「ガラクタ集め」から「神!」へ 『大人の科学マガジン』編集部インタビュー

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『大人の科学マガジンwith KIDS』のふろく「音の万華鏡」

  学研教育出版が発行するふろく付きムック『大人の科学マガジンwith KIDS 音の万華鏡』の発売イベントが2011年7月26日に行われ、またその模様は同日19時からニコニコ生放送で中継される。『大人の科学マガジン』とは、組み立て式の科学キットがふろくに付いた雑誌だ。これまでに「探偵スパイセット」「テルミンmini」「35ミリ二眼レフカメラ」などの本格的なふろくでファンを魅了してきた。

 初の小・中学生向けとして2011年6月19日に発売された『大人の科学マガジンwith KIDS』のふろくは、音が見える実験装置「音の万華鏡」。来るニコニコ生放送に先駆け、『大人の科学マガジン』編集長の西村俊之さん、同編集部の古川英二さん、図鑑・百科編集室の吉野敏弘さんにお話を伺った。

 西村編集長はインターネットの発達によって”場所”が生まれ、科学的好奇心を持っていながら昔は「ガラクタばかり集めて・・・」と言われていた子どもたちが、今は「神!」と呼ばれていることに驚きと喜びを表し、「ニコニコ動画への投稿は大歓迎」と語ってくれた。

[ニコニコ生放送]大人の科学マガジン発売記念 音が見える?音の万華鏡イベント – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57317313?po=news&ref=news

■「うわっ、すげえ」を共有してほしい

『大人の科学マガジン』編集長の西村俊之さん

――今回の『大人の科学マガジンwith KIDS 音の万華鏡』は、初の小中学生向けですね。

西村: どの号でも、子どもと親が一緒にやってほしいという気持ちがあります。実際、”with KIDS”が付いていないものでも、読者はがきは10代から80代という年齢層の方から送られてきます。買っている層として多いのは40代なので、親が買って子どもと一緒に作っていることもあると思います。でも今回は、その主体を子どもに持っていって、子ども向けのふろくを作りたかったんです。

――子どもを主役にして、親と一緒にやってほしいと。

西村: 音の万華鏡の実験は、「うわっ、すげえ」と思って誰かに見せたくなると思うんですよ。一人でやるより、横から茶々を入れながらやると、圧倒的に楽しくなるんです。そういうことを家庭の中でもやってほしいと願っています。

■役に立たなくても、楽しんだことが溜まっていく

『大人の科学マガジン』編集部の古川英二さん(左)と図鑑・百科編集室の吉野敏弘さん

――この号のコンセプトを教えてください。

吉野: 子ども向けなので、今までの『大人の科学』とは少し違う、実験の色合いを強く出したものにしようと考えたんです。子どもがやるにあたって大事なのは、自分で工夫し、手を動かしてもらうこと。これは自分で工夫しながらできるふろく。「スイッチを入れておしまい」ではなく、物を変えたり、形を変えたりという物づくりの楽しみとか、実験を楽しんでもらおうと考えました。

――「音の万華鏡」の魅力とは何でしょうか。

吉野: 「見えないものが見える」ということですね。音という普通見えないものが見える。模様がすごく奇麗に、しかもいろいろ出てくる。やっていて出したくなるし、楽しいと思います。

古川: 雑誌の中で紹介している以外の模様もあります。高い音になれば模様が細かくて、低く周波数を下げていけば、模様の線が少なくて大きい模様になる。「変えていったらどんな模様になるんだろう?」と考えてほしいです。素材を変えたり、実験しようと思うと工夫ができるんです。

西村: 実はこれは全然実用的ではありません(笑)。これ自体を楽しむしかない。でも、理科の実験ってそういうのが多くて、楽しんだことが自分の中に溜まっていく――。そういう経験はなかなかできないと思うので、ぜひたくさんの人に触れてほしいです。すぐ役に立つか立たないかで判断しがちですが、何かの役には立たなくても、それを知っていて大人になるのと、知らずに大人になるのとでは、何かしら違う道が見えるはずです。

■ニコニコ動画への投稿は大歓迎

『大人の科学マガジン』編集長の西村俊之さん

――ニコニコ動画に『大人の科学マガジン』のふろくを使った動画がよく上がっています。ご覧になったことはありますか?

