原発が15基 関西各府県に電力供給する福井県の知事に聞く 全文(前編)

西川一誠福井県知事(左)と角谷浩一氏(右)

 高速増殖炉「もんじゅ」など、全部で15基の原子力発電所を抱える福井県。その首長である西川一誠知事が2011年8月1日、ニコニコ生放送に出演した。首都圏が福島県の原子力発電所から電力を供給されていたのと同様、関西の各府県は福井の原発から電力を供給されているが、西川知事は「(福島第1原発の)事故で不安をお持ちなのはわかるけれども、これまで40年間、あまりにもそれをお感じになっていなかったかもしれません」と、各府県には福井の原発から電力供給されているという意識が希薄であったことを指摘した。

 以下、番組での西川知事とインタビュアーを務めた政治ジャーナリストの角谷浩一氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する。

■日本の恐竜王国、福井

インタビュアーを務めた政治ジャーナリストの角谷浩一氏

角谷浩一氏(以下、角谷): ニコニコ動画をご覧の皆様、こんばんは。コネクターの角谷浩一です。いつもは東京のスタジオからお送りするこの「ニコニコ生放送」ですけれども、今日は東京を飛び出して、福井県福井市にやってまいりました。「ニコニコ生放送」の政治番組としては、昨年の名古屋に続いての出張番組ということになります。それ以来の「特別報道番組」ということになるわけですけれども、なぜ福井県なのかと言いますと、今原発の再稼動問題が大きな焦点になっています。東京で言われているニュースは本当なのか? 東京での理屈というのは、実は原発を抱える県はどういう風に見ているのか? 東京の説明は本当に正しいのかどうか? 東京にいてはわからないのではないか? という風な思いから、今日は福井県にやってまいりました。

 今日は福井市内のホテルに、臨時のニコ生(ニコニコ生放送)のスタジオを設営しまして、そこに福井県の西川一誠知事をお招きして、まあ私共が福井にお邪魔したのでお招きしてというのも変ですけれども、福井県知事に来ていただいて、ここでじっくり「現場の声」また「原発を抱える県の自治体の考え方」また「思い」、それから「今後の防災対策」様々な問題について今日は多角的にお話をうかがっていこうと思っています。今後原発とどうやって向き合っていくのか、自治体にとっても、それから原発を抱える地域の皆さんにとっても大きなテーマになります。単純に止めればいいということで解決するものなのか、それともこれに安全基準というのはどうやって作られるべきなのか、様々な意見や考え方があるのだと思います。これをどういう風に僕たちが見ていけばいいのか、それを今日はじっくりお話をしていきたいという風に思っています。

 また、それだけではなくて福井県が今抱えている課題。それに政治行政は、どのように対処しようとしているのかというものなどもうかがいたいと思っています。では早速、今日のゲストをご紹介します。福井県の西川一誠氏です。こんばんは。よろしくお願いします。

西川一誠福井県知事(以下、西川): こんばんは。よろしくお願いします。

角谷: 福井は僕、二度目なのですけれども・・・。

西川: そうですか。ようこそ。

角谷: 今日うかがいまして福井県のイメージ。僕はずっと小さい頃から眼鏡をかけているものですから、眼鏡のフレームといったら福井県という思いがあります。それから、日本海側の海の幸には大変豊富なものもあるという風な印象ですけれども、福井県の事をいろいろうかがいながら、その福井県が「今抱えている問題」、それから「原発の再稼動問題」、「安全基準の問題」こんな話を今日はうかがっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

西川: よろしくお願いします。

角谷: また、番組では皆さんからメールを募集したいと思います。もちろん、いま福井県民として観ているという方、それから福井ではないけれども、原発を抱える地域から同じ問題を抱えているはずだから観ているという方も多いと思います。また、東京から福井はどういうことを考えているのかということで、いろいろご質問があると思います。今日のテーマは「西川知事にあなたが聞きたいこと」ということでメールを募集しようと思っています。それぞれの皆さんの立場から、まとめて最後のほうで知事に質問をぶつけていきたいと思っておりますので、そちらもどうぞお願いします。番組の下にある専用フォームから送ることができます。「PCから投稿する」をクリックすると送ることができますので、是非どんどん質問を送っていただければと思っています。

