“性行為認定”判決への解釈、草津冤罪事件への言及、女優との恋愛に持論も…… 園子温氏の「性加害疑惑への反撃」会見全文

△園子温氏
5月27日(火)、東京・丸の内の日本外国特派員協会にて、映画監督の園子温氏らが、『Fighting back against accusations of sexual impropriety by Sion Sono, Film director』(映画監督・園子温による性的不正行為の告発への反撃)と題した記者会見を行った。
園氏に関しては、2022年ごろからSNSや複数の週刊誌において、性加害疑惑が取りざたされてきた。中でも、2022年4月に掲載された週刊誌『週刊女性』と『週刊女性PRIME』(ともに主婦と生活社)の記事に対し、園氏は同年5月に損害賠償などを求めて提訴。23年に両者は和解し、記事は削除されている。
また、園氏は、俳優の松崎悠希氏に対しても、「ワークショップで知り合った女優に性的行為を要求していた」といったツイッター(現X)の書き込みで名誉を傷つけられたとして、2022年7月に損害賠償などを求めて提訴。約3年を経て5月16日(金)には、東京地方裁判所にて、園氏と俳優・松崎悠希氏の名誉棄損民事裁判が結審した。園氏は裁判で、投稿の削除と1,100万円の損害賠償、謝罪投稿を求めていた。判決では、松崎氏が損害賠償請求額の2%にあたる22万円(うち弁護士費用2万円)の支払いを行うことを決定。「ワークショップで知り合った女優に対し、性的行為を要求した」「ワークショップで知り合った女優に対し、優越的な地位を利用して、性的行為を要求した」ことまでは認められないとし、投稿の削除も決定。そのほかの園氏の請求は棄却されている。また、「園子温が、飲み会を通して知り合った千葉美裸(元女優・故人)に対して性的に迫ったことや、原告が、自身と性的な接触をした人物を、自身が監督を務める映画に出演させたこと」「園子温が、映画監督と新人女優という立場が明らかになっている状態で、飲み会や共通の知人を通して知り合った新人女優など複数人に対し、性的な行為を要求するなどしていたこと。さらに、それらの女優らを自身の作品に出演させていたこと」の真実性のほか、名誉棄損に該当する投稿の公益性・公共性も認められている。なお、訴訟費用の8割を園氏、2割を松崎氏が負担するという。
会見では、園氏が自身のリーガルアドバイザー・久枝悠人氏(行政書士)とともに、上記2件の民事訴訟内容を中心にとした性加害疑惑への“反論”を行っている。当初、60分(通訳の発言時間をふくむ)を予定していた会見は79分まで延長。冒頭30分は園氏が用意した自身の主張を読み上げ、残り49分で記者を指名しての質疑応答が行われた。以下、その全文だ。
園子温氏の主張読み上げ

△左から、久枝悠人氏、園子温氏
園子温氏:みなさん、初めまして。私は映画監督の園子温と申します。私は、2022年4月に週刊誌『週刊女性』によって、セクシャルハラスメントの被害者に仕立て上げられました。同時に、SNS上で多くの人から謂れのない批判を浴び、今日に至りました。私は、この3年間、憔悴し、うつ病になり、過剰に睡眠薬を摂取して、自殺を考えましたが、診療内科? 診療科病院にも入院しました。妻も肩身の狭い、不安な日々を送っていました。もちろん、収入も途絶え、資金は裁判に注いで、お金も無くなりました。謂れのない誹謗中傷によって、追い込まれました。私が訴えたのは、『週刊女性』の出版社である主婦と生活社。それと、SNS上で証拠もなく誹謗中傷してきた、松崎悠希です。週刊女性の裁判は和解で終わりました。すべての記事はすべて削除されました。そして、松崎悠希に対しては、侮辱罪で刑事告訴しており、現在、彼は書類送検されました。わたしは、最初からセクシャルハラスメント行為を否定してきました。そして、いずれの該当者も、私のセクシャルハラスメントを証明する証拠を提出することはできませんでした。ありませんでした。それどころか、裁判が終結するまでの間、私への誹謗中傷を止めることはなかったのです。裁判の終結までに、3年かかりました。松崎のほうの裁判の終結までに、3年かかりました。この3年間、わたしは映画という表現活動を絶たれ、家族にも止むことのない誹謗中傷が浴びせられました。しかし、やっと裁判でわたしの潔白が証明できました。本日は、その裁判の経緯を説明し、なぜ彼らが私を陥れるに至ったかを説明します。松崎悠希が、侮辱罪で書類送検をされたこのタイミングで、記者会見を決意しました。
