意外と知らない電気料金の“なかみ”――「原発建設費用もちゃんと入ってますよ」
震災後、節電への取り組みが始まり、にわかに電力やエネルギーに注目が集まっていますが、いまだに意外と知られていないのが電気料金のしくみ。私たちがふだん使っている電気の値段はどんな風に決められているのか、「電気料金」として支払っているその“中身”はいったい何なのかをわかりやすく説明してみます。
電気料金といえば、なんとなく「電力エネルギー」に対して支払っているというイメージがあるかもしれません。でも、実際のところ電気料金にはもっといろんなモノが含まれています。日本の電力料金は、電気事業法に基づいて「総括原価方式」で計算されています。
電力会社の電力料金収入(電気料金)=総括原価×報酬(原価×約3%)*
「総括原価」には、発電所や送電設備の建築費、保守管理費用、燃料費(原油やウラン、為替レート変動コスト)、発電所の運転費用、営業費用(電力会社の従業員給与、営業所経費)、核燃料の再処理費用などが含まれます。これらの「総括原価」に事業報酬率を掛けた「報酬」をプラスしたものが私たちの支払う「電気料金」。つまり、原発に賛成していようと反対していようと、私たちは等しく54基分の原子力関連施設の建設費用を支払ってきたと言えますね。
ややうがった言い方をすれば、「総括原価」が高額であればあるほど「報酬」分を儲けられることになりますから、電力会社は赤字の心配もなければコストダウンを考える必要もありません。むしろ、多くの発電所を建設してなるたけ高い電力を売る方が儲かることになります。これが私たちの支払っている電気料金の“正体”です。
日本の電気料金は、世界各国と比較して決して安価ではありません。どうしてこの国の法律は、こんなにも電力会社に“やさしい”料金体系を定めているのでしょうか? よく言われるのは、「戦後の経済復興のため電力事業を保護育成する必要があったため」という理由です。さすがに、戦後50年目(1995年)に部分的に自由化されたとはいえ、15年以上過ぎても状況はほとんど変わっていません。なぜなら、電力会社が「送電線」を独占しているので、誰かが電気を作っても「届ける」ことができないからです。一昔前の、NTTの電話回線独占状態と似たような状態です。
「でも、原子力は安定的に供給できる低コストなエネルギー。この仕組みから考えれば、高い電力を売った方が得なのに、どうして電力会社は率先して導入しようとしたの?」。当然、こういった疑問が浮かびますよね? ところが、国が試算する各エネルギーの発電コストには「穴」があるようで、立命館大学の大島堅一教授は、綿密な試算により「原子力の電気が最も高い」という結果を発表しています。もしこれが本当なら、原発推進のカラクリのひとつが見えてくるような気がしますね。
引用・参考資料URL
*事業報酬率は1980年代はでは8%、その後引き下げられ現在は3%前後。年々変動する。
*グラフは下記PDFより引用
電気料金の国際比較―経済産業省 資源エネルギー庁(PDF) [LINK]
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/shiryo/kokusaihikaku.pdf
電気事業法 [LINK]
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S39/S39HO170.html
一般電気事業供給約款料金算定規則 [LINK]
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11F03801000105.html
立命館大学国際関係学部 大島堅一教授「原発の本当のコスト―公表データから見えてくるもの」(PDF) [LINK]
http://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf
京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。
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