 ではさっそく、西川知事にお話をうかがっていこうと思います。さて、福井県ですけれども、今ここに恐竜の・・・さて、これはどういうものなのでしょうか。

西川: これは、福井県の勝山という奥越地域になりますが、そこの地域で8割方、日本一恐竜の骨格がとれます。

角谷: かなり。

西川: とれます。

角谷: なるほど、はっきりしているんですね。

西川: そうです。全国でいろんなところで、恐竜の牙とかどこどこの部分を発見したというニュース、新聞には大きく取り上げられますけれども、いろんな基本的な研究をし、そして8割方発掘をし、そして「世界三大恐竜博物館」。これはカナダと中国そして日本なのですけど。

角谷: はあ、そうなんだ、はい。

西川: そういうことなのです。それで、(福井県に県立恐竜)博物館が出来て去年で10年になりまして、今ちょうど夏休みですから特別展をやっております。来館者が昨年で50万人を超えましたから、地方の自然系といいますか博物館で、50万人を超える博物館というのは非常に少ないというか希有だと思います。

角谷: そうですね。そういう意味では恐竜の・・・。

西川: 恐竜王国。

角谷: 王国なるほど。それも福井の一つの特徴ですね。

西川: そうですね。

角谷: 福井の魅力というのはどういうものが挙げられますか。

西川: そうですね。あとは意外と東京を例にとりますと、ちょっと遠いような感じがいたしますが。

角谷: 距離というか行き方がということですかね。

西川: そうですね。小松空港、あるいは新幹線米原経由でいらっしゃいますと・・・。

角谷: はい、僕は今日は米原経由で。

西川: (米原経由で)いらっしゃいますと、意外と近いという印象を受けると思います。(他にも福井県は)食べ物が非常においしいところです。

角谷: 「焼き鯖」というのが頭に浮かびますけど。

西川: リクルートのいろんな観光ブランドの調査でも、いつも上位に挙がっております。あとは永平寺とか東尋坊、伝統的な観光地もありますし非常に面白いところだと私は思っております。

■福井は「日本で最も早く原発の立地をした県」

「学力・体力ともに日本一」と語る西川一誠福井県知事

角谷: なるほど。福井県民というと、僕らはもう一つデータで見ますと、学力・体力というのは大変昔からトップクラスに出てきますよね。

西川: 学力・体力は、最近の文科省の全国調査でも両方とも日本一の県です。これはご家庭でお子さんを大事にして育てることもあります。学校の先生方が熱心に教育をしておられる。私が知事になりましてから、我々も小人数学級、30人学級、そういうことを早くから勧めてまいりました。

角谷: 逆に言うと、少人数のほうがやはり一人一人の生徒に行き渡るということですか。

西川: そう。直接向かって1対1、あるいはきめ細やかな教育ができると思います。

角谷: 「ゆとり世代」というのがあって、24歳くらいまでの方を今指すらしいんですけど。逆に言うと「少人数の授業のゆとり」というのが、もしかしたら学力向上なのですか。

西川: ですから小中学校は、まあまあそういう水準が高いですから、これから高等学校の教育、それからゼロ歳から6歳までの幼児教育。全体で18年教育を連続してさらに内容を高めたいというのが私の願いなのです。

角谷: なるほど。

西川: 子ども達の将来は、我々の希望でもありまして、日本をリードしてまいりたいと思います。

角谷: 学力だけではなくて体力もということになりますと、それはまさに、理想的な教育環境があるということだと思います。

西川: 小さい県の割には、プロ野球の選手もたくさん出ていて。

角谷: そうですね。また高校野球も始まりますけれども、そういう意味では県としての魅力というのは様々にある。それから地域や環境、歴史もあると。ただもう一つ今福井県が抱えている問題に、原子力発電所という問題があると。知事としてはまず、原発という問題、県が抱えている原発の問題、全体的にはどういう認識でご覧になっていますか。

