A4の裏紙一枚で頭スッキリ! モヤモヤをなくし、即断即決できるようになる「ゼロ秒思考」
頭の中がモヤモヤしたまま、すっきりとしない。決めなくてはいけないことがあるのに、気持ちばかりが焦って何も決められない。やらなくてはいけないことは多いのに、なかなか行動に移せない。それが転職・就職、結婚、出産などといった大きなライフイベントともなれば、よりプレッシャーに感じ、一歩も前に進めなくなってしまう。
多くのひとが抱えるこうした悩みに対し、シリーズ累計22万部を突破している「ゼロ秒思考」(ダイヤモンド社)の著者・赤羽雄二氏は、A4一枚の「メモ書き」で、心の整理をし、考えをまとめ、深めるトレーニング方法を提唱。先月15日に出版された同シリーズ第3弾『ゼロ秒思考 行動編』(ダイヤモンド社)では、さらに一歩踏み込んで、即断即決、即実行するためのノウハウについて解説している。
頭の中をクリアにしてスピードある決断をし、さらにそれを実行するにはどうすればよいのか。その解決法を紹介する。
赤羽雄二
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士を取得。1986年、マッキンゼーに入社。14年間、日本企業、韓国企業の経営改革、新事業創造にパートナーとして取り組む。世界二十数カ国からコンサルタントを動員。2000年以降、日本発の世界的ベンチャーを1社でも多く生み出すべく、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。最近は、大企業の経営改革、経営人材育成、新事業創出、オープンイノベーションにも積極的に取り組んでいる。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考 行動編 即断即決、即実行のトレーニング』(以上ダイヤモンド社)、『世界基準の上司』(KADOKAWA)、『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』(宝島社)、『頭が真っ白になりそうな時、さらりと切り返す話し方』(KKベストセラーズ)、『世界一シンプルなこころの整理法』(朝日新聞出版)、『7日で作る事業計画書』(明日香出版社)等多数。
1.「ゼロ秒思考」とは何か
思考の「質」と「スピード」、双方の到達点が「ゼロ秒思考」だ。ゼロ秒とは、瞬時に現状の認識をし、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意思決定できることだと考えている。究極の姿として、迷っている時間はゼロ、思い悩んでいる時間はゼロとなる。
モヤモヤとした気持ちをその場で言葉にし、考えを深められるようになると、考えが前に進むだけではなく、どんどん加速していく。課題が整理され、問題点の本質が見え、本質的な解決策とそのオプションが浮かび、オプションのメリット、デメリットが即座に浮かび、問題の本質と全体像を押さえた確実な対策が打てるようになる。
一見すると不可能とも思えるが、A4メモを多数書いて言語化能力を鍛え、問題把握・解決力も強化していくと、その領域に近づいていく。話し言葉の場合、口下手な人でも1分間に数百字は話すことができるが、書き言葉は慣れないとせいぜい40~60字程度。 「スピード」で見ると圧倒的に話し言葉が優るが、「質」で考えると、話し言葉は空回りしたり、堂々巡りしたりすることが多く、書き言葉のほうが頭が整理される。なので、話すのに近いスピードで書けるよう努力していくことで、思考もだんだん整理され、深まりやすくなっていく。
2.「ゼロ秒思考」を鍛える最短、最良の方法――「メモ書き」
そのゼロ秒思考を身につける最短、最良の方法が「A4メモ書き」である。「A4メモ書き」は、こわばった頭をほぐす柔軟体操であり、頭を鍛える手軽な方法だ。そのメモ書きの方法は下記の通り。
毎日10分!『ゼロ秒思考』の「A4メモ書き」の方法
思いついたこと、気になること、疑問点、次にやるべきこと、自分の成長課題など、頭に浮かんだことはすべてメモに書きとめる メモはすべてA4コピーの裏紙に 必ず1件1葉、横書きで、左上にタイトル、右上に日付を書く 毎日10ページ、頭に浮かんだことをすべて書く
・真剣に考えていれば、毎日10ページ程度にはなる
・1枚1分ですばやく書く。毎日10分程度 夜まとめてではなく、思いついたその瞬間に書き留める
モヤモヤしていることや腹の立ったこと、やりたいことなど、何かの考えが頭に浮かぶたびに1分間で書き出していく。ここで意識すべきはスピード。考えずに、止めることなくどんどん頭に浮かんだものを文字で吐き出していく。そうすることで、内に隠れていた本当の気持ちや考えも出てくるようになる。
