リモートワークを始めて1年。結婚を機に離島へ移って感じたメリットと自分の変化
こんにちは。福岡県の「大島」という島でリモートワークをしている林由子(はやし・よしこ)と申します。福岡市に本社を置く、株式会社ヌーラボに所属するITエンジニアです。私は2015年5月にリモートワークを始めました。そろそろ1年が経つので、1年間リモートワークをやってみて「実際どうなのか」を書いてみたいと思います。
リモートワークをするきっかけと準備
私は結婚を機に福岡市内から「大島」に引っ越しました。大島は宗像市(むなかたし)の神湊(こうのみなと)からフェリーで30分程度のところにあり、人口699人(2015年4月末日現在)、漁業が中心の小さな島です。
島から福岡市内にあるヌーラボ本社まで通勤するとなると、フェリー、バス、JR、地下鉄を乗り継いで片道約2時間かかります。2時間は東京では通勤圏内という話も聞きますが、福岡ではそんな遠くから通勤している人を見たことがありません。
また、島から九州本島に渡るためのフェリーの本数は限りがあり、しけると欠航になるという問題もあります。そこで社内向けのプレゼン資料を作って、会社に「リモートワークをさせてもらえないか」と、聞いてみることに。その結果、水曜日だけ福岡市の本社に出勤して、他の日は島の自宅でリモートワークをすることになりました。
日々の仕事の進め方
私の主な仕事は「Backlog」というプロジェクト管理ツールの開発です。それに加えて、台湾、シンガポール、ベトナムにいる海外のユーザーサポートチームと連携して、海外ユーザーからの問い合わせの対応もしています。
仕事を始めるときはチャットツールの「Typetalk」で「Hello」とチャット越しに全社員に声をかけ、退勤時は「Bye」と声をかけます。こうすることで、別の場所で働いていても、今仕事をしている人が誰なのかを知ることができます。
また、毎朝15分程度、オンラインで朝会をしてチームで情報共有しています。その他、打ち合わせもオンラインでよく行っています。
作業では、「Backlog」、「Typetalk」、オンライン描画ツールの「Cacoo」を活用して、以下のように仕事を進めています。 「Backlog」でタスク管理やナレッジを共有する 聞きたいことや話したいことは「Typetalk」に書いて会話する 図を用いた説明が必要な場合は「Cacoo」で書いて「Backlog」または「Typetalk」で渡す
リモートワークをしてよかった点
私生活を大事にできる
リモートワークをしてよかった点は、なんといっても「家族(夫)と一緒に過ごす時間が長くなった」ことです。結婚前は島と福岡市で別々に暮らしていたので、休日も合わない状態でした。そのため、会うだけで労力がかかり一緒にいる時間が短かったのですが、今はたいてい毎日一緒にいます。
また、私は猫が好きで昔から飼ってみたかったのですが、都会だとペット禁止のマンションがほとんどです。仕事をしながら1人で猫の面倒をみることができるかどうか(出張のときはどうするの? とか)……という不安もあり、飼うことができませんでした。島に来てからは、近所の野良猫が家に居座るようになったので、その猫を飼い始めました。可愛くて本当に癒やされています。
時間に余裕ができた
通勤時間がなくなったことで「時間の余裕」を得ることができました。以前は起きたら出社の準備をしてすぐに会社へ行き、帰ってくると疲れて料理をする気力もないので、外食が多かったです。最近は洗濯や昼食の前準備をしてから仕事を始めています。離島には外食できるお店がないので、絶対に料理をしないとご飯が食べられません。そのため、毎日料理をするきっかけにもなりました。また、私は持病があって食事で塩分に気をつけないといけないのですが、自分で作れば減塩もできますし、睡眠時間もきちんと取れるので、健康的な生活を送れています。
人間関係によるストレスの減少
立場や年齢など、バックグランドの違う人が集まれば、何かしら気を使ったり、問題が起こったりするものです。どんなにいい会社でも、多少は人間関係のストレスがあるのではないでしょうか?