西川: これは、全国にほとんど、3分の1の県が原子力(発電所)の立地に関わっていると思いますけれども、福井県は最も早く、あるいは古いと言いましょうか、原発の立地をした県でありますから歴史は古いです。そういう意味で福井県のいろいろなこれまでの経緯とか考え方というのが全国のそういう原発の行政といいますか、こういうものに影響もし、また貢献もしてきたと思います。

 それで、我々としてはまず「安全」というのを40年間ずっと基本にして、それと同時に、原子力発電所の立地地域が他の地域より遅れをとるような地域になってはいけませんから、そういう意味でのバックアップ。そういうもの全体を見ながら地元の皆さんといいますか住民、そしてこの原子力は国のエネルギー政策ですから、国民的な合意をその中でとっていくと、3つの原則をバランスをもって進めてきた。一番は「安全」だという、そういう方法で進めてまいったということなんです。

角谷: もちろん福島の震災の直後に起こった福島第1原発の事故は、「安全」だと言われたものの説明や神話がいっぺんに崩れてしまった。ですから今まで「大丈夫」「心配ありません」「安全です」と言われたものも、本当にそうだろうか。それからこれは机の上での安全と実際に本当に安全が保たれるのかどうか。それに対しては、県民もそれから行政を預かる知事にとっても、「本当はどうなのか」ということが心配になりますね。

西川: そうですね。

角谷: これについてはどういう風にご覧になっていますか。

西川: 今回の東日本の大震災、そして大津波ということなのでありますが、これは未曾有の大きな自然災害が襲ったということですが、ただそれだけで問題を理解してはいけないと思います。我々は、(東日本大震災が発生した)3月11日以降、今回の原子力の問題についていいますと、直後から政府・国に対して、地震でこの問題が生じたのか、あるいは津波による原因なのか(尋ねてきた)。これは未だもってあまりはっきりいたしませんから。

角谷: 少なくとも政府がIAEAに出した報告書には、そこら辺がはっきりしていないのです。

西川: そこは、今回福島が大きな犠牲を払っているわけですから、その現実をはっきり捉えて、そこから教訓をつかみ出さないと、その災害の日本としての対策の意味がないと思いますし、全世界がそれを注目もしていると思うのですよね。酷い言い方をしますと。

角谷: 多分これは、皆さんのいろいろな物の考え方があると思いますけど、原子力という技術がコントロールできる技術であるということは頭の中では大体わかってきていると。原子力というのはまったく何が起こるかわからない技術ではないことは、大体わかっているわけです。ただ、当然日本は地震もあるし、それに伴って津波もあると。それ以外にも様々な要因で起こりうる事故の可能性というのがあると。その中で「安全です」というふうに言われて「ああ、そうですか」というだけでは、もう済まない時代になっている。

西川: そうですね。

■関西全域で使用する電力の5割以上を供給

知事「様々な安全のための努力というのはやっている」

角谷: それから、原発ができてから廃炉にするには大体30年くらいが目処だと言われているけれども、40年という、最初に稼動した原発もまだ動いているとするならば、そろそろ老朽化という問題も・・・そろそろではない、かなり現実的に出てきている。

西川: そうですね。

角谷: これは、「安全」とかなり遊離する議論ですね。ここら辺はどんな風にご覧になりますか。

西川: 今回そういうことで地震、津波の影響をどう考えるか。それから特に(静岡県の)浜岡(原子力)発電所を停止されましたけれども、それと他の原発立地地域との違い。こういうものもはっきりする必要があるだろうと。特に福井県の場合はそれが言えると思いますが、高経年化、いま仰った30年、40年が経過したこのプラントにどんな影響があったか。これは設計をする思想とか、あるいはいろんな設備・装備が問題だったかもしれない。

