処女作『思考のスイッチ』が大ヒット中! 鬼才クリエイター・西島知宏さんが、着想のネタバレ的な思考本を書いた理由
発売から僅か2ヶ月で、Amazonビジネス企画の売れ筋ランキングで1位を獲得した『思考のスイッチ ~人生を切り替える11の公式』。その著者は、国内外の広告賞を総なめにしてきた鬼才クリエティブ・ディレクター西島知宏さん。
「考えることに悩んでいる、すべての人へ」向けて書かれた本書は、ビシネスから就活、そして恋愛にまで応用できる具体的なメソッドで構成され、そのわかりやすさが話題となっています。
しかし驚くべきことに、本書が初の著書という西島さん。いきなりベストセラーを生み出したトップクリエイターの頭の中、ある種ネタバレのような思考本を出版した理由に迫ります。
■ 企画を考えるとき、なにから手をつけていいかわからない人に
――『思考のスイッチ ~人生を切り替える11の公式』がビジネスマンを中心にベストセラーになっています。客観的に見て、支持されている最大の理由はなんだと思いますか?
昔から結構いろいろな物事の法則性を発見するのが好きなんですよ。”表現”ってあやふやなものだと思うんですが、そこから一定の法則を探し出したのが本書です。
最初は広告の企画を立てる本にする予定だったのですが、編集の人と話した結果、それでは読み手の幅を限定しかねないってことで、なるべく多くの人が日常生活で使えそうな内容に落とし込みました。なので、わりと手取り早く実践できる部分を意識して書いたつもりなので、支持されているとしたらそうした実用性の高さがあるのかなって思います。
――本書の核となる『思考11の公式』は、いつどんなタイミングで完成したのでしょう。
社会人になって1年目の頃は、意外とヒマで時間があったんですよ。そこで図書館に通い詰めて、過去の広告の中から話題になった作品をピックアップしていたんですよ。同時に、なぜそれが評価されているのかって部分を突き詰める作業をしていまして。
それで1番最初に作ったのが”売れるキャッチコピーの法則”です。自分用に20個くらい用意しました。それを応用してコピーを書いていたら、これが結構評価されたんですよ。それで昨年、街角クリエイティブを立ち上げたんですけど、そこでもう一度、今度は”ネットでバズる法則”を作ってみたんです。
それを元にいろいろ書いた記事のひとつが、『JK用語で「鶴の恩返し」を読んでみた』。昔からある誰もが知るフレームを、あるあるネタとしてずらせばバズるみたいな。それを見た出版社の人から声をかけていただいて、本書を書くことになったんです。
なので半分以上は、この本を書くために改めて整理したものなんですよ。それまでは自分の仕事に対してしか考えていなかったから、仕事よりもっと幅広い実生活においても使える法則に練り直した感じですね。
――実際に日常で使える法則が本書の魅力のひとつですが、どんな人に読んでほしいですか?
1番はやっぱり困っている人。前が見えなくなっている人にこそ読んでほしいですね。それで少しでも考えるキッカケになってくれたら嬉しいです。
例えば、僕もそうだったけど、社会人1年目は企画を考えるにしても、なにから手をつけていいかもわからないと思うんですよ。広告業界って先輩がイチからなにかを教えてくれたり、誰かが楽な近道を教えてくれるとか、一切ないんですよね。それがいい部分もあるんですけど。
だけど会社によっては、そんな先輩もいないような悲惨な状況もあると思うんです。そんなときこそ、これを読んで法則に当てはめれば一応それなりの企画ができちゃうみたいな(笑)。クリエイティブな人にいうと怒られそうな話ですけど、世の中にそんな本が一冊くらいあってもいいかもってことで。
ある程度のレベルまでですが、企画を考えることは難しくないんだよってことを伝えたかったんです。もちろん広告業界以外の人たちにも、どんどん読んでほしいですね。僕が書いていることは、あくまで着想のことなので、幅広い業種の人に参考にしてもらえると思います。
■ あとがきには”いつかこの本を捨ててください”
――第4章に、”どんなつまらないことでもいい。「自分が1番くわしいもの」を作る”とあります。そこで西島さんは、自分の武器を”強い言葉”と書かれていますが、これは具体的にどんな言葉なのでしょう。
