仕事で嫌われる「あいまい文章」にサヨナラしよう!
「あいまいな言葉」が、誤解やトラブルを招く!
突然ですが、もしもあなたが、以下のような文章(メール)を書いているとしたら、気をつけなければいけません。なぜなら、読む人に、おもいきり負担や迷惑をかけている恐れがあるからです。
明日の会議は、いつもより少し早めに開始します。
参加者が増えたので、会議に使う資料を
多めに印刷して持ってきてもらえますでしょうか。
「少し早め」とは、どのくらいでしょうか? 5分? 10分? 20分?
「多め」とは、どのくらいでしょうか? 20部? 25部? 30部?
おそらく、メール受信者は困ってしまうでしょう。あるいは、フラストレーションを感じながら「少し早めって、どれくらいだよ!」「多めって、いったい何部だよ!」と、心のなかで毒づいているかもしれません。
すべて「あいまいな文章」が原因です。
メール送信者は「あいまいな言葉」を使わずに、次のような書き方をしておけばよかったのです。
明日の会議は、いつもより15分早く、13時45分に開始します。
参加者が3名増えたので、会議に使う資料を
全部で18部印刷して持ってきてもらえますでしょうか。
具体的に書いたこの文面であれば、メール受信者が誤解することも、困ることもなかったはずです。読み手に親切な文章です。
もうひとつ例を見てみましょう。
明日からしばらく休暇をいただきます。
Aさんが、取引先のBさんに、このようなメールをしたとします。このとき、Aさんが取ろうとしている休暇が2週間で、Bさんが想像した休暇が5日程度だった場合、どういう事態が起きるでしょうか?
1週間後に、BさんがAさんに連絡を取ろうとしたところ、休暇中のAさんはまったく携帯電話に出ない……ということが起きてしまうのです。
確認を取らなかったBさんもよくありませんが、「しばらく」というあいまいな言葉を使ったAさんの責任は軽くありません。
明日から2週間(8月18日まで)、休暇をいただきます。
この文面であれば、Bさんに誤解を与えずに済んだはずです。
副詞や形容詞はくせ者!?
とくに気をつけたいのが、副詞や形容詞を中心とする以下のような「あいまい言葉」です。クセで使っている人は、十分に注意しましょう。
【あいまいな言葉(一例)】
だいぶ/すごく/たくさん/非常に/とても/もっと/かなり/たいそう/はなはだ/めっきり/極めて/ことのほか/いたく/こよなく/ずいぶん/大変/よほど/めっぽう/いやに/相当に/はるかに/大層/すぐに/ときどき/たまに/たまたま/しばらく/まあまあ/そこそこ/素晴らしい/素敵な/美しい/おいしい/かっこいい/つまらない/おもしろい/おかしい/優しい/偉い/危ない/新しい/古い/明るい/暗い/暑い/寒い/大きい/小さい/高い/安い/低い/長い/短い/早い/遅い/広い/狭い
素晴らしいイベントになりました。
「素晴らしい」という言葉は、一人ひとりイメージするものが違います。「素晴らしい=採算がとれた」と思う人もいれば、「素晴らしいイベント=運営がうまくいった」と思う人もいれば、「素晴らしい=お客さんに感動してもらえた」と思う人もいます。つまり、「素晴らしい」という言葉だけでは、書き手の真意を伝えることはできないのです。
子供と大人が一緒に楽しめる素晴らしいイベントになりました。
具体的な表現を添えたこの文章であれば、「素晴らしい」の真意が伝わるため、読む人が理解に苦しむことはありません。
もちろん、どこまで具体的に書くかは、伝える内容や読み手との関係性などにもよりますが、正確に情報や気持ち、メッセージを伝えなければいけないときは、副詞や形容詞に頼り過ぎないよう注意しましょう。
「数字」と「固有名詞」を意識して使おう!