 こういうものを明瞭に基準としてすべきだということも(政府に対し)二つ目に申しているのですけれども、まだその方向が出ておりません。相当早くお答えをいただきたいというのが、我々の考えなのです。

角谷: いま福井県には、(研究用の)「もんじゅ」も含めてになりますけれども何基の原発がありますか。

西川: 15基ありまして、「もんじゅ」そして「ふげん」は今廃炉になっていますので、廃炉の研究。あと13基がいわゆる商業炉、ふつう他の県にあるものです。

角谷: 稼動しているもの。

西川: 稼動ということになりますね。

角谷: そこの電力は、もちろん県内のみならず他にはどの地域に。

西川: そうですね。福井県の原発のほとんどは関西地域。これは関西のすべての府県の2200万の方のお使いになる、あるいは企業がお使いになる電気の、ふつうの状態でありますと5割から55%くらいをずっと供給しているんです。

角谷: となりますと、福島でいう首都圏と同じようにいま福井県の電力は関西の原動力になっているということなんですね。

西川: そうなんです。今回そういう事故がありましたから、初めて関西の皆さんが福井から供給を受けているという関心と、事故で危ないのではないかという不安をお持ちなのはわかるけれども、これまで40年間あまりにもそれをお感じになっていなかったかもしれませんね。我々はそれをよく知ってほしいと。

角谷: すごく難しいところは、地域の協力がないとできないということ。でも、その協力は何かひとたび起これば今度は不安に変わってしまうと。そういう意味では協力から対峙する関係になってしまうと。そういう意味では、関西でも福井からきていたということがわかったばかりだというところでは、その間、福井の皆さんは最初は多分不安もあった、安全だと言われた。もしかしたらこれはわかりませんけども、日本中で原発導入の際には、どうも「やらせ」のシンポジウムが行なわれたりというのがあったと。例えば新潟では柏崎(刈羽原子力発電所)で(プルサーマル実施の可否を問う)住民投票があって、日本の住民投票を導入するようなものになったこともありました。

 ですから地域の住民の人達がいろいろ、「本当にこれは安全か。安全というのは誰が決めるのかと。不安が少しでも残るようなら、やはりこれは安全とはいえないのではないか。いや技術的に安全だ。現実的にどうなんですか」。たぶんこのせめぎ合いがたくさんあったと思います。今でもその不安は、新たな地震でそう感じた人も多いのではないですかね。

西川: そうですね。原発立地地域の不安というのでしょうか、それから様々な安全のための努力というのは、我々政治をやっていますと。いろんな議会の議論で大体3割くらいその議論をしているわけです。立地地域以外はそんな議論はまったくといっていいほどないと思いますし。

角谷: 電気をどうやっていただいているかなんて議論はないわけですからね。

西川: そして発展はしているわけです。一方、今回のような事故があったと。これは福井県で起こった事故ではないけれども、それ以前でも福井県でもいろいろなことがありました。そうなりますと、政治や行政の半分以上、ほとんどはそんな議論をしながら安全の確保をしながら今日に至ったということですから。その辺は是非わかっていただきたいということが一つありますし、また私が知事になりましてから、単に原発を供給してそれで事足りるということではないと。工場みたいなことではないと。本当に地域もそのために消費者の皆さんに期待できるような発展をしなければならないということで、そういう計画を知事になりましてから作りまして、それを今進めていた最中なんです。

■整備新幹線の導入は「関係ない」

「新幹線は駆け引きの材料では?」という質問に答える西川知事(写真左)

角谷: これはちょっと不躾な質問になりますけど、やはり電力会社は「ここに立地したい」と、「ここがとても立地に適している場所だ」と、こうなると「ここに建てたいだ」といろんな調査があったり、もちろん地層や活断層の問題もあったり、それから環境の問題があったりいろんな調査もするでしょう。同時に地域の同意が得られる。それから地域の自治体、それから最終的には県も含めた「ここに建てたいです」という相談がある。