まずは、『週刊女性』の記事に関してお話します。『週刊女性』と私の訴訟は、2023年12月に和解となり、終結いたしました。和解内容は、記事の全面削除をする代わりに、損害賠償を放棄するという内容でした。先に、なぜ和解を選んだかをご説明いたします。あとに話しますように、『週刊女性』は記事の内容について、証拠を提出できませんでした。しかし、『週刊女性』は裁判とは関係ない証拠を記述のたびに提出してきており、裁判の長期化が予想されました。これを見越して、裁判官のほうから、次のように言われました。「訴訟で勝っても、和解しても、記事の削除は認められます。そして、記事さえ削除されれば、世論の誤解は解けるでしょう」という内容でした。私としては、一刻も早くこの裁判を終えて、もとの監督業に戻りたいと願っていましたので、裁判官の言葉を信じ、和解に踏み切りました。その後、記事は削除されましたが、世間からは、園子温への疑いが晴れていません。このため、本日は訴訟記録をもとに、私の口から『週刊女性』の記事が全く真実ではなかったことを説明します。したいと思います。『週刊女性』の登場人物の半数が架空です。まず、記事では映画配給会社の発言として、私が映画出演を交換条件にし、女優に肉体関係を迫ったと主張しております。しかし、この映画配給会社の幹部は、この世に存在しないことが裁判で明らかになりました。記者が作り出した、まったくのフィクションの人物なのです。それどころか、映画関係者に取材すらしていないこともわかりました。ただ、インターネット上の噂話を、記者が架空の人物にしゃべらせたにすぎません。この事実を認定した裁判官も呆れていました。架空の人物に少しでも信ぴょう性を持たせて、私を攻撃したかったからでしょう。次に、週刊誌では被害者として、女優Aと女優Bが登場します。しかし、彼女らは存在せず、記者は一人の女性からしか話を聞いていないことが裁判で明らかになりました。告発者を増やし、効果的にダメージを与えたかったのでしょう。この女性は、私の映画の出演者でした。彼女が誰であるかは認識しています。彼女はバラエティ番組のタレントで、普段からサービス精神が旺盛で、常に周囲の人々を、自分の体験したエロ体験でトークを楽しませようとされる方で、日頃の仕事においてはバラエティ番組で卑猥なトークで視聴者の笑いを誘うという芸風でした。で、活動しています。彼女のおおらかな、あけすけな性格や芸風を考えますと、今回の件も彼女に悪意があったとは考えられません。裁判で提出された彼女の取材メモには、記者に対して監督である私に……? 監督であるわたしに?あ? 監督には? あ、打ち間違いだこれ(笑)。えー、「監督には、わたしに恨みがなく、いい人です」と好意的な言葉も述べていました。裁判が終わった今、彼女を個人的に追及するつもりはありませんし、追及されてほしくないと考えています。なぜなら、わたしは彼女はいい人だと思っておるからです。証拠として提出された取材メモの、「監督には個人的な恨みは一切ない。それくらいいい人です」という発言を彼女はしておりまして、週刊誌の記者はそれを無視して、彼女の人格や態度まで捏造し、「被害者は眉をひそめ証言した」とまるで悪意を持っていたように書いています。女優Aと女優Bが誌面に登場し、しかし、彼女らは存在せず、記者は一人の女性からしか話を聞いていないことが、明らかになっただけで十分だと思います。記事の最後の証言者は、Cです。彼女は、当初は匿名Cでしたが、記事の掲載後、名を名乗りました。彼女の名前は、千葉美裸(故人)と言います。週刊誌によれば、千葉氏は私に性行為を迫られたと告発しました。しかし、彼女の証言は、すべて嘘です。まず、週刊誌側に提出した千葉へのメモによると、千葉が私に迫られたのは、下北沢駅近くのマンションだと言います。