原発事故の賠償は「国民が税金で負担。株主は守られた」
「東電に関する経営・財務調査委員会」は2011年10月3日、野田佳彦首相に報告書を提出。下河辺和彦委員長が同日、記者会見を行った。報告書によると、福島第1原発事故の損害賠償額は今後2年間で約4兆5000億円になる見通し。また、原子力損害賠償支援機構による資本注入にも言及している。この報告書について、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が、「これまで枝野(幸男)大臣らが『国民の負担を軽減する』と言ってきたのと矛盾する」と指摘すると、下河辺委員長は「委員会の立場としては、お尋ねのような食い違いは感じていない」と語った。
長谷川氏は会見で、東京電力が融資を受けている金融機関や株主の責任について質問。下河辺委員長に対し、枝野経産大臣(当時・官房長官)が金融機関に東京電力に対する債権放棄を求めてきたことなどに触れ、「報告書によると、(東京電力は)リストラなどをすればするほど資産超過になるため、銀行には債権放棄を求めず、株主に責任も問わない(とある)。そのツケがどこにまわるかといえば、(原子力)賠償支援機構の資金交付。これは結局、国民の負担になる」とし、
「閣僚らによる答弁とのつじつまが合っていない。『国民の負担を軽減する』という趣旨と今回の報告書の内容はそぐわないのではないか」
と、損害賠償の負担を原子力損害賠償支援機構が補うことに対して疑問を呈した。
これに下河辺委員長は「委員会の立場としては、お尋ねのような食い違いは感じていない。少なくとも枝野大臣は、私と同様の実務法律家である弁護士であり、いろいろな関係で拝見する限りにおいては、大臣の頭のなかではきちんと整理した上で発言していると思われる」と述べた。また、金融機関の債権放棄に関しては当該事業者、つまり東京電力が債務超過にならない以上、金融機関が債権放棄することは”理屈に合わない”との認識を示した。
長谷川氏は同日夜、ラジオ番組に出演。会見を補足するかたちで、「報告書では、賠償負担は国が支援機構を通じて、税金で負担をするということが前提になっている。それだけでは詐欺になるから、『東電はリストラと資産売却で合理化する』とも書いてある」と説明。結果的に東京電力の財務状況は改善し、株主が守られることになるとした。また、この件については、
「調査委員会や報告書をいくら責めてもダメ。(下河辺委員長が言うように)法律があって、法律に基づいて作ったものだから。賠償支援機構法自体がゆがんでいる。そのことが今日、明らかになった」
と語った。
国と東電の「原発支配」にメスは入るか?~「総合資源エネルギー調査会」を検証する
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv66044293?po=news&ref=news#1:08:15
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv66056117?po=news&ref=news
(三好尚紀)
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