ウィキリークスの意義とは何か アサンジはテロリストか?

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哲学者スラヴォイ・ジジェク氏

 内部告発サイト・ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏は、2011年7月2日にロンドンで、哲学者スラヴォイ・ジジェク氏との対談イベントに出演。10月6日のニコニコ生放送では、この模様を収めたアメリカの独立系報道番組「デモクラシー・ナウ!」を日本語字幕付きで公開した。

 各国首脳が最も恐れる男と、現代思想界のカリスマ哲学者が共に指摘するのは、メディアのあり方についてだった。目立ったのは、巨体を揺らしながら激しく喋るジジェク氏。彼は、

「情報がないのではなく、権力者に操られているのだ。汚いことをしていると皆が知っているが、その情報は遠まわしに伝えられ、無視できるようになっている」

と訴える。各地で行われている人権侵害、日本なら政治とカネ、芸能界とヤクザ・・・われわれはさまざまな情報から、現実がいかに汚れているかを”知っている”。しかし抽象的な知識と、動画や写真、機密文書の持つリアリティとは、比べ物にならない。われわれはそれを見ることで、”新しい事実”など何も得なかったのに、大きな衝撃を受ける。ジジェク氏は、これこそがウィキリークスの意義だとし、

「誰もが知っていても、『王様は裸だ』と公言した途端すべてが変わる」

と述べる。

 そんなウィキリークスの登場によって、メディアが何を伝え、何を伝えられなかったのか、そして、何を”伝えなかった”のか、一層ハッキリとした。表現の自由、民主主義、権力の監視などを追い求めているメディアは、実のところ権力の都合の良い範囲でしか物を言わないのではないか。

「周知のように、メディアは真実の全貌を語らない。嘘を直接は言わないが、言外に匂わせるのです。ウィキリークスはこれを暴く」(ジジェク氏)

■アサンジはテロリストなのか?

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏

 ウィキリークスでは、リークの裏をとったり影響力を広めるため、多くの既存メディアと協力関係を築いている。しかし、

「私たちが扱った世界の多くの国々の政府機関の構造やメディアによって、歴史が形作られ、歪められることを学んだ。私たちが社会全体で協力するために知っておくべきことをねじ曲げる。メディアによる歴史の歪曲が最も有害だ」

とアサンジ氏が述べるように、基本的には既存メディアに否定的だ。それだけに、「アサンジは情報テロを行っている。テロリストは敵の戦闘員だ」、「アサンジはジャーナリスト失格だ」と権力者はもちろん、メディア側からも強い非難を浴びている。

 これについてジジェク氏は、「いい意味で、アサンジ氏はテロリストだ。同じ意味でガンジーもテロリストだった」と、偉人を引き合いに出して、アサンジ氏を称賛。

「ガンジーの行為は英領インド帝国が平常に機能するのを妨げた。アサンジ氏の場合は情報の伝達が、通常通り抑圧の下に行われるのを妨害しようとする」

「暴力的なテロを語るとき、われわれが考えるのは社会の平常を乱す行為だ。でも、世の中を今のまま機能させるための暴力も存在しているのではないか?」

と権力やメディアの問題を改めて指摘した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]ジジェク氏の「権力者に操られている」発言から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65815019?po=news&ref=news#29:00
・[ニコニコ生放送]議員やメディアの「アサンジはテロリスト」VTRから視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65815019?po=news&ref=news#1:15:15

(野吟りん)

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