彼女は記者に、下北沢の駅から私の家までの道のりを語りました。しかし、わたしは下北沢に家を所有していたことも、住んだこともありません。坂口拓(アクション俳優)と千葉氏は、確かに家に来ましたが、まったく別の駅の家に来ました。決して、下北沢ではありません。次に、彼女が私の家に、俳優の坂口拓と一緒に来たと言います。彼女によれば、その後、坂口が先に帰宅し、私と二人きりになった時に、私に迫られたと言います。しかし、これも嘘です。その場には、もう二人存在しました。一人は私の友人。もう一人は、私の(当時の)同棲相手である神楽坂恵さんです。神楽坂恵さんは、現在、私の妻です。この日、もともと地方に住んでいた私の友人が、2010年8月8日に東京国立美術館のイベントに出席するために、私の自宅に泊まりに来ていました。そこへ、坂口が千葉氏を連れて来訪しました。その後、坂口と千葉氏は先に帰り、私と友人、それから妻が見送りました。裁判でこのことを主張するために、その時の様子について、友人が念書を用意してくれました。また、この私の友人が、このイベント、美術館のイベントに参加した写真は、当時の友人のブログに掲載されています。さて、この日に私に性行為を強要されそうになり、PTSDを負ったなどと言う千葉氏ですが、記者には、私にはそれ以降会っていない、連絡もしていないと証言しています。今日お渡しした、添付資料の1番を見て下さい。連絡もしていないと言った千葉氏ですけど、その後、2012年に彼女はわたしの撮った『ヒミズ』という映画の感想をメールで送ってきています。「映画館で観て、大変感動した」という内容です。千葉氏は、園子温は好きでもないし、映画も観ていないと言いつつ、わざわざ映画館まで行って、鑑賞し感動を伝えてきました。くれました。千葉氏は、えーっと……あ、時間が押しているらしいので、(通訳は)今のとこだけでいいです。どこまで飛ばすかな。あと何分? 4分? 質問受けながらやったほうがいいか?
久枝悠人氏:松崎の訴訟についてだけ、軽く。あと何分くらい? こっちがいいんじゃないですか? ここまで読んでるんで。
園:ちょっと前に民事裁判が終結いたしまして。まあ、ぼくが松崎悠希氏に勝訴しまして。一旦、民事裁判のほうは終わったわけですけど。しかし、一方で刑事告訴もしまして。彼は今、侮辱罪で書類送検をされました。今、取り調べ中です。まず、私は松崎悠希という男性と会ったことがないです。私が、彼を無慈悲にオーディションで落としたことがあるらしいと、ある人物から聞きましたが、まったく覚えていません。終わり? 質問受けながら、やっていきましょう。
裁判所の“性行為認定”は、「終わった後のあとがき感想文」
ブレイク・シモンズ氏(フリーランス/映画ジャーナリスト/事前オンライン質問):質問なのですが、2022年以降に作って、まだリリースされていない映画はありますか?
園:個人的に、iPhoneで小さな映画を、ウォーミングアップで撮ってはいます。いわゆる商業映画は、全部、『週刊女性』の記事が出たことで、全部、無くなっちゃったんで。ハリウッドでも2本の映画の企画があったけど、それも無くなりましたんで。基本的には、仕事、全然できてないですね。私がこうやって記者会見をやる理由は、もう一度、映画を撮れるようになりたい、その一念でやってます。
カルドン・アズハリ氏(日本外国特派員協会/主催):質問のフォローをさせてください。あなたはこの事件を、将来、映画にする予定はありますか?
園:是非、したいと思います。どうやって無から膨らんで、罪が生まれてくるかっていうのに、ぼくも非常に驚いたんで。
西村卓也氏(フリーランス):ご説明を聞いていたところ、『週刊女性』の記事は事実無根であるということ、色々と嘘があるんだということをお話しされていましたが、これは“園さんが性加害をしていない”という理由の説明にはなっていないと思うんです。A、B、Cという人物のうち、Cという人物は存在する。そして、場所は違うけれど、(C/千葉美裸さんと)お会いになったことはあるということですよね。
園:そこだけで。はい。
西村:そこで、(C/千葉美裸さんと)何をしたかをご説明いただけますか?
