原発は「リアルな減らし方をしないと、かえって減らない」 総合エネ調・橘川教授

「推進派・反原発で分けると対立する」と橘川教授

 総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会の委員である阿南久氏と橘川武郎氏は、2011年10月4日ニコニコ生放送の番組に出演。一橋大学大学院の教授である橘川氏は、原発について「減らしていくことについてはコンセンサス(合意)があると思う」とした上で「リアルな減らし方を示さないと、かえって減らない」と語った。

 福島第1原発の事故以降、政府はエネルギー政策の見なおしが迫られており、経産省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会に「基本問題委員会」を新設。委員には、橘川氏や全国消費者団体連絡会事務局長・阿南氏のほか、「脱原発」を強調するNGO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏ら25人が就任した。

 現在、原子力発電を含むエネルギー政策について話しあう会議は、この総合資源エネルギー調査会のほか、内閣府の「原子力委員会」、国家戦略室の「エネルギー・環境会議」があり、乱立している。藤村修官房長官によると、エネルギー・環境会議が政策を取りまとめるということだが、この日番組に出演した民主党の平智之衆院議員は「(法律に基づいた)総合資源エネルギー調査会で決まることが非常に重い」と言い、見方は分かれている。

阿南氏「基本的に原子力発電をゼロにする」

 また、基本問題委員会のなかでも原発に対する考え方はそれぞれ異なる。では、今後のエネルギー政策に議論に影響を与えうる阿南、橘川両氏はどのような考えをもって会議に臨むのだろうか。番組で阿南氏は、原発について「徐々にゼロにすべきだ。最終目標ははっきりすべき」と語る。

阿南氏: 電力が足りなくなるから、おそらく原子力を維持しなければいけないだろうという(議論の)持っていき方ではなくて、基本的に原子力発電をゼロにすると。それを具体的に工程表に落としていって、再生可能エネルギーの技術開発だとかLNGの技術だとか計算してシミュレーションする。できるだけ早く何年で原発をゼロにするのかという目標設定してやっていく。(さらに)そこに消費者の協力を得るという進め方でなければ、私はダメだと思う。一刻も早く(原発を)もうこれ以上作らない、廃止するということを決めて、これから何百年もかかるかもしれない処分の技術をしっかりと構築していくということが大事だ。

 一方、橘川氏は原発を減らしていくという合意はあるとしながらも、現実的な方策を実行するべきだと強調する。

橘川氏: 原発(推進)・反原発と分けると対立になる。だが、天然ガスを安く大量に購入しようだとか、あるいは地熱をやるためには自然公園法の規制を変えなきゃいけないだとか、あるいは漁業権の問題など、一致できるところはたくさんある。むしろ、それを具体的にどのタイミングでやるかを決めなきゃいけない。

(ドイツの)メルケル政権は2022年までに「原子力(発電)ゼロ」と言った。一方、メルケル政権は意欲的な目標を立て、再生可能エネルギーを2020年までに35%にすると言っている。この2つばかりが日本で報道されるが、(つまりドイツでは)65%は火力でいくということ。それができるのは、ドイツの場合、50%が自給の石炭を持っているということが条件になっている。日本の場合、エネルギー自給率が4%という状況なので、(原発を)減らしていくというのはコンセンサス(合意)があると思うが、リアルな減らし方を示さないと、かえって減らない。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]一橋大学大学院・橘川教授の発言から視聴-会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv66056117?po=news&ref=news#13:44

(山下真史)

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