「マスコミ化し、空気を読むことを強いるネット」 東浩紀氏ら著名人のツイッター苦労話
「鍵つきアカウントは良いですよ」――2011年7月30日にニコニコ生放送で中継されたBSジャパン『勝間和代#デキビジ』の収録。休憩時間に入ると、作家の東浩紀氏はITジャーナリストの佐々木俊尚氏にこう話しかけた。
東氏は積極的にツイッターを活用している文化人の1人だが、それ故に数多くの批判が寄せられて「炎上」するという悩みもあった。そこで、現在はツイートの公開を一部に限定できる「鍵つき」に設定を変更している。
鍵をかけることのメリットを、東氏は「公式RTができないこと」と説明する。
「基本的には公式RTが諸悪の根源だと気がつきました。知らない人がアレだけを単独で見るので、すごく挑発的に見えるんですよ。非公式RTだと、自分の知っている人がRTしているので、そこまで強く言えないわけです」
東氏は大抵、ある事柄を語るのに複数のツイートをしていた。しかし、その内の1つだけを抜き取った公式RTが頻発したために、文脈を理解しないままの脊髄反射的な批判が数多く寄せられたという。
「文脈を無視した抜き出し」は、長らくマスコミ批判の定番だった。しかし、東氏はツイッター版まとめサイト「トゥギャッター(Togetter)」の例も交えて、
「トゥギャッターって出てきたときはすごく便利だと思ったんですが、使われ方を見ていると『ミニマスコミ』みたいになっている。使っている人たちは若い人たちでしょうから、新聞を真似ているわけじゃないんですよ。生理的に組み込まれているんですね」
と、ネットでも本人の意図にそぐわない恣意的な編集が行われていることを指摘。以前は、老人から若者に世代交代すれば日本が良くなるという期待もあったが、それは幻想で、どちらもほとんど同じだと思うようになったと言う。
■「空気を読む=マスコミ化」
「ネットメディアが普及すればするに従って、マスメディアが構造的に抱えていたような、例えば権威主義的な部分であるとか、批判だけしていれば何とかなるだろうという空気感が流れ込んできている」
と語るのは佐々木氏。
相手が社長であろうが、総理大臣であろうが、対等な立場から、時には他の権威の発言を借りて批判する。それは必ずしも悪いことではない。しかし、批判をすると注目が集まるため、批判する側も、それを見ている側もついエスカレートしてしまいがちだ。
ジャーナリストの田原総一朗氏は、「僕もツイッターをやっているんですが、批判をされると、批判されない方がいいなと思ったりする」と冗談めかして言う。大量に批判が来ると、なかなかスルーできるものではなく、人によっては空気を読んで行動を制限してしまうことだってありうる。
東氏は、こうした現状について「オープンにすべての人たちに対して話しかけるということをやっていると、この国では空気を読むことしかできない。インターネットは急速にマスコミ化してしまう」と語る。そして同時に、
「日本はもともと空気を読む国だったんだけど、空気がすごく見えるようになった。例えば、クールジャパンというコンテンツはつまらなくなってきていると言われる。それはなんでかと言うと、昔のクリエーターも確かに視聴率は気にしていたが、せいぜい視聴率。今は1話からネットの反応をチェックして作品に反映させる。視聴者の意見を無視することができない」
とアニメを例に、ネットによって空気が可視化され、圧力を増していることも指摘した。
(野吟りん)
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