園:先ほど説明したように、人物の設定が色々とおかしくて。ぼくと、坂口と、千葉氏と、もう一人うちに泊まりに来ていた私の友人がいます。あと、妻もいます。だから、そのようなところで、ふたりが最後に帰っていくとこを、私の友人が見届けている。さっき言ったとおりだと思うんですけど。それに関しては、言った言わない、やったやらないと言ってても、実際キリがないんじゃないですかね。
西村:千葉さんが家に来られて、帰られるまでに何をしていたかを聞いているんですが。
園:えーと、妻は奥にいて。そういうの参加するの好きじゃないから。私の友人と、私と、千葉氏と、坂口拓で、お酒を飲んでたと。あと、映画を観たりしていましたね。『サイタマノラッパー』という映画をみんなで鑑賞して、ぼくは「面白い」と言って、坂口拓は「あんまり面白くない」と言っていたのを覚えています。
尾形聡彦氏(Arc Times):5月16日の東京地裁の判決(対松崎悠希裁判)での、ワークショップ以外の部分についてうかがいます。判決では、「“原告つまり園氏が監督と新人女優という立場が明らかになっている状況において、複数の女優に対して、性的行為を要求する文面のメッセージを送信したこと”“原告が、自身と性的な関係を有した女優を映画に出演させていたこと”は真実であると認められる」と認定されています。これについて、先ほど園さんは、「民事裁判は終わった」とおっしゃったので、この認定を受け入れたということだと思いますが。
園:いや、いや。これはですねえ、発信者を特定してもらわないと。つまり、IP開示しないと私が送ったものだと特定できないと思うんですね。これは、本件で一番の、メインのものではなかった。
尾形:裁判所が認定しているんですけど。
園:いやいや、裁判所が認定って。裁判は主文が大事。本文は主文にしかなくて。今、言ってるのは、終わった後のあとがき感想文みたいなところ。
尾形:真実性を裁判所が認めているんですよ。
園:(テキスト読み上げ)3年前、2022年3月27日、松崎悠希はXで、「俺の知り合いは園子温の取り巻きのワークショップに通いはじめて、マネージャーを信用するなと教えられ、そして、一人になったところで体を要求された」という、この松崎が事実無根の話をでっちあげた、と。松崎は、私がワークショップに来た女性に性行為を迫り、その被害者は何十人もいると主張しましたが、私はこれを事実無根であるから取り消して、慰謝料を払うよう求めました。これが裁判の争点です。これに対し、松崎は訴訟の最初から最後まで、一貫して、「ここに記載する園はあくまでも例であり、直接私をゆびさしていない」というのです。「だから名誉棄損にはあたらないのだ」と主張しました。私はこれを聞き混乱しました。ツイートには私の名前と性行為を迫った行為を記載していながら、それはあくまで例え話だったというのです。世間の皆様は、彼の主張に賛同するでしょうか。おそらくされないと思います。なぜ、そもそもなぜ私がそのような行為を行ったという証拠を提出しないのでしょうか。彼は頑なにその証拠を出しませんでした。訴訟が進み、ようやく松崎が証拠として出してきたのは彼の友人の証言ではなく、松崎の知人でもない人の匿名のツイートと、過去の雑誌のインタビューです。自分の知り合いが被害に遭ったというのに、証拠を提出してきたのは、全く見知らぬ方のツイートと、何十年も前の雑誌の切り抜き。ツイートに関しては発信者が特定されていないので松崎のなりすましの可能性すらある。雑誌はエンタテインメントを目的に誇張したり嘘がほとんどです。映画雑誌は真実を探求する報道ではなくファンタジーで人を楽しませる雑誌です。