中国のオタクに「中国における日本のアニメ・マンガ事情」を聞いてみた

中国における日本のアニメ・マンガ事情は?

 日本のみならず、世界中の若者たちの間で人気がある「日本のアニメ・マンガ」。いまやその勢いは、中国各地にも広まっているという。そこで、「日本のアニメ・マンガが大好きで日本に来た」という上海出身の中国人留学生の方に、中国でのアニメ・マンガ事情を聞いてみた。

■中国で圧倒的に人気のある日本のアニメ・マンガ

――中国のアニメ・マンガ事情について聞きたいと思います。中国では、「中国のアニメ・マンガ」と「日本のアニメ・マンガ」では、どちらが人気なのですか?

中国人留学生: 日本が圧倒的に人気です。でも個人的には、近年、中国のマンガも以前よりだいぶ良くなっている気がします。

――「日本のアニメ・マンガ」が、「中国のアニメ・マンガ」より人気な理由は何だと思いますか?

中国人留学生: まず、ストーリーですね。中国の国産アニメは、子ども向けのものが多いです。また、説教的なものが(特に昔は)多かった。80年代には「美術片」という国産アニメのジャンルがあり、水墨画などの技法を使って、いろいろと良いストーリーを創りましたが、なぜか続かなかったようです。人生や夢などに関する話なら、日本アニメのほうが強いですね。だから、特に10代・20代の青少年の間で人気を集めているのだと思います。そして何と言っても、クオリティの高さ! ですね。そういったBGM、画像、声優など、いろいろ備われば、中国もいい作品を作れると思います。

――それでは、中国でいま人気のある日本のアニメ・マンガは何ですか?

中国人留学生: 『銀魂』、『ワンピース』は人気があります。最近は『NO.6』や『青の祓魔師』が腐女子の間で人気があるようです。

――中国にも日本と同じような腐女子がいるんですね。そして、『銀魂』が政府の検閲に引っかかっていないことが意外です(笑)。

中国人留学生: 『銀魂』は正式に放送していませんからね。ネット上で見るんです。

――ネット上に違法にアップロードされているものでしょうか。マンガに関しても、やはり違法なものが多く出回っているのですか? 日本のマンガは高額なこともあり、中国では海賊版がかなり出回っていると聞いたのですが。

中国人留学生: 今は少なくなりましたが、昔はずいぶんありました。今はネット上でダウンロードされていますので、実際に海賊版の本を出すのも、昔よりは少なくなりました。逆に、中国国内の漫画家が出版した絵本などの海賊版が出てきたようです。実際に買うのは、即売会で売っている同人誌やグッズくらいです。

――中国のオタクはすべてネットで済ませるんですね。ネットと言えば、中国ではニコニコ動画は見られるのですか?

中国人留学生: 政府がネット規制をしているので、アメリカ経由なら見られます。けれど、画質もスピードも遅くなってしまい重くなるので、ニコニコ動画と似たようなコメントが流れるサイトが中国にも出来ました。

――そうなんですか。こうして聞いていると、政府が規制するがゆえにパクリサイトやネットでの違法アップロードが横行している気がします。違法と言えば、中国はよく日本のアニメを模倣しますが、その件については中国のオタクの人たちはどう思っているんですか?

中国人留学生: 私たちオタクもパクリだと分かれば指摘したり、抗議しています。パクリが無くならないのは非常に残念です。

■中国の「同人誌即売会」事情

上海の同人誌イベント「ComiCup」公式サイト

――日本のアニメ・マンガに出会ったきっかけは何ですか?

中国人留学生: 子供のとき(90年代初頭)から『ウルトラマン』、『花の子ルンルン』などの日本アニメが放送されていて、それが日本アニメを知るきっかけになりました。そして、小学校のときは『スラムダンク』が大ヒット!! そのストーリーに感動して、「アニメってすごい」と思っていました。そして高校進学の頃には、『スレイヤーズ』『タッチ』『エヴァンゲリオン』など、さまざまな日本アニメが夕方6時から6時半に放送されていたり。それが日本アニメが好きになったきっかけとも言えるかな。

――中国ではどれくらいの人が日本のアニメ・マンガに親しんでいるのですか?

中国人留学生: 私と同じ世代(20代前半)の人なら、ほとんど『スラムダンク』は知っています。10代・20代の若者は、日本のアニメ・マンガ好きな人が多い。今年は100以上の「同人誌即売会」が中国各地で開かれます。規模はそれぞれ違いますが、出身地の上海では、今年6月の即売会で2万人の来場者がいました。それは日本とは比べものにならないけれど、4年前のたった1000人ほどの来場者数と比べれば、増加のスピードは速いと考えています。

――すごいですね。そういえば、中国で開かれている即売会などのイベントは全て中国政府が開催していると聞いたのですが・・・。

中国人留学生: 開催ではなく、協力ですかね。例えば、上海の「ComiCup」というイベントは、最初は学生の漫画サークルから始まりました。政府のところに登録して、公式イベントを開催していますが、具体的な仕事は自分たちでやっているようです。でも、政府開催のものもあります。コスプレ大会の「ChinaJoy」などはそういう例です。

――政府が関係してくると、規制などが厳しくありませんか? 日本みたいに成人指定のものは?

中国人留学生: (日本なら)R-18のものは結構ありました。

――政府が関与しているのに意外です。検閲入るんですよね?

中国人留学生: それはグレーですね。バレないように売っています(笑)。

■日本のアニメ・マンガがきっかけで日本語を学ぶ人は多い

日本の漫画における中国人の描写はやっぱりステレオタイプ?

中国人留学生: そうだ、アニメが好きで日本の声優学校で勉強して、今年の4月にデビューした中国人声優の方がいます!

――劉セイラさんですね。彼女のように、日本のアニメ・マンガがきっかけで日本に興味を持ったり、日本語を勉強する人は多いのですか?

中国人留学生: 多いですね。あとはジャニーズが好きで日本語を勉強する人もいました。

――ジャニーズも人気なんですか。アニメ・マンガにしろジャニーズにしろ、日本のポップカルチャーがきっかけで日本語を学ぶ人は多いんですね。そういえば私たち日本人からすると、中国の方は反日感情を持っている方が多いというイメージが強いのですが、日本のアニメ・マンガのおかげでイメージが変わったことなどありますか?

中国人留学生: 日本のアニメ・マンガは、確かに日本のイメージアップにすごく影響を与えました。しかし、アニメ・マンガなど文化的なものを、歴史や政治的なものとは分けて見る人もいると思います。例えば、日本学科でアニメ好きな知り合いも、2005年のデモ(当時の小泉純一郎首相の靖国参拝に対する抗議デモ)に参加していました。

――なるほど。話は変わって、日本のマンガには多くの特徴ある中国人が出てきますが、「このマンガの中国人の描写は間違っている!」と気になることはありますか? 例えば、中国人キャラが日本語を喋ったら必ず「~アル」という語尾になったり。

中国人留学生: あります! 必ずツインのお団子ヘアだったり、「~アル」と言ったり、民族衣装を着ていたり。キャラクターの特徴を表す一つの手段なのかなと思いますけど、とても多いので何でだろうって思いますね(笑)。

――中国人のキャラクターの特徴はいつもステレオタイプですよね(笑)。最後に、何か伝えたいことがありましたらお願いします。

中国人留学生: アニメイトのようなアニメ・マンガ関連のお店に、たくさん中国に進出してもらいたいです! 今はグッズなどを買えるお店がほとんどないので。

――ありがとうございました。

(中村真里江)

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