A4の裏紙を使うほうが気軽に書けるとのこと。費用もかからない。もし適当な裏紙がなければ500枚入りのコピー用紙を買えば、300円前後で相当もつ。 メモは思い立ったときに書く。1ページ1分なら、一日わずか10分程度でできる。A4だとかさばるという人は、特に通勤時などであれば、A4紙を3つ折りにして持っておくと混んでいる電車の中でも書くことができる。
これを3週間も続けると、確実に自分の理解力、コミュニケーション力の変化を自覚できるようになる。人が言っていることを瞬時に理解できるようになったり、今まで通りにくかった自分の提案が通りやすくなったり、リーダーシップが発揮しやすくなったりする。想像力や判断力も向上する。
会議でも、参加者全員で数ページのメモを書いてから話し合うようにすると、頭の中が整理され、効果的なディスカッションができるようになる。
また、やや変則的ではあるが、家族、恋人、友人の悩みを聞いてA4メモに書いてあげると悩みの整理や軽減にも貢献でき、ありがたがられる。
3.即断即決、即実行のメリット
こうした「メモ書き」を続け頭が整理されるようになると、だんだん即断即決、即実行が可能になっていく。即断即決、即実行という言葉の意味は誰でもわかることだが、そのメリットは必ずしも正しく認識されていない。
即断即決、即実行するメリット
先手を打てる PDCAをより多く回せるので、成功しやすい 生産性が上がる。すべての仕事が速くなる それだけでリーダーへの信頼度が上がる 部下もつられて素早く動くようになる 組織全体が打てば響くようになり、活気づく
このように即断即決、即実行のメリットはかなりあるが、正しく認識されていないのは、即断即決、即実行が容易ではない上、実際に即断即決、即実行ができる人にしかその効果が想像しづらいからだろう。
即断即決、即実行で仕事を速くすると、質が落ちるのではないかと心配する人が多いが、仕事が速ければPDCAをより多く回すことができ、仕込みができるため、「質」はむしろ向上する。好循環も起きやすいので、仕事の成果がさらに大きくなったり、やる気が高まったりする効果もある。
逆になかなか物事を決められず、責任逃れしやすい人や意思決定が遅い人は、リーダーとして疑問視される。優柔不断だと部下の信頼を得られないし、ビジネスチャンスを逃しやすい。こういう人は「慎重」ともいえるが、今の時代、慎重すぎて機会を失うことのほうが多いので、実はリスクが大きい。PDCAを回せずに失敗し、生産性が落ち、競合にも先手を打たれ、ひいては自分や組織への信頼を失う結果となってしまう。
4.即断即決、即実行を阻む「心理的ブロック」とその解決法
即断即決、即実行のよさを頭では理解していても、即行動に移せない人が多くいる。「しがらみにとらわれ、従来のやり方に固執し、価値の低い仕事に追われてしまいがちだからだ」と赤羽氏は指摘する。その背景には即断即決、即実行への「心理的ブロック」がある。
心理的ブロック
情報を集めきらないと不安、こわい 選択肢を出し切らないと不安、こわい 即断即決を具体的にどう進めればいいのかわからない 即断即決をする、ということ自体、慣れない、不安、こわい
こうした「わかっていても動けない」心理的ブロックを克服し、即断即決、即実行に近づく1つのヒントが「全体観」。即断即決、即実行できない根本的な理由は、対象への正しい全体観を持てていないことだと赤羽氏は言う。全体観がなければ、どこにリスクが潜むのかわからないので、動くに動けないということだ。
逆に「全体観」さえ持てれば、あとは必要なときに、自然と即断即決、即実行できるようになる。
「全体観」を持つとは、自分が取り組む仕事や課題のすべての道筋やプロセスが見えており、どこが重要なポイントかを理解していること。どのような問題が起きそうで、それがどのくらい深刻かもしっかりと認識している状態。逆に「わかっていても動けない」という状態のときはやるべきことをやらないと、どのようなことが起こるのか、本当に意味ではわかっていなかったり、やらないことのリスクを過少に見積もっていたりするケースが多いともいえる。
5.全体観を持つために効果的なツール:「オプション」と「フレームワーク」
こうした全体観を育み、即断即決、即実行できるようになるために効果的なツールが「オプション」と「フレームワーク」である。
オプションについて
「オプション」とは「選択」や「選択肢」を意味し、取りうる施策を複数挙げ、比較し、評価する思考法。主要な選択肢を挙げ、すばやく評価するスキルがあれば、見落としなく複数の施策を評価し、最善の手を選ぶことができる。
やり方として、A4用紙で下図のフォーマットを用意しておき、迷うときには記入し、整理してみる。選択肢は、「その課題に関して取りうる施策」のことで、例えば転職・転身であれば、1.現職でもっと頑張ってみる、2.この際、自分が本当にやりたかった仕事を探す、3.自分のこれまでの仕事の延長線上で探す、4.友人と起業する、⑤個人事業主になる、などが選択肢となる。