彼はこの後も映画雑誌を次々と証拠として提出してきました。また、証拠としてTwitterのツイートを出すことも不適格です。インターネットの匿名の掲示板の書き込みを真実だと主張するのは陰謀論です。新聞記者はTwitterのツイートだけで記事を書きますか? それは不正確だから無理、書きません。不正確な情報を訴訟において証拠として提出すること自体が間違いです。次に彼が一人も訴訟に証人を呼ばなかった呼べなかったのは不自然です。もし彼が私の被害を見聞きした人物があれば法廷で証言させるべきでした。なぜなら法廷では裁判官と弁護士からの質問が行われるからです。このように当事者が質問して証言に矛盾がないかを確かめるプロセスがなければ証言はいくらでも捏造ができてしまいます。あと1個。えっと、しかし彼はすべての証言を供述書にして提出してきました。これでは真実かどうか確かめる術がありません。松崎は自分自身の証言も供述書にして提出してきました。また少なくとも松崎本人は当事者ですから出廷になんら不都合はないはずです。なぜ彼は出廷して証言しなかったのでしょうか。それは裁判官から質問され自分の主張の矛盾が露呈されるのを嫌った以外に考えられません。えーと、16ページですけど。彼のこのツイートの証拠、言い訳を……SNSの動画で「とある芸能事務所のマネージャーからの告発を聞いて立ち上がった」と彼は言っている。言っています。そのマネージャーは、「私の事務所の女優は園子温のワークショップに参加しておかしくなった」と言っています。松崎はこの動画で「その告発を聞いて奮い立った」と言っています。松崎氏が言う被害者の女優Aさん。6番の資料の2ページ目ですけど、彼女みずから念書で書いていただきました。女優のAさんは「その件は私の事務所を個人的に辞めただけで、園子温となんら関係ない。マネージャーの妄想だ」という念書を、私あてに送ってくれました。それが、その手書きのやつ(6番の資料の2ページ目)です。添付書類の15ページなんですけど。これは、松崎が出してきた、裁判上の書類ですけど。松崎氏は、「園子温による性加害というものは、読み方が間違っている。ワークショップには限定していない。そこで行われたとも書いていない。あくまでも一般論だ。園による加害の暴露も行っていない。「園である」ということの適示も答弁書で否定した。
「あの時、草津市長が亡くなっていたら、メディアは殺人鬼ですよ」
梅本千種氏(フリーランス):まず、一つ申し上げたいんですけれども。さきほど、『週刊女性』の記事の中で、「Aさん、Bさんはいない。Cさんひとり」とおっしゃいました。その方の「あけすけなトーク、卑猥なトークをする芸風」だという風におっしゃったんですが、性加害の有無とは関係のない特性を悪く言うのは……
園:悪く言ったつもりはないです。
梅本:悪く言ったかどうかは主観的かもしれませんが、会見の場で言うことは二次加害ではないかと思いました。その上で、先ほど園さんは、性被害の証言の中で、「事実と食い違うことがある」とおっしゃっていました。それであっても、性被害の証言はいくつか出ているわけです。その中で、ご自身の著名監督としての立場を利用して、性行為を求めることは、今まで無かったかどうかをうかがいたいです。
園:ないです。
服部氏(週刊FLASH):「自身の監督としての立場を利用した性行為の強要はない」とおっしゃいましが、松崎氏との裁判の判決文を読むと「園さんが性行為を行った相手を映画に出演させていたことは、真実であることが認められる」とあります。これは、監督としての立場を利用した性行為があったということで間違いないと思うのですが。いかがでしょうか?
