「フランク三浦」はセーフ 商標めぐる争いでパロディー商品が「勝訴」

「フランク三浦」はセーフ 商標めぐる争いでパロディー商品が「勝訴」

パロディー商品側が勝訴の衝撃

スイスの高級時計「フランク・ミュラー」のパロディ商品名「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた訴訟の判決が12日、知財高裁でありました。
鶴岡稔彦裁判長は「イメージや外見が大きく違う」として、「三浦」側の勝訴とする判決を言い渡しました。

パロディーであるかではなく、両者の商標そのものの類比判断が本質

この裁判ではパロディー商品に商標権が認められるかというところに目がいきそうですが、争いの本質は商標が類似しているか否かということにあります。
原告(株)ディンクス及び被告FMTM Distribution Ltd. の指定商品には時計が含まれ、指定商品を共通にしています。

対比される商標が同一又は類似の商品に使用される場合には、その商品に使用される商標の、
  外観(目から入ってくる印象)が類似しているか、
  観念(頭の中の記憶や連想等)が類似しているか
  称呼(耳から入ってくる印象)が類似しているか
を総合して全体的に判断されることになります。

商標が称呼のみで類似しているだけでは不十分

 原告の商標が、被告の保有している3つの引用商標1、2、3と類似する商標か否かについて知財高裁で判断がなされました。
原告の商標は、片仮名の「フランク」と漢字の「三浦」を結合したものを手書き風に表現したものです。
そして、漢字の「浦」の右上の「、」がないので当用漢字等には存在しない文字記号になります。

 引用商標1は、「フランクミュラー」という片仮名の表現であるので、「フランクミュラー」の称呼が生じます。
引用商標2は「FRANCK M ULLER」の欧文字表現であり「フランクミュラー」の称呼が、引用商標3も「FRANCK M ULLER REVOLUTION」の欧文字表現なので、「フランクミュラーレボリューション」との称呼が生じます。

 原告の商標の称呼と引用商標1の称呼は第5音目以降が「ミウラ」と「ミュラー」である点で異なっています。
しかし、裁判所は全体の語感や語調が近似して紛らわしいものというべきであり、原告の商標と引用商標1は称呼において類似すると判断しました。

 その一方で、原告の商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成であり、引用商標1は片仮名のみの構成であるから外観において明確に区別し得ると判断しました。

さらに、「フランク三浦」から日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し、引用商標1からは、外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じることから、両者は観念において大きく相違すると判断しました。

 更に、原告の商標及び引用商標1の商品において、専ら商標の称呼のみによって商標を識別し、商品の出所が判別される実情があることを認めるに足りる証拠はないと判断し、原告の商標と引用商標1は、称呼においては類似するが外観が明確に区別し得るものであり、観念においても大きく異なるものであるので同一又は類似の商品に使用されたとしても、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえないと判断しました。

販売価格の差も判決の決め手になっているが、商標そのものの類比判断が重要

 このように観念や外観が大きく相違すると判断した上で、被告の商品 は、多くが100万円を超える高級腕時計であるのに対し、原告の商品の価格が4000円から6000円程度の低価 格時計であって、その指向性を全く異にするものであって、取引者や需要者が、双方の商品を混同するとは到底考えられないことから両商標が類似するものとはいえない判断しています。

 引用商標2及び3との類否についても、称呼は類似するが観念においては大きく相違し、外観において明確に識別し得ると判断し、無効審判で商標法4条1項11号に該当するとした特許庁の判断に誤りがあるとしました。

説明は省略しますが、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号についての特許庁における審決の判断が間違いであるとされました。
例えば、商標法4条1項15号の判断では、15号の要件を満たすかどうかの判断が重要であり、原告の商品が被告の商品のパロディーに該当するか否かによって判断されるものではないと知財高裁が判示していることに注意すべきです。

手書きによる文字の特徴が外観の類比判断に重要になることがある

「フランク三浦」を手書き風に表現したことが外観非類似と判断された理由の大きな要因となっていると思われます。
商標出願に際しては、手書き風文字等の字体による印象が重要になる場合があることに留意すべきなのです。

(鈴木 壯兵衞/弁理士)

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