西村: もう、大歓迎です。とくに「ニコニコ技術部」に属するものは、すごい。「こんな使い方、できても普通はやらないでしょう」みたいなことを真面目にやっているんですよね。それを見て、「それができるんだったら自分も」と思ってくれる人がいる。最初に動画が上がり始めたのは、シンセ(アナログシンセサイザーSX-150)の動画ですね。シンセの時に、「ハレ晴レユカイ」の演奏が初っ端に上がっていて、それがめちゃめちゃ上手かったんです。「このシンセでそんな演奏ができるの?」ってくらい(笑)。ものすごくレベルの高いものが集まっていますよね。アマチュアとかプロとか関係なく、普通に『大人の科学』のふろくを楽しんでくれた動画が上がっていることは、僕らが伝えきれない”幅”を伝えてくれるんです。

 それから、ニコ動のポイントはコメントが付くところですね。そうすると、作る方も見る方も、何となくオチを求めるじゃないですか。ミニビースト(※テオ・ヤンセンのミニビースト。組み立てると風の力で動く)の動画でも、Youtubeに上がっているものは「完成しました。シャカシャカシャカシャカ(ミニビーストが歩く)」で終わるものが多いんですが、ニコニコ動画だと「シャカシャカ」の後に「改造します」と続くんですね。

 例えば、4ビットマイコン(4ビットマイコンGMC-4)で「けいおん!」の主題歌を演奏したという動画があります(【大人の科学】4ビットマイコンで Don’t say “lazy” 【けいおん!】)。最初はピコピコピコピコって音が始まるんですよ。でも、それをその人は16回オーバーダブ(多重録音)した。16個のパターンにして、動画ではいきなり音が16種類になる。最初は「なんだよこれ」「え?」みたいなコメントがつくけれど、音が増えたところでコメントが「神!」に変わる。それをやるのは結構大変なんですよね。でも見ている人には「これができるんだ」ということが分かる。「音の万華鏡」を使った動画も早くできないかなと思います。

■「ガラクタばかり集めて・・・」から「神!」へ

2011年7月30日発売の別冊に付くふろく「テオ・ヤンセンのミニ・リノセロス」

――西村編集長はニコ動にお詳しいですね。

西村: ニコ動に限らず、『大人の科学』を立ち上げた時からネットを見るようにしていて、『大人の科学』と名のつくブログはほとんど見ています。『大人の科学』をネットで広めてもらって、反対に、ネットで面白い物を見つけたら、編集部のツイッターなどで紹介することができる。「大人のオタク工作部」(面白い物づくりをしている大人を取材する『大人の科学マガジン』のコラム)の連載も、ニコニコ技術部に上がっているような、名もないすごい人たちを紹介しようということで始まったんです。

――インターネットとの相乗効果で広がっているんですね。

西村: そうですね。そういう工作を発表する場って、今までなかったんです。でも、昔だったら母親に「ガラクタばかり集めて・・・」と言われていた子どもが、「神!」と呼ばれる場が存在していて、日本中で広がっている。これってすごいことですよね。世界のことは分からないけれど、日本人はちまちま物を作ることが好きなんでしょうね。そういう素養を持っている人たちの背中をたたいてあげたいから、この雑誌を作っているという感じです。まだ実現はできてないんですけど、「あ、こんな作り方している人がいるから、これをふろくにしちゃおう」ということができたら面白いなと思っています。

――ニコニコ動画に投稿されたら、すかさず見るということですか?

西村: 『大人の科学』タグが付いていたら、もう必ずチェックします。

――どのような動画を期待しますか?

西村: それは・・・僕が言えないような動画ですよ(笑)。僕が想像できないような動画を期待します。

――今回の生放送はどのような人に見てもらいたいですか?

西村: イベントに来られなかった親子にも見てもらいたいですね。自由研究にもなるかも。

――最後に、ニコニコ動画のユーザーの方へメッセージをお願いします。

西村: 「音の万華鏡」はもちろんのこと、そのほか『大人の科学』を使った僕がビックリするような動画を、皆さんアップしてください! 待っています。

(了)

【ニコニコ動画】音の万華鏡(大人の科学マガジンふろく)

大人の科学マガジン発売記念 音が見える?音の万華鏡イベント

(伊川佐保子)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]大人の科学マガジン発売記念 音が見える?音の万華鏡イベント – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57317313?po=news&ref=news
・大人の科学.net – 公式サイト
http://otonanokagaku.net/

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