マイナス金利導入から3カ月 マイナス金利の効果と悪影響について
マイナス金利とは
通常、銀行にお金を預けると、少しですが利息がもらえます。
マイナス金利の場合は、銀行にお金を預けると、逆に利息を払うことになります。
しかし、これは金融機関が日本銀行にお金を預けた時の話です。
マイナス金利を導入して、金融機関には融資額を増やすなどして、市中にお金が回るようにし、景気を刺激させる意図があると考えられます。
マイナス金利が導入されて3か月が経過しますが、私たちの生活にはどのような影響があるのでしょうか?
1 銀行の貸出金利
住宅ローンは、すでに1%を下回る低金利になっていますが、2016年3月に入り、一部の都市銀行、ネット銀行を中心に利率が低下しております。
住宅ローンの金利(変動金利の場合)は、金融機関が短期プライムレートを基準に決定をしています。
短期プライムレートとは、金融機関が会社にお金を貸すときの、最も良い条件での金利で、貸出し期間が短期(1年未満)のものをいいます。
つまり、金融機関が優良と判断した企業に融資する場合の金利のことです。
その短期プライムレートは、日本銀行が設定する短期金利「政策金利」であります。
住宅ローンの変動金利は、日本銀行の政策金利に影響されるといえるでしょう。
平成29年4月の消費10%引き上げを前に、一部の意見で増税再延期の意見も出ておりますが、すでに増税前の駆け込みを見込んでの宅地造成も多くされており、今住宅購入を考える方にとっては朗報でしょう。
金融機関には、住宅ローンやアパートローンの借り換え相談が殺到しておりますが、中小企業向けの事業資金融資については、まだ金利引き下げの動きが見られません。
金利が低下すると、金融機関は審査を厳しくするはずなので、事業者には決して良い話とは言えないでしょう。
2 預金利率・国債金利
金融機関などが国債を購入して資金運用をしていますが、国債の利率が0.2%から0.1%に引き下げられ、ほぼ運用益がない状況になりました。
一時払い終身保険などで、運用益の縮小の見込みから、販売停止や予定金利の引き下げ(掛け金の上昇)がすでに表面化しています。
一時払い終身保険は、平成27年からの相続税の基礎控除の引き下げもあり、生命保険金の非課税枠の有効活用の面でも金融機関で積極的に販売されているものです。
3 年金債務
企業の年金支払い債務の計算で、運用利率の低下により、企業が退職給付債務を計算するのに採用する割引率(将来の給付額から運用により得られる利益に該当する部分を割り引いて計算する率)が低下し、企業が積み立てすべき費用が膨らみ、決算上の費用が増えることになります。
4 まとめ
住宅ローンを借りる方など、一部では恩恵がありますが、マイナス金利の実施で個人消費の意欲が高まったとは言えず、株価もマイナス金利発表時よりも低い株価(平成28年4月28日現在)でとなっており、日本銀行の黒田総裁が「効果を見極めていく」と発言していることからも、経済活動に効果が出ているとは言えないというのが実態でないでしょうか。
(泉田 裕史/税理士)
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