園:(テキスト読み上げ)それは、弁護士の立証活動の方針によるものであって、そもそも、訴訟の争点はワークショップを通して被害があったかどうかという点である。しかし、松崎はワークショップに関係がない匿名の証言者、そんな証言者が存在するのかすら疑わしいが、これらの証言をまとめた供述書を提出してきた。裁判の遅延を防ぐため、弁護士はこれら本論と関係しない供述を否定するのみで、本論の立証活動に集中した。このように、提出された供述を争わなかったために認定された。例えば、千葉氏の供述とかは、ワークショップとなんの関係もないので、弁護士は争わなかったのです。認定されたのは、次の理由からである。まず、「通常は氏名を明らかにした人は、虚偽を述べた場合、自分が糾弾されるため、実際に自分の体験したことを話していると考えられる。そして、千葉氏は実名で供述しているため、真実と考えられる」と裁判所は認定しました。しかし、実名で告発するからと言って、本当のことを言っているとは限りません。草津市長の件を、あなたはどう説明しますか? 証拠の無い被害申告に寄り添い、フラワーデモまで行い、メディアはこぞって草津を「レイプの町」だと攻撃し続けた。その結果、告発者がみずからの供述を嘘だと、えー(ページをめくりながら)認めました。あの時、草津市長が亡くなっていたら、メディアは殺人鬼ですよ。
「監督が女優と恋愛をしてはいけないような空気を作ってはいけないと思う」
神保哲生氏(VIDEO NEWS):園さんね、週刊誌の記事の内容や、あるいは松崎さんのSNSの書き込みに、事実関係上は色々と問題があって、今回はその部分を裁判所が認定した。何度も(資料を)お読みになっているけど……それは理解しました。ただね、先ほど園さんが、まずこの件を映画にするのかと聞かれた時に、英語の通訳の言葉を借りると、「nothingからsomethingが生まれた」だと。一切何もないところから、こういうことになったと。それから、先ほども質問に対して、「映画監督の立場を利用して性行為を強要したことはない」と断定されているわけですよね。そうすると、うかがわなきゃいけないのは、なぜ、今回、園さんがこのような状況に追い込まれたのか。それぞれの裁判は、もうそれで結構なんです。園さんご自身には、思い当たるところが何もなく、何もないところ、本当に「nothing」から突然「something」がやり玉にあげられたというのが、園さんのお立場なのか。思い当たるところはあるが、例えば監督の地位を利用してそういうこと(性行為)をしたことは無いとご自分で思っておられるのか。あるいは、実際の裁判の争点になったものについては問題があったと思われるのか。そこのところは、大きな違いがあると思います。そこだけ、お話をうかがえますか?
園:女優と恋愛状態に陥ったことは、もちろんあります。例えば、今の奥さんは、自分の映画に出演してもらう中で恋に落ちて、結婚に至りました。結婚に至るまででなくとも、もう、ぼくは50本以上映画を撮ってますから、そのような(出演者との)恋愛経験もあります。その時に、誓っていいますが、自分の監督としてのポジションから、それを利用して女優さんと付き合ったとか、そういうことはございません。本当に、監督が女優と恋愛をしてはいけないような空気を作ってはいけないと思うんですよね。もう一つ言うと、この業界というのは、非常にセンシティブで、オーディションで何回も落とすと、だんだんと恨みを買う。一旦キャスティングしたあとにクビにしたりとか……それは、演技上のプランでやっぱり違った時に言うんですけど、そういったことが何回も繰り返されると、いろんな私怨を買うわけです。
「書かれたことは不名誉なんで、ぼくは控訴を考えてます」

アズハリ:5分ほど時間があるので、短い質問をさせてください。今回(対松崎悠希裁判)の損害賠償金はいくらでしたか?
園:そんなに多くないですね。ぼくは、損害賠償をしてほしくてやった裁判ではなくて。すべての発端は、あのツイートなんです。松崎が書いた「俺の知り合いがワークショップで体を要求された」って、あのツイートのおかげで『週刊女性』も乗っかってきて、それですべてが始まったんです。あのツイートがなければ、こんなことにはならなかったんです。だから、最初のきっかけであるあのツイートは、本当なのかどうなのか、という裁判だったんですよ。3年間、彼は一切証拠を出さずに、横に広げて、「こんなこともあるから、ぼくのツイートは正しいんじゃないか?」と言う。だから、それについて、弁護団が取り扱わなかったのは「ちょっと失敗したな」というところは、実際あります。民事裁判ってのは、取り扱わないと、そういう認定をしがちになってるケースがある。そういうことですね。とにかく、きっかけとなった彼のツイートは間違いなく虚偽であったということは、判決で出たわけです。主文はそのようになってますけど、判決文の一部にそうやって(性行為を迫ったなどの認定が)書かれたことは不名誉なんで、ぼくは控訴を考えてます。そして、つぶさに、それらの余計な松崎の証言を、ひとつずつ潰していけばいいだけなんで。彼は、一個を潰すと、そこで逃げていくんで。一個を集中して言うと、絶対に逃げていくんですよ、常に。横へ、横へと逃げちゃうんで。それだったら、逃げたぶんだけ追いかけて、控訴して、これは本当なのかどうなのかを調べあげればいいだけなんです。
佐野亨氏(フリーランス):2022年に週刊誌報道が出た直後に、園さんは謝罪文を発表されています。その文章の中では、「週刊誌報道の中に一部事実ではないことが含まれているので、それに対してはしかるべき対処をしたいと思います」ということを書かれている一方で、「映画監督としての自覚のなさを自覚し、今後のあり方を見直したいと思います」とも書かれているんです。しかしその後も、今日の会見でも、自身は潔白であるとおっしゃっています。昨年2024年に、ポーランドの『InlanDimensions International Arts Festival』の主催者であるニコデム・カロラク氏によるインタビュー記事が、ウェブ上で発表されました。これは現在は削除されていますが、そのインタビューに答えて、やはり「性加害の疑惑はすべて虚偽である」という主旨のことをおっしゃっています。最初に、「あり方を見直したい」とおっしゃっていた時には、当然、自身にも何らかの落ち度があるという認識のもとで発信されていたと思うのですが。インタビュー記事でも、今日の会見でも、「すべてが虚偽である」という認識に変わっているように見受けられるのです。その点は、いかがですか?
