『嵐』が「ニャー」と言ってるニッポン観光PRビデオについて観光庁にきいてみた――「制作費についてはお答えしておりません」
日本がここまで世界の笑いものになる例がほかにあるだろうか──人気グループ「嵐」が日本観光を呼び掛ける観光庁のキャンペーンだ。観光庁は日本を、歴史的な遺産も自然もなく、若者が君臨する国として世界に宣伝したいようだ。
こんな書き出しではじまるNewsweek誌のコラムが先月話題となりました。
『嵐がニャーと鳴く国に外国人は来たがらない』
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2011/08/post-375.php
コラムの寄稿者は東京在住の仏フィガロ紙記者、レジス・アルノー氏。アルノー氏はコラムでこうも書いています。
「日本はなぜ『最高の顔』で自分を売り込もうとしないのか。洗練された職人や建築家、知識人、画家、料理人ではなく、国内限定のスターを宣伝に使うなんて」
このPRビデオ、人気男性アイドルグループ『嵐』の皆さんが着飾らない感じで日本の各地を訪れている様子をうつし出しており、普通に見ている分には、よくある感じでさほど違和感がないんですが、外国人コラムニストの目にはたいへん奇妙にうつったようです。確かに、海外の人がこのビデオを見て日本に観光へ行きたくなるかといわれれば正直よくわからないところ。観光庁はなぜこのビデオを作ろうと思ったのでしょうか。
ちなみに『嵐』の皆さんは、2010年の4月に「観光立国ナビゲーター」として選ばれ、ボランティアで日本の観光アピールのお手伝いをしているとのことです(http://www.mlit.go.jp/kankocho/news01_000038.html)。昨年はアジアで人気が上昇している『嵐』の皆さんを起用して韓国・台湾・香港へ向けてのメッセージ発信もおこなわれたそう。そして今回は世界100を超えるの国と地域へ向けてのメッセージ発信ということですが、『嵐』の皆さんに「ニャー」と言ってもらうという、観光庁のとった戦略は果たして正しかったのでしょうか。それとも、アルノーさんが言うように「日本のイメージをおとしめる」ものなのでしょうか。観光庁に素朴な疑問をぶつけてみました。
■今回話題となったビデオ『Message from Japan』
観光庁へきいてみた
『嵐』の皆さんが出演するビデオに関する質問と観光庁からの回答をそのまま掲載します。
質問1
「嵐」の皆さんを「観光立国ナビゲーター」に選んだ理由は?
回答1
「嵐」の皆さんは、国内では老若男女を問わず幅広く圧倒的な人気を誇り、また海外においても中国、韓国、台湾、香港で公演の実績があり、出演されたドラマも放送されて現地で人気を呼ぶなど、ビジット・ジャパン事業の最重点市場である東アジアでは最も人気のある日本人グループの1つと伺っています。そこで、昨年4月のビジット・ジャパン事業の新キャッチフレーズ・ロゴの選定にあわせ、「尽きることのない感動に出会える国、日本」を強力にPRしていただく「観光立国ナビゲーター」として選定いたしました。
質問2
昨年「観光立国ナビゲーター」となった「嵐」の皆さんがこれまでに「観光立国ナビゲーター」としておこなったお仕事はどのようなものか教えてください
回答2
昨年度は、韓国・台湾・香港における訪日旅行者数の拡大に向けた広告宣伝事業にご協力いただきました。具体的には秋・冬・春それぞれの季節を訴求する3パターンの動画/静止画を活用して、TVCMや新聞・雑誌、屋外ビジョンや地下鉄広告などを展開しました。
また、新国際線旅客ターミナルビル及び4本目の滑走路の完成を祝う記念式典への参加や羽田空港制限区域内における看板の設置を実施し、広く訪日観光をPRしました。
質問3
「嵐」の皆さんが出演した外国人観光客誘致ビデオについて、海外に向けて日本を売り込むにはもっと違う人選が必要なのではないかといった指摘がおこなわれています。
嵐の日本PRを外国人がメッタ切り | From the Newsroom | ニューズウィーク日本版
http://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2011/08/post-231.php [リンク]海外100カ国で配信されると言われるこの誘致ビデオに「嵐」の皆さんを起用した理由を教えてください。
回答3
震災後、日本を訪問する外国人の数は大きく減少しております。観光庁としては、一刻も早い回復を図るため、余震や原発に不安を抱く外国の皆様に一刻も早く明確なメッセージをお届けする必要があると考え、今回のビデオを作成したところです。
