前の入居者が調達してきたという物流用木製パレット(すのこのようなもの)を利用し、DIYが得意な入居者が中心となって製作された共有スペースの本棚(写真撮影:飯田照明) 【画像3】以前の入居者が調達してきたという物流用木製パレット(すのこのようなもの)を利用し、DIYが得意な入居者が中心となって製作された共有スペースの本棚(写真撮影:飯田照明)【画像4】つくりたいと思っているものについては、共有スペースの「連絡帳」に記載して意見を募ったり、手伝える人がいないかなど、入居者同士でコミュニケーションを取りながら製作を進めている(写真撮影:飯田照明)

【画像4】つくりたいと思っているものについては、共有スペースの「連絡帳」に記載して意見を募ったり、手伝える人がいないかなど、入居者同士でコミュニケーションを取りながら製作を進めている(写真撮影:飯田照明)

DIYの範囲は”自由”がスタンダード

共有スペースや個室をDIYする際には、事前に管理会社へ書類で申請するのがルール。改装後の仕上がりについても、大橋さんをはじめシェアカンパニーの担当者が確認することになっている。とはいっても厳しい制約があるわけではなく、「万人受けするものなら基本OK」だという。入居者にとっては、その”ユルさ”も魅力的なようだ。

「ルールを厳しくしてしまうと、DIYに対するモチベーションが下がってしまいます。僕自身、シェアハウスの入居者でもあるので、その辺りは管理する側の都合というより、入居者の快適性を重視したいなと思っています。改装もハードが壊れなければいいかな、という程度の心積もりでいます。ただ、退去後の個室はリセットせずにDIYしたままの状態で次の入居者に貸し出すので、壁紙のペイントにしても棚などを取り付けるにしても、万人受けするものにしてくださいというお願いはしています」(大橋さん)

基本的には、”多数の人に共感を得られる部屋”という、ざっくりとしてはいるもののシェアカンパニーの担当者の判断で改装の内容をジャッジ。「アウトかな」というものについてのみ指摘するというスタンスだそう。ちなみに、これまで部屋全体をショッキングピンクにするケースはNGだったとか。手続きも堅苦しいものではなく、「DIY申請書」にやりたい内容をメモ書き程度に記入して提出するだけで済むようだ。入居者と担当者の距離が近く、信頼関係がある証かもしれない。【画像5】入居者からのDIY申請書はベースのフォーマットを用意。どんなことをしたいのか簡単に分かる程度の内容を書くだけでOK(画像提供:シェアカンパニー) 【画像5】入居者からのDIY申請書はベースのフォーマットを用意。どんなことをしたいのか簡単に分かる程度の内容を書くだけでOK(画像提供:シェアカンパニー)【画像6】なかには、緻密な設計図面を作成して提出する人も(画像提供:小林由知)

【画像6】なかには、緻密な設計図面を作成して提出する人も(画像提供:小林由知)

マイナス条件の物件がプラスに転じるDIYの価値

なお、部屋数は全部で8部屋。築40年以上が経過しているため、決してハード面に優れているわけではないが、空きが出るとすぐに埋まってしまうという。かといって入居者全員がDIYに積極的なわけではなく、この空間の雰囲気やコンセプトに惹かれてやってくる人も多いようだ。

「DIYをしないと入居できないという決まりはありません。そのため、入居者の方にはインテリアが好きな方や、ちょっと変わった部屋に住んでみたいという方も多いです。人気のエリアでもなく好条件でもない物件は、尖ったコンセプトがあると、それを面白がる人たちが集まってきてくれるのではないでしょうか」(大橋さん)【画像7】共用スペースの窓辺には、入居者がDIYでつくった観葉植物の展示棚を設置。相談しながら設置することでインテリアのセンスも磨かれそう(写真撮影:飯田照明) 【画像7】共用スペースの窓辺には、入居者がDIYでつくった観葉植物の展示棚を設置。相談しながら設置することでインテリアのセンスも磨かれそう(写真撮影:飯田照明)【画像8】元入居者がたまに遊びにくることも。今回お話を伺った、現入居者の小笠原さん(左)と元入居者で共用部DIYを手掛けられた小林さん(右)(写真撮影:飯田照明)

【画像8】元入居者がたまに遊びにくることも。今回お話を伺った、現入居者の小笠原さん(左)と元入居者で共用部DIYを手掛けられた小林さん(右)(写真撮影:飯田照明)

実際のところ、最近ではシェアハウスへの入居動機にも変化がみられるようだ。シェアハウス入居者を対象にした国土交通省の調査で、平成23年と平成25年の入居動機の割合を比べると、「不動産屋での手続きが不要だから」が28.4%から12.6%に減少、「即入居が可能だから」は35.7%から26.6%に減少しているのに対し、「他の住民とのコミュニケーションが図れるから」は20.1%から24.4%に上昇、さらに「集まって暮らす安心感があるから」は13.4%から20.0%に上昇している(国土交通省「貸しルームにおける入居実態等に関する調査 結果概要」平成25年度)。シェアハウスの特長でもある入居時の利便性へのニーズが減り、他人と暮らすことの抵抗感がない、むしろ安心につながる項目を重視して入居する人が増えていることがうかがえる。

入居者同士の交流にもつながるDIYは、シェアハウスと親和性が高いといえるだろう。また、DIYに興味があるが、ひとり暮らしだととっかかりがつかめないという人にとっても、いいきっかけになりそうだ。DIYができるシェアハウスというのは、これからの住まい方に新しい価値をもたらしてくれるかもしれない。SUUMO賃貸カスタマイズ&DIY

入居者同士のキズナも深まる! 念願の初DIYはシェアハウスで●取材協力

・シェアカンパニー

●参考

・国土交通省「貸しルームにおける入居実態等に関する調査 結果概要」平成25年度
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