強い言葉を簡単にいうと”新しい言葉”。それは見たことがない組み合わせのことです。誰も聞いたことがない表現の仕方は、強い言葉になるんじゃないかなって。
本書にも書いていますが、ジェームス・W・ヤングの『アイデアの作り方』にある通り、すべてのアイデアは既存の要素の新しい組み合わせである、という発想が根本にあります。
絶対的に新しい言葉は作れないけど、新しい組み合わせは作ることができるってことですね。
でもそこで重要なのは、その言葉が納得感を生めるかどうかなんです。それができたら、柔らかい言葉でも強いインパクトは作れると思うんですよね。
――強い言葉ではないですが、本書にもあとがきに”いつかこの本を捨ててください”とあります。その真意も書かれていますが、あえてお話を聞かせていただければ。
この本が力になれるところって、あくまで困らないレベルの企画の立て方までだと思うんですね。僕は13年ほど企画の仕事をしていますが、やっぱりプロの現場では、この法則だけでは通じないわけです。
だからこれを読んで共感してもらえたのなら、最終的にはこの本を置いて、自分の道を進んでほしいなって思いますね。
もう少し具体的にいうと、やっぱりどんな仕事でも、そこそこまともにできるようになるのって10年くらいかかると思うんですよ。
もちろん優秀な人はもっと早く開花するかもしれません。でも本当に濃い人間関係やお金の感覚とかも含めて、トータルで熟すのって数年では無理なんですよね。
だからこそしっかりと熟して、そこで自分が大丈夫だって思えたときに本書を捨てて……いや本当に捨てなくていいんですけどね。
そこは、あとがきってことで最後に刺激的なワードとして、つい書いちゃった部分なんで(笑)。基本はお守りみたいに本棚に置いて、ちょっと迷ったときに見てもらえれば最高ですね。
――では最後に今後の話ですが、そんな本書から卒業した人に向けるような、さらに上級者用のメソッドを記した本とかも考えたりしています?
今は自分から提案する気はあまりないけど、実はちょっと書きたい気持ちはあります。でもどうせなら次は違うジャンルを挟みたいですね。それこそ例えば小説とか。
――西島さん、作家デビューですか!
やっぱり自分の人生で後悔していることなんかもあって、そういうのをデフォルメして書いてみたい気持ちはありますね。ちょっと茶化しながらも、最後はほろっとくるみたいなスタンスが自分には合っていると思うから、そういう視点で振り返りつつ。あくまでフィクションとして書きたいです、自伝ではなく。
街角クリエイターをやって感動したことは、いろんな業界に優秀な書き手がたくさんいることがわかったことなんです。結構、僕は書くことに関しては自信がある方だったけど、やっぱり才能がある人はいっぱいますよね。映画のコラムの田中泰延さんとか、ツイッターで有名な燃え殻さんとか、個人的には凄く刺激になっています。
実はここ数年は書くことに疲れていた部分もあったけど、ネットのおかげで新しいモチベーションが生まれているんですよ。おかげで今やネットに書くのが大好き、みたいな感じになりつつあります。
すでに街角クリエイターで、わりと自由に好き勝手書いてるんですけどね(笑)。
<プロフィール>
西島知宏(にしじま ともひろ)
1977年京都府生まれ。幼少期の夢は仮面ライダーになること。2003年電通入社し、OCC 新人賞、TCC 新人賞、OCC 新聞雑誌広告部門賞、TCC賞などを受賞。2007年、退社とともにクリエイティブブティックBASE設立。その後も、日本新聞協会賞、OCC グランプリ、インターネット広告電通賞、 日本プロモーショナル・マーケティング・プランニング賞金賞、 ニューヨーク・テリーアワード、スパイクスアジアなど、数々のアワードを受賞。2015年にはバイラルメディア「街角のクリエイティブ」を立ち上げ、編集長に就任。『JK用語で「鶴の恩返し」を読んでみた』など、自身の執筆による記事でバズらせ、月間50万PVのメディアに成長させる。
■街角クリエイティブ
http://www.machikado-creative.jp
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