例えば「Aさんが不機嫌そうなのは、このやり方が気に入らないからなのかな」と思っていたら、仕事とは関係なく、朝に夫婦喧嘩をしたせいで機嫌が悪いだけだった……という場合もあるかもしません。しかし、毎日顔を合わせないことで、いい意味で距離を置くことができ、余計な気を使わないですむので「ストレスの減少」につながります。
仕事に集中できる
リモートワークだと周りに同僚がいないので寂しい思いをすることもありますが、話す人がいないので「仕事に集中できる」というメリットもあります。ちょっとした音楽や会話が聞こえた方がはかどる人もいると思いますが、私はこの無音に近い状態の方がマイペースに仕事ができて、合っていたようです。机や椅子なども自分が好きなものを選べますので、仕事をしやすい環境にカスタマイズできることもリモートワークの良さではないでしょうか。
仕事に対する意識の変化
実は「仕事の内容」も、「仕事の進め方」も、リモートワークをする前とあまり変わっていません。おそらくそれは、福岡、東京、京都、シンガポール、台湾、ベトナム、ニューヨークと複数の拠点を持つヌーラボが、多拠点ワークを後押しするツールを最大限に活用していることが大きいと思います。
それでも仕事の取り組み方には変化がありました。「ON/OFFの切り替え」を自分で意識してする必要があり、慣れるまでに時間がかかりました。仕事が行き詰まっても、気軽に同僚に聞くことができません。しばらくは頑張って自分で調べていましたが、「時間を区切って適切な人に質問することも大事」だと気付きました。
また、働いた時間より「成果」を意識するようになりました。しかし、成果を出そうとすると長く働きがちになるので、よくありません。そこで、最近は「時間内で最大限の成果を出す方法」をよく考えます。これはリモートワークじゃなくても大事なので、いい変化です。
収入が得られる
最近は自治体が移住を推奨していることもあって、田舎暮らしをする人がテレビで取り上げられたり、ブログで有名になったりしています。なかには、将来は実家に戻って田舎暮らしをしたいと思っている方もいらっしゃるでしょう。そのときにネックになるのは「仕事」です。大島も他の田舎と同じく、毎月きちんとお給料をいただける地元の仕事は少ないようです(季節ごとに単発の仕事はあります)。
リモートワークによって、今までやっていた仕事を続けられるのは本当にありがたいです。海外ユーザーのサポート業務のように、相手が海外なら日本のどこにいても一緒なので、こういうリモートワークに向いている仕事はもっと積極的に推奨していいんじゃないかと思います。
思い描いていたことと違う点
最初はリモートワークのメリットしか感じませんでしたが、1年間やってみて、リモートワークの難しさも感じています。逆に、心配していたことが大した問題じゃなかったことも分かってきました。
コミュニケーション不足による信頼関係を築くことの難しさ
リモートワークをする前からいるメンバーとの関係性はそう変わりませんが、新しく入社された方との信頼関係を築くには時間がかかると感じます。
人は会う回数が多いほど好意を持つようなので、歓迎会、忘年会、花見など会社のイベントに積極的に参加するようにしています。しかし、それでも顔を合わせる機会は少なく、その人がどんな人かを知るまでに時間がかかります。
取り組み方によってスキルアップやトレンドのキャッチアップもできる
リモートワークを始める前は「第一線から置いていかれることが多くなり、依頼された仕事を黙々とやることになるのだろう」と、思っていました。でも、実際にはプロジェクトの進行状況や同僚や会社の動向などをちゃんと見ていれば置いていかれることはないですし、引っ込まずに意見を言えばいいのです。それがプラスになると思えば、同僚も上司も話を聞いてくれます。
また、「勉強会に参加することが難しくなるのでトレンドに置いていかれるんだろう」という不安もありました。でもほとんどの情報はネットで見られますし、市内にいても勉強会に行かない人はいます。そのため、そこまで違いはありません。私もスキルアップのために「Cafetalk」というオンラインでレッスンを受けられるサービスを使って、英語の勉強をしています。
これからもっと変えていきたいこと
リモートワークで働いている人はまだ少なく、ノウハウも共有されていない状況です。しかし私の他にも、京都支店の男性エンジニアが京都から3時間くらいのところに住む女性との結婚を機に、月曜日と金曜日だけリモートワークを始めたり、シングルマザーのユーザーサポートの女性がリモートワークを始めたりしています。潜在的なニーズはあると思うので、いち個人の意見ですが、もっとリモートワークを推奨して「場所に限らずそれぞれが能力を生かすにはどうすればいいか」「出社している人と変わらず成果を上げるにはどうすればいいのか」について考える人が増えれば、よりよいリモートワークの環境を築けると思います。
最後に
自分がリモートワークをするようになって、同じような働き方をしている方のブログや記事を読むことが多くなりました。私と同じように思い切って会社に相談してみたら、OKをもらえたという話もありました。会社の方針や仕事内容にもよるかもしれませんが、事情があってリモートワークができたら助かるという方は一度相談してみるといいかもしれません。
私自身、以前から子供ができたときにリモートワークが可能だと助かるだろうなと考えていました。一方で、リモートワークが許される人というのは、会社にとってどうしても必要なとても有能な人物でなくてはならないのでは……とも思っていました。でも私は、たまたまできた事情により「働き方を変えたい」と思っただけの普通の人です。
1日の中で仕事をしている時間は長いので、どんな働き方をするかについて考えることは「自分がどんな人生を送りたいか」を考えることだと思います。事情がある方は……と書きましたが、寒いのが苦手だから暖かいところに住みたい、アウトドアが好きだから自然がいっぱいなところに住みたい、という理由でも私はいいと思います。この記事を読んでくださった皆さまが、自分の思う通りの人生を送れるように、働き方を考えるきっかけになれば幸いです。
著者:はやし (id:hayashi_77)
離島在住ITエンジニア。「Backlog」「Cacoo」「Typetalk」など、コラボレーションを促進するツールを開発する株式会社ヌーラボに所属しています。夫と猫たちと暮らしています。最近やってみたいことはリモート飲み会。ブログ:hayashi_77のブログ関連記事リンク(外部サイト)
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