熊本地震から中小企業が早期復興するためにすべきこと
完全復旧にはまだほど遠い熊本地震の爪あと
「2度目の本震の影響が大きかったですね。
熊本市内では電気、水が復旧し、4月30日、ようやくガスが復旧しました。
地元の経済をみると特に飲食店の惨状が聞こえてきます。酒類、食器などの被害が大きく死活問題ではないでしょうか。
一方、被害が小さかった震央以外のホテルや旅館は特需に沸いているようです。
他方、ただでさえ人が足りなかった建築・土木・解体業も復興の恩恵を受けています。
卑近な例として、大阪の建設機械レンタル業者が熊本地区に営業所用地を探しています」。
地元民間信用調査機関の情報マンが語るまだら模様の震災後絵図です。
4月14日21時26分、突如スマホから鳴り響いいたけたたましい緊急地震警報の直後、熊本県を震源とする震度7、マグニチュード6.5の地震が発生しました。
そして4月16日1時25分には震度7、マグニチュード7.3の本震が発生しました。
熊本県、大分県ではいまだ余震はやまず、震度1以上の地震は1070回を超え、亡くなられた方49名、行方不明者1名、建物損壊は40,019棟(4月30日午後4時半現在)など、地域に甚大な被害をもたらしました。
被災された方には、謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復興を心より願っています。
東日本大震災の教訓を活かした大手企業の対応
比較的地震が少なく、進出に有利な地価、人件費、清廉な水が多いことから、自動車関連工場、ビールや食品工場が多く進出しています。
29日には九州自動車道が全区間開通しましたが、トヨタ自動車のドア部品などを生産するアイシン九州(熊本市)は他工場に代替生産し、年内完全復旧、ホンダ(大津町)は5月6日一部操業再開予定ながら、完全復旧は8月、サントリー九州熊本工場(嘉島町)の操業再開は未定としています。
東日本大震災の教訓から各メーカーは部品等の発注先を分散することで不測の事態に備えたサプライチェーンを構築しており、完成品の供給が寸断される事例は少ないようです。
被災者支援を受けるため まずは罹災証明書の交付手続を
「14日の最初の地震は何とか持ちこたえましたが、16日の本震で家は半壊しました。やむなく、家を壊し、建て替える決心をしました」。
被災した震央の益城町北側の合志市の中小企業経営者のコメントです。
5月1日から、益城町では罹災証明書の受付が始まりました。
大規模な自然災害によって住宅が損壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して被災者生活再建支援法に基づき支給される被災者生活再建支援金(最大300万円)の支給や災害復興住宅融資などを受けるために必要となります。
思いもよらない震災により、倒壊した住宅ローンの残債に加え、家屋の解体費用、住居の新築費用が重荷になります。これがいわゆる二重ローン問題です。
全国銀行協会は自然災害の影響により、住宅ローン等を借りている個人や事業性ローンを借りている個人事業主は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用し、債務の全部または一部を減免することができるとしています。
震災により住宅ローンなど既往債務の弁済ができない、あるいは近い将来、確実に返済不能が見込まれるなどの要件を満たした債務者は特定調停手続きを活用した債務整理が可能となります。
特定調停手続きは破産などの法的倒産手続きと異なり、債権者と債務者の合意による私的整理であるため、いわゆる信用情報機関等にブラックリストとして登録されず、以後の借入れに影響しません。
中小企業支援について
上記のガイドラインが適用されない法人の支援策をみてみましょう。
これまで借入金の元利返済については、熊本県の日本政策金融公庫、商工中金及び信用保証協会は返済条件の元本一時棚上げや貸出の迅速化など被災企業の実情に応じて対応します。
とりわけ中小企業の利用頻度が高い熊本県信用保証協会では震災支援短期制度融資として直近の月商の1か月以内の資金(融資期間6か月以内)を保証するほか、災害補償制度融資として熊本県内事業者で罹災証明を有する中小企業に対して最大2億8000万円(融資期間10年以内、据置期間1年以内)の保証を行います。
政府系金融機関の日本政策金融公庫国民生活事業では災害復旧貸付として別枠で3000万円(融資期間10年以内、据置期間2年以内)などの制度があります。
個人も法人もまずは取引金融機関の窓口あるいは熊本県、熊本商工会議所などの公的機関に詳細を問い合わせて早期の復興を遂げていただきたいと切に願っています。
(村上 義文/認定事業再生士)
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