 そこでは今までの過去の経緯や昨今の報道によるとやはりそこではものすごいお金が動いたり、それから「その代わりにこういうことをやります」「ああいうことをやります」と国だとか電力会社からいろいろな便宜供与のようなものがあったり、地域のインフラ整備に協力をするということで、「どうか一つ」という風なことで。やはり本当は本意ではないけれどもいろいろな事情で受け入れざるを得ないという風な、押し切られる形になってしまったことというのはあるのでしょうか。

西川: 私はそういう場合はないですけれども、やはりどうなのでしょう。要するに、他の地域で原子力発電所なりそういうものを受け入れていただいていれば、そんなにある特定の地域に負荷はかからないのだと思いますが、残念なことにこれまでそういう状態になっていたわけです。かつ、いろいろな交付金とかそういうものがありますけれども、それは完全にオープンにしながらそういうものを公明に使うということを・・・。

角谷: つまりバーターのように見えるけれども、それはきちんとオープンにしているから、何か裏金で「これを出すから立地しましょう」ということになっているものではない?

西川: そういうことであってはいけないし、かつ、そういうものが地域の今回のこういう様なリスクを抱えながらの原発・・・30年、40年やっておりますから、それに十分見合い過ぎたものであるかというと、決してそうではないということは理解をしていただくことが必要でしょうね。

角谷: 周辺のインフラの整備や交付金などでの色が付くことはあっても、だからリスクを背負っているという意味ではリスクのほうが大きいのは事実であるというふうに思う、と。

西川: と思います。

角谷: 穿った見方をしますと、東京ではやはり福井県は整備新幹線の導入があって、整備新幹線の導入と(「もんじゅ」)再稼動問題は一つの県としての中央(政府)に対しての駆け引きの材料だという見方をする人もいますけどそれはどうでしょう。

西川: 関係ないと思います。むしろそういう考え方ではなくて、今回の東日本の地震の教訓は、これは福島と東京なとの関係もあると思いますが、東京中心の国土づくりがいかに危ういというか、問題であったかというのが、根底に一つあるでしょう。今回は三陸沖の地震でしたけれども、東海、東南海、南海沖の地震、これはまたもっと厳しい局面になります。起こる確率が非常に高いわですから。

角谷: ましてその、起こる可能性のデータがすごく高いということになりますから。

西川: そうなりますと、太平洋側だけの新幹線やリニア(モーターカー)、そういうものは到底、国土構造としては歪んでいるわけですから。日本海側のちゃんとした複数の、国土の実見は遅れているわけです。そういうものはむしろ大事だということになると思います。

角谷: なるほど。

西川: 個別の話ではなくて。

■菅首相の言うストレスチェックは「ちょっと方向が違う」

角谷: そういう意味では、地方自身が抱えている問題と全体的なインフラと大動脈の考え方。それと原子力発電、いずれも電気というものがなければ物が動かない世界の中で、原子力発電所といわゆる鉄道網というのは切っても切れない仲ということになる様な気がするのですけど。

西川: そうですね、もちろんインフラも大事ですし、さっき計画のお話をしましたが、単に地域の公民館が良くなるとか体育館が立派だとか、そういうことではなくて。本当に産業がそこに立地して、そういう技術と連携しながら、地域が他の地域に比べて寂れているとか盛り上がっていないという、そういう状態が一番みんなが困るわけだし、日本としても良くないわけですから。それを何とかしてこれからさらに強化しようと、こういう状況の中だったのです。

角谷: 菅(直人)総理大臣や玄葉(光一郎)政調会長、国家戦略担当大臣はストレスチェックをして、そこでクリアされれば、これが安全の一つのポイントだと。それなら再稼働は良いのではないかということは、菅さんも容認しています。

