野田首相、安全運転を継続「政権当初から乱暴なスピード違反はできない」
野田佳彦首相は2011年9月30日に行なわれた記者会見で、就任1ヶ月の間、「安全運転」に終始した政権運営の今後について問われると、「政権当初から乱暴なスピード違反はできない。どんなにスピードを加速しても安全運転はやっていきたい」と語った。
野田政権にとって今国会は、次々とトラブルに見舞われた1ヶ月だった。政権発足翌日の3日には野田首相自らの外国人献金問題が露呈、藤村修官房長官は対応に追われた。7日には国会の会期幅を巡り、民主党の平野博文国対委員長が「内閣が不完全な状態では十分な答弁はできない」などと発言。これに野党は猛反発し、政府・民主党は月末まで国会を延長せざるをえなくなった。
鉢呂吉雄氏が失言によって在任僅か9日で経済産業相をスピード辞任したのは10日の夜。藤村長官が閣僚に対し「慎重に発言してほしい」と言わざるをえない事態となった。こうしたトラブルは野田首相が選んだ「身内」からもたされたもの。野田首相が胸をはった人選の「適材適所」に疑問の声があがったのは当然といえる。
また、首相は就任会見から30日の会見まで、官邸でのぶらさがりや会見など記者団からの要請には応じず、国民に対する発信力の意識の欠如が問題視された。
首相は元々、どちらかというと自らの情報発信に関してさほど熱心ではないタイプ。8月26日の民主党代表選の出馬会見ではニコニコ動画記者(七尾功)の質問に対し、「政治家というとメッセージを発信することばかり心がける」と、政治家が積極的に発信する風潮に批判的な考えを述べている。
30日の会見では、「首相からの発信がなかった分、国民に野田政権の理念やイメージが伝わっていないのではないか」との問いに対し、ここでも首相は「安全運転」を実行。後に「閣議決定した文書を読まないといけないので、自分らしさが出ていないところもあったかもしれない」と語った所信表明演説で述べた内容を繰り返した。
しかしながら回答の最後の段になると、「政権当初から乱暴なスピード違反はできない。どんなにスピードを加速しても安全運転はやっていきたい」と発言、政権運営に関する本音をチラリとのぞかせる一幕もあった。
■野田佳彦首相とニコニコ動画記者(七尾功)の一問一答
七尾記者: 今国会では安全運転に終始した感がございます。その分、国民にしてみれば総理がどのような理念をもって政権を運営していくのか、わかりにくかった印象もぬぐえません。
冒頭、「アクセルを踏む」とのご発言がございましたが総理は今後どのような具体的な「理念」や「イメージ」をもって政権運営を加速していくお考えでしょうか。
野田首相: 私なりの理念は例えば、所信表明の演説などでも述べましたけれども、やっぱり中間層の厚みが今、薄くなってきて、しかも、下にこぼれてしまったというか、言い方はちょっと気をつけなければいけませんが、戻ることができなくなっている人たちが多くなっているという状況を打開をしていくと。中間層の厚みを持った国にすることが底力のある国になるというのが基本的な理念で、そういう国にしたときに「この日本に生まれてよかった」と思える国の基本はできると思いますし、その先にはもっとプライドを持って、この国に生きてよかったなと。そういう国にしていきたいという理念があるんです。
その理念と、よくこれ国会でも聞かれましたが、個別の政策のちょっと中・長期的なことを聞かれました。それは「何をやりたいか」の世界なんですね。何をやりたいかの前に「何をやるべきか」。やらなければならないことが今、あるじゃないですか。で、わが政権の最大かつ最優先の課題はなんといっても震災からの復旧・復興と原発事故の収束と経済の立て直しと。これを申し上げました。
このことを中心に言っていたんで「安全運転」という評価なのか知りませんが、まあ政権当初から乱暴なスピード違反はできません。どんな、スピードを加速しても安全運転はやっていきたいというふうに思います。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 9月30日の首相会見 七尾記者の質問部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65665111?po=news&ref=news#20:56
・[ニコニコ生放送] 8月26日の民主党代表選 出馬会見 七尾記者の質問部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv61556200?po=news&ref=news#30:45
(七尾功)
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