具体的に書くポイントは、ずばり「数字」と「固有名詞」の活用にあります。「あいまいな言葉」に代わって「数字」や「固有名詞」を盛り込むことで、文章の読みやすさと分かりやすさがアップします。
【数字】
80%、20グラム、時速25キロ、3日間、5メートル半、40℃、15時45分、24個、5カ所、7万円、1000枚、12社、1月20日……などなど。
【固有名詞】
地名、建物名、駅名、人名、商品・サービス名、会社名、施設名、店名、役職、肩書き、書名、交通機関名、機能名、プラン名、プロジェクト名……などなど。
【ダメ文】少し費用がかかります。
【修正文】約30万円の費用がかかります。
【ダメ文】最寄り駅からそこそこ歩きます。
【修正文】調布駅から15分ほど歩きます。
【ダメ文】例の納期を少し延ばしてもらえませんか。
【修正文】新商品「POOOTA!」の納期を来週の木曜日(5月4日)まで延ばしてもらえませんか。
【ダメ文】暑くてジメっとした日は、長い時間、塗料を吹かないでください。
【修正文】気温30℃以上、湿度75%以上の日は、15分以上、塗料を吹かないでください。
【ダメ文】企画を通すには、かなりの賛成票が必要だ。
【修正文】企画を通すには、15人以上の賛成票が必要だ。
できる限り具体的に書く。これが仕事で使う文章の基本です。
自分が書いた文章を読み直すときには、「数字や固有名詞で言い換えられるカ所はないかな?」と考えるようにしましょう。
使い勝手のいい「こそあど言葉」にも注意せよ!
なお、「これ」「それ」「あれ」「どれ」などの、いわゆる「こそあど言葉(指示語)」も、「あいまいな文章」の原因になることがあります。
先月の会議で「出張手当」の見直しについて話し合いました。それが本当に必要かどうかを判断するために、明日(3日)、メンバー全員にヒヤリングを行います。
「それが本当に必要かどうか」の「それ」とは何を指しているのでしょうか?「主張手当」なのか、それとも「見直し」なのか。この文章は、どちらともとれる「あいまいな文章」です。
先月の会議で「出張手当」の見直しについて話し合いました。見直しが本当に必要かどうかを判断するために、明日(3日)、メンバー全員にヒヤリングを行います。
「それ」を「見直し」に言い換えれば、読む人に誤解を与えずに済みます。
以下は「これ」「それ」「あれ」「どれ」以外の「こそあど言葉」です。
■こんな/そんな/あんな/どんな
■こう/そう/ああ/どう
■この/その/あの/どの
■こっち/そっち/あっち/どっち
■こちら/そちら/あちら/どちら
■ここ/そこ/あこ/どこ
「こそあど言葉」を使ったときは、「『それ』や『あれ』が何を指しているかが分かりやすくなっているかな?」と確認する必要があります。何を指しているかが分かりにくいと感じたときは、そのまま放置せずに、必ず具体的な言葉に言い換えましょう。
それでもあなたは「あいまいな言葉」を使いますか?
「あいまいな文章」を書く人で、「具体的な文章」を書く人の差は、そのまま「仕事ができない人」と「仕事ができる人」の差と言っても過言ではありません。
前者は誤解やトラブルを招きやすく、効率よく仕事を進めることができません。また周囲から信頼も得にくいため、仕事上での機会損失も多くなります。
一方の後者は、誤解やトラブルが少ないため、仕事が捗ります。また、周りから信頼されやすいため、何かとチャンスが舞い込みやすくなります。「具体的な文章」には、“仕事での成果”というご褒美がついてくるのです。
「たかが文章、されど文章」です。「あいまいな言葉」は“凶”、「具体的な言葉」は“大吉”と心得ておきましょう。
著者:山口拓朗
『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』著者。伝える力【話す・書く】研究所主宰。「伝わる文章の書き方」や「メールコミュニケーション」「キャッチコピー作成」等の文章スキルをテーマに執筆・講演活動を行う。モットーは「伝わらない悲劇から抜けだそう!」。
山口拓朗公式サイト
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