 これに対して、ではそこが安全だということに本当になるのかどうか。それから逆に言うと、本当の安全というのは誰が決めるのかと。作っている人たちがチェックするというお手盛りが、今までの電力開発または電力会社、それから保安院が一緒になって「いいですよ」と。それから基準数を作る人たちも、ほとんど電力会社のOBだったり、通産省(通商産業省)のOBだったり、経産省(経済産業省)のOBだったりということになってくると、どうも「身内同士でOKを出し合っているようなものではないか」という批判は多分あると思うのですが。これは県としてはどんなふうな認識ですか。

西川: そうですね、ストレスチェックの問題は、いろいろな問題があるのですけど。我々は今回の福島の事故の原因を、あるいはいま分かっていることでもいいのだから、それをはっきりして点検中の(原子力発電所の)現場の再稼働に役立てるべきだと。もし途中から出て来た情報でも、半年なり1年ごとにこれを反映させて、場合によっては止めながら、それを反映してまた動かすということをするべきだと言っているのだけれども、ストレステストというのはそちらに向かわないで、ヨーロッパのEUの一種のシミュレーションを、福島の知見が多少は反映しているのかもしれませんが、それをまた逆輸入しているわけですから。方向がちょっと違うのですよね。

角谷: つまり、いま起こった福島の原発の問題をちゃんと直視して、ここの原因究明、それからなぜ起きたのか、津波なのか地震なのか、それとも古いからなのか。何が問題なのかの事故調査をやっている最中なのに、ヨーロッパのルールがありますからこれを持ってきた、これではあまり意味がないということですね。

西川: それは多くの中の一つかもしれないけれど、これだけでは、国民の皆さんの「点検中の現場を動かしてもいいな」という気持ちにはなれないと思いますが。そこをしっかりやってほしい。(決してストレステストが)意味がないわけではないと思います。そこが大事だと言っているのです。

角谷: つまり、地域には地域なりの独自のストレスチェックがあるような気がするのですが。

西川: 我々は、それはすでに提案しているわけですから。福島の原因はどうだ、これを当面分かることをまず反映させる。中期、長期にいつまでに何をすべきか、電源はどうするかとか、あるいは津波の調査は日本海はどうなっているか。それを2年間なら2年間でやってほしいということを(政府に)言っているのですが、それを早くお出しにならないと。

角谷: なぜ立地県の言うことを聞かないのですかね、国は。

西川: わからない。

角谷: 都合が悪いのですかね、やっぱり。

西川: いやいや、立ち向かってないのですよ、現実に。

角谷: そういう感じがしますね。

西川: しっかり立ち向かうのが、世界の期待だと思うし。かっこいいんですよ、スリーマイルとかチェルノブイリ(原発事故)ありましたが、みんなその国は、ロシアにしてもアメリカにしても、その問題を克服しているわけでしょう。科学の限界がいろいろあるかもしれないけれども、いかに今回、日本としてまずどこまで見極めて安全が確保出来るかと、これはやるべきであって。そこから絶対に目を背けてはいけないと思います。

「原発は”継続すべき”、”安全確保し再稼動”という意見が5割超」福井県知事に聞く 全文(後編)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw95076

(協力・書き起こし.com

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 西川一誠・福井県知事へのインタビューを視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56319468?po=news&ref=news

【関連記事】
“もんじゅ”抱える福井県の知事 エネルギー政策で電力会社に注文
安倍、小沢、石破・・・ニコ生に大物政治家が続々登場
上原春男氏、原子力安全・保安院の対応「情けなくて涙が出る」
『誰が小沢一郎を殺すのか?』著者と小沢氏本人が対談 全文書き起こし
池田信夫氏「アナログTVのほうが先に死んでしまった」 アナログ停波特番(1)

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 原発が15基 関西各府県に電力供給する福井県の知事に聞く 全文(前編)
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。