昨年度に引き続き、「嵐」の皆さんに「観光立国ナビゲーター」をお願いしている中での震災発生でしたから、大きな影響を受けたインバウンド復興に向けて、元気な「日本の顔」としてご協力をお願いさせていただきました。
質問4
この誘致ビデオはどこで、どのような形で、どれくらいの頻度・期間流されるものなのでしょうか。
回答4
以下のとおりです。(一部、これから実施予定のものも含まれています。)
・100カ国・地域以上のCNNでのTVCM放映
・台湾、韓国、マレーシア、米国、英国の屋外ビジョンや店舗内スクリーン上映
・世界各国・地域の在外公館(大使館、総領事館)や日本政府観光局(JNTO)現地事務所、現地旅行会社等の窓口でのモニター上映
・日本乗り入れの航空会社の国際線機内モニター上映
・日本政府観光局(JNTO)Visit Japanホームページ掲載
質問5
「嵐」の皆さんはいわゆる芸能人でいらっしゃいますので、各国でビデオが放映されることによってメリットを享受する部分もあると思います。これは見方を変えれば観光庁が国の予算で芸能人の方のプロモーションを肩代わりしたという解釈もなされるおそれがあります。この点に関してのご見解をおきかせください。
回答5
「観光立国ナビゲーター」としてのお仕事をお願いするにあたり、観光庁が「嵐」の皆さんに報酬をお支払いしたことはございません。全てボランティアでご協力頂いております。海外で人気の「嵐」さんのご協力を得ることで、観光庁が実施する訪日旅行促進事業の効果がより高まっていると考えています。
質問6
各国語バージョンがあるとのお話をきいたのですが、何カ国語のバージョンがあるのでしょうか。
冒頭と最後の挨拶、本編(国内各地でのロケ部分)、BGMとして流れている歌は、私が拝見したバージョンではすべて日本語だったのですが、各国語バージョンでは、そのうちのどの部分が各国語となっているのでしょうか。
回答6
冒頭と本編(国内各地でのロケ部分)、BGMはいずれのバージョンでも日本語ですが、字幕と最後の挨拶は英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の計4パターンに対応しています。今後、スペイン語・フランス語・ロシア語にも対応予定です。
質問7
この誘致ビデオの制作にかかった総額と内訳を教えてください。
回答7
個別事業の契約金額、またその内訳についてはお答えしておりません。なお、先述したとおり「嵐」の皆さんに報酬はお支払いしていません。
質問8
この誘致ビデオは世界各地で配信されたそうですが、そのために使った費用の総額と内訳を教えてください。
回答8
先述したとおり、個別事業の契約金額、またその内訳についてはお答えしておりません。なお、国際線機内モニターでの上映は、趣旨をご理解いただいた各航空会社のご厚意で協力いただいております。
質問9
最初と最後のビルの屋上のシーンですが、これはどこなのでしょうか。なぜこの場所を撮影場所として選んだのか教えて下さい。また撮影時の天候は曇りだと見受けられますが、そのような天候のもと観光誘致ビデオの撮影をおこなったのは何故でしょうか。
回答9
六本木にあるビルの屋上です。広く日本(東京)の町並みが見渡せる場所として選定しました。限られた予算で可能な範囲で、撮影場所であるビルの屋上をおさえたところです。天候については晴天がなく残念ではありましたが、震災後一刻も早くメッセージを発信する必要があったこと、改めて関係者のスケジュールを調整するには時間を要することが予想されたこと、さらに技術面・効果面から、曇りであれば今回の「Message from Japan」が狙いとしたメッセージの伝達に大きな支障とはならないと考え、決行いたしました。
質問10
このビデオを世界各国で放映したことによる効果はいかほどのものだったのでしょうか。
回答10
観光庁が日本政府観光局(JNTO)の海外現地事務所や、現地旅行会社などからヒアリングしたところによると、東アジアをはじめ各国・各地域で好評をいただいており、「海外からの支援に対する感謝の意や日本からの歓迎の心が伝わった」、あるいは「日本の観光地の魅力が伝わった」といったコメントも伺っております。
以上です。
※トップ写真は観光庁サイトより。『嵐』の皆さんが「観光立国ナビゲーター」として選ばれた当時の記者会見の様子。
トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。
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