選択肢を立案した後は、選択肢から選ぶための評価項目を決める。たとえば目的が転職であり、「どこに転職して何をすべきか?」への答えを出したいときは、「強みが活きる、活躍できる」、「がんばれば報いられる組織・体制」、「上司になる人がよい、尊敬できる」、「経営が安定している」などの評価項目をフォーマットの上の箱に記入する。評価項目は「選択肢を評価する上での大事な4~5項目」と覚えておけばよい。 各選択肢それぞれ、評価項目ごとに「◎◯△×」の印をつけ、最後に総合評価をする。総合評価は、◎が4点、◯が2点、△を1点、×を0点として計算するとわかりやすい。点数を一つの目安として、◎○が多いか、△×がないかで総合評価していく。
単純なようでいて、選択肢をきちんとリストアップし、評価項目をリストアップし、それぞれ評価し、総合評価しているので、選択肢への評価が明確となる。迷いが解消され、スピーディーに行動へと移すことができる。
フレームワークについて
「フレームワーク」とは、物事を整理する枠組みのことで、一番簡単で手軽なものは2×2の枠組になる。この枠組みの鍵は、「独立した横軸と縦軸があること」だ。2軸をまず考え、書いてみて、独立した2軸になっているのか、有用性が高いかを確認する。慣れるまでは同じタイトルで、縦軸・横軸を2〜3違うパターンで書いてみると、どういう軸が有用か、理解が深まる。
たとえば、溜まってしまった仕事の優先順位をつける際、やみくもにリストアップするよりは、まずはフレームワークで整理してみる。整理すると、全体像が見えるので、あせって悪循環に陥り仕事の後始末が大変になったりすることがなくなり、落ち着いて最適な順序と時間配分で取り組むことができるようになる。
6.【事例】転職・就職について考えるワークショップに活用してみる
こうした「ゼロ秒思考」は、転職・就職を検討する際にももちろん有効だ。「転職したい」とぼんやり思ったときに、まず整理すべきは、自分の心の内にある「不満」である。「転職は、現状に不満がなければあまり考えないし、しないもの」と赤羽氏は指摘する。転職を考えるのは、上司とウマが合わない、残業が長い、給料が安い、仕事がつまらないなど、何かしらにストレスを感じている状態であるためだ。
それをすべて一度、文字で吐き出してみると、モヤモヤが整理できる。やや感情的になっていた部分も落ち着いて、改めてよく見えてくる。
「現状で変えられることもたくさんある」と気づくケースも少なくない。今の職場でベストを尽くして、成功体験を持ってから転職したほうがよいと気づく場合もある。「A4メモ書き」を活用して頭の整理をすることは、転職・就職を考える際に有効である。
また、赤羽氏が各地で行っている即断即決、即実行ワークショップでは、A4メモの進化形として、「アイデアメモ」を使って非常にダイナミックなセッションを行っている。 例えば、2月3日にダイヤモンド社セミナールームで行われた『ゼロ秒思考[行動編]』刊行記念ワークショップでは、下記のワークシートが配布され、参加者全員で取り組んだ。
アイデアメモの応用範囲は非常に広い。例えば、上司との間に問題を抱えている場合、「上司とうまくコミュニケーションできなかった時はどうだったのか」「上司とうまくコミュニケーションできた時はどうだったのか」「今後、上司と常にうまくコミュニケーションするにはどうすべきか」という3ページをそれぞれ3分で書き、隣の人と2分で説明しあう。
これまで多くの企業でマネジメント層の研修を行ってきた同氏によると、「アイデアメモを3分で書き、お互い2分で説明しあい、それを3セット繰り返すやり方は非常に短時間に非常に多くの発見をしていただくことができる」という。
もちろん、3分は短く、アイデアメモ1ページを埋められない人がほとんど。しかし、人に説明する際には、紙には書いてなくても頭の中に浮かんでいる内容が自然に説明できる。
「特に転職に関しては秘密が大事なので、なかなか周囲に話せず、一人で悶々とする人が多い。相談してもあまり新しい発見につながらなかったり、不適切な助言もある。このワークショップではお互い名前を名乗らず、自分の経験や思いを説明したり、人の悩みや人の説明を聞くことで、自分だけでは気づかなかった新たな視点に気づくことができます」と赤羽氏。
7.まとめ
毎日10分、A4一枚の「メモ書き」を続けることで、頭や心の中のモヤモヤがなくなり、考えが整理されるうえに深めることができ、仕事のスピードアップが可能となる。また、メモ書きをしてから、意見を交換し合うことで、出てくるアイデアの質も量もアップするため、会議の時短と効率化を実現し、プライベートにおいても家族や友人、恋人とのコミュニケーションの潤滑化もはかることができる。
全体観を持ち、即断即決、即実行できるようになれば、見えてくる景色が違ってくる。自分が実現したいことが複数の追い風を受け、より簡単、確実に実行できるようになり、大きな好循環を生み出し続けることができるのだ。
取材・文・撮影 山葵夕子
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