園:最初のときは、それ(『週刊女性』の記事)がまさか全ページ虚偽だとまでは、思わなかったんです。何か悪いことが、自分にもあったんじゃないか、と。反省点が自分にもあるはずだ、という意味だったんです。でも、フタを開けたら、映画配給会社の告発は架空の人物によるもので、ネットで拾った話だとなったり。ほいで、女優たちは存在しなかったりするとか。そうなるとね……。自分でも、もっと何か酷い、気づかないことがあるんじゃないか。そういう思いが、その時はあったんです。
アズハリ:2つだけ、質問してもいいですか?
園:うーん、どうしよう。
久枝:次の予定がありますから。
園:じゃあ、またで。今日はもうこれで。ありがとうございました。個別のインタビューは、全然、受けますので。今日じゃなくても。連絡を下さい。
会見直後には、松崎悠希氏が反論も
会見直後には、園氏と争っていた松崎悠希氏が、Xで反論。園氏の会見内容について、「ある程度の予想はしていましたが、その予想をはるかに超える、極めて不誠実でごまかしに満ちた会見」と評し、結審した裁判の判決文全文など、資料を多数公開している。
また、松崎氏は「自身の性加害疑惑を隠し、私が園氏を『性加害監督』と呼んだツイートをもって、新宿警察署に『松崎悠希から侮辱された』と昨年(2024年)の4月に駆け込んだ件を持ち出し、『松崎悠希を刑事告訴し、彼は書類送検されております!』と語気を強めて宣言することで、悪人は自身を告発した松崎であり、自分は無実の被害者である、と印象操作をしようともしていましたが…そんな事に引っかかる人なんて、いませんよ?」と、園氏の個別の発言にも反論。
「今回の判決で唯一認められなかったのは、『ワークショップで知り合って…』の部分だけです。しかもそれも『一次証言者がいなかった(伝聞はいる)』というだけです。つまり、もしも園氏が控訴してきて、私側が控訴答弁書で『ワークショップで知り合って…』という証言を新たに提出し、それを裁判所が認定した場合、私のツイートの『すべて』が『真実』と認定されることになります。すると、『公共性・公益性』は既に認定されているため、『真実性』と『公共性・公益性』の両方が揃うことになり、『名誉毀損』すら認定されなくなる可能性も出てきます。ご自分で、更に事態を悪化させるおつもりですか?」と、控訴に言及した園氏をけん制している。
園子温の記者会見を見ました。ある程度の予想はしていましたが、その予想をはるかに超える、極めて不誠実でごまかしに満ちた会見でした。… pic.twitter.com/ClB1t9Ky2o— Yuki Matsuzaki 松崎悠希️ (@Yuki_Mats) May 27, 2025
園氏と『週刊女性』、園氏と松崎氏の裁判記録は、どちらも5月29日(木)現在、東京地方裁判所にて第三者閲覧が可能だ。
取材・文=藤本 洋輔
(執筆者: 藤本 洋輔)

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