ついに「電力自由化」解禁!独占状態を脱した先に見える未来予想図

ついに「電力自由化」解禁!独占状態を脱した先に見える未来予想図

2016年4月に解禁される「電力自由化」

日本だけではないかもしれませんが、「一方的に勝ち続けるのは公平ではない」という考え方があります。これまで、電力業界は参入障壁が高く、東京電力や関西電力など、各地域の電力会社による独占状態が続いてきました。インフラ事業は人が少ない田舎にも設備を作る必要があるため、多額の費用がかかります。そのため、赤字分を黒字に転化できるよう、長らく独占に近い状態が続いていました。

同様にプロ野球の世界にも同一球団ばかりが勝ち続けるのは面白くないという理由で、ドラフト制度が存在します。ビジネスの世界でも独占状態が続けば、現状維持のまま前例主義に陥ります。すると、相対的にサービスの質が低下していきます。そのため、電気小売りの完全自由化によって業界を活性化しようと決まったのが、2016年4月に解禁される「電力自由化」です。

東燃などの石油元売り業界、大阪ガスなどのガス大手などが参入

既に参入企業として名乗り出ているのが、東燃ゼネラルグループをはじめとする石油元売り業界、東京ガスや大阪ガスといったガス大手、そしてドコモやソフトバンクなどの通信大手です。特に東燃ゼネラルグループが電気事業に乗り出すのは、ガソリンスタンドが危機に面しているからと予測されます。燃費の良い軽自動車に加え、ハイブリッド車の出現でクルマの燃費効率は格段に向上しました。一回の給油で200キロ走っていたところが400キロ走れるようになれば、単純計算でガソリンスタンドは半分の店舗で済んでしまいます。

ということは、同社の石油精製工場もガソリンスタンドの減少につれ、能力の余力が増えるということになります。工場には自家発電設備を持ちますが、生産量が減っているため全能力を出したくても出せなかったことでしょう。電力をいつでも供給できる体制にもかかわらず、今までは送電する設備を電力会社が独占していましたが、電力の自由化により障壁がなくなった格好です。電力と同様、太陽光発電システムに風力発電システムなど、発電システムも多様化しています。これも、チャンスがあれば参入余地があります。

当面は価格競争が展開されると予想される

参入企業として名を連ねる携帯会社などは、そうした意味で既に同じような状況を経験しています。携帯電話もサービスが開始された当初は、インフラを持つNTTドコモだけの独占状態でした。自由化されてからはツーカー、セルラー、テレコム、IDO、J-Phone、Vodafoneなど、各社が次々と携帯電話業界に参入してきました。これらの会社は吸収され、現在はドコモとau、SoftBankのほぼ三社に集約されています。電気事業社も同様です。虎視眈々と狙って儲かると思えば、次々に参入する企業は増えます。しかし、そのうち電気事業参入社が過剰になれば、耐えられない会社は吸収されてしまうのです。

電気の自由化は今後、電気業界が現在の携帯電話の契約と同じような状態になることを意味しています。手間のかかる手続きなどは不要、供給安定性にも変わりがないということは、さまざまなプランや価格面が争われる土俵となりそうです。現在、既に各社からさまざまなプランが登場するとの情報はありますが、やはり当面は価格競争が繰り広げられるでしょう。そこで、差別化の一手として各社からインターネットルータのように、室内電力マネージメント装置が登場すると予測します。

装置には人工知能が搭載されていて、居住者の好みを学習し、常に最適温度を最低限の電力(電気料金)で賄うようになるでしょう。ただ、携帯電話の契約で問題になったように、電力マネージメント装置に2年縛りなどのルールが設定されないことを願うばかりです。

(木村 尚義/経営コンサルタント)

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