人に合わせて組織を作る!社員の個性を活かすLIG流のマネジメント術

月間650万PV※を超える人気オウンドメディア「LIGブログ」を運営する株式会社LIG(リグ)。オウンドメディアが乱立し、コンテンツマーケティング最盛期とも言われる今、Web制作とコンテンツをワンストップで納品できる制作会社として注目度も高まっている。

LIGブログは、バズ狙いの面白コンテンツと、検索流入に強い通常コンテンツの2種類のコンテンツを配信しているが、この通常コンテンツのジャンルで根強い人気なのが、エンジニアなどの技術職によるハウツー記事だ。

確かな情報をコンスタントに発信し続けるLIGの技術力には、何か秘訣が隠されているのだろうか。CTOの林優一さんに話を聞いた。

(※2015年8月末時点)

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林優一さん/株式会社LIG CTO

大学卒業後、フロントエンド開発に主軸を置きつつ、独学でサーバサイドのプログラミング、アプリ開発、ディレクションなどを網羅的に経験。2014年にLIGに入社後、フロントエンドエンジニアチームのリーダーを経て、現職。趣味はJavaScript・テニス・写真。

個性を尊重する教育と採用方針

社員約80名のうち、エンジニアは20名程度。個性的な社員が多いイメージを受けるLIGの社員教育方針はどのようなものがあるのだろうか。

うちの会社は、ご存じのとおり個性が尖っている人が多いので(笑)、やっぱりその部分は活かしたいとは思っています。勉強会というかたちもあまりとっていなくて、時間や環境だけを用意してあげて、その枠組みのなかでエンジニアたちが好きなことを学ぶ、という仕組みを取っています。会社として『これをやってください』という形だと、全員にマッチさせるのが難しいですし、人は興味がある分野でないと伸びないと思うので、だったら興味があるところを勉強させたいと思っています。」

会社として求めていないことでもビジネスチャンスがあれば採用

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 一方、好きなことだけやっていてもビジネスでは通用しないことがある。個人の目指すキャリアと会社が求める要素にズレがある場合、LIGはどう舵を切るのだろうか。

その『やりたい』って言っていることの先に、自分のキャリアプランがしっかり描かれていれば、止めることはないです。たとえば会社として求めていない方向に進んでも、今度はそっちでビジネスが生まれるかもしれないので。

実際に弊社でも、9月1日から『ディベロッパーリレーションズ』というチームができました。エンジニアリング周りのコンサルティングを行う部署なのですが、この部署のリーダーは以前から個人的にその活動を進めていて、それを今回チームとしてオフィシャルに立ち上げたかたちになっています。」

通常の人事は、組織に合わせて人員を配置していくものだが、LIGの場合は人の得手不得手とモチベーションに合わせて組織を変えていく。これがLIGらしさを生んでいるのかもしれない。

採用についても、スキルを求めて人材募集をかけることもあるが、単純に「この人と仕事をしたら、新たなビジネスが生まれるのでは」というマインドを重視して採用することもあると話す。

課題になりやすい属人化に対して

また、個性を広げると組織として属人的になっていく部分もある。会社としてスキルを資産化しておきたいという観点では、難しいこともあると思うが、属人化の問題はどのように考えているのだろうか。

「属人化については目下の課題だと思っているのですが、メンバーについては各チームのリーダーに採用権を委ねているので、自分の後釜になる人、一緒にやれる人を自分たちで集めてもらうようにしています。前に辞めた社員と同じスキルを持った人は簡単にはいないかもしれませんが、採用を任せることでできるだけスムーズに人員整備ができればと考えています」

社員の技術力を担保する「LIGブログ」

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 個性を活かすマネジメントと教育方針は、方向性を誤ると無法地帯のようになるイメージもある。しかし、組織としての技術力向上について、LIGはいかにもLIGらしい方法で担保する。

「社員一人ひとりの技術力や知識の定着に関しては、『LIGブログ』の存在が大きいですね。月に1本、社員が必ず記事を書かなければいけないのですが、650万PVを越えているメディアに実名と顔写真を出して記事を書くとなると、それなりのプレッシャーがかかるわけです。きちんと技術的に間違いのない記事を出さなければならないので、自然と勉強するようになっていますね。

また週に1回、ウェブニュースのまとめを配信していて、そこの情報収集も社員全員で行っています。『発信するためにインプットを頑張る』という仕組みが、社員を自然と成長させるコツだと思っています

職群の壁を超える「デザインスプリント」

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 エンジニアの中には他部署とのリレーションミスを経験した人や、そもそもコミュニケーションスキルが高くないことで悩みを抱える人も少なくはないのでは。林さんはこの課題に対して、「プロジェクトに全員を巻き込む」ことでの解決姿勢を見せている。

「案件が始まるときには、全員が打ち合わせに参加してもらうようにしています。コミュニケーションの場を半強制的につくることで、解決できることも多いので。あとは、最近だと『デザインスプリント』という会議手法を取り入れていることもあります。グーグルベンチャーズという会社がとっている手法なのですが、2~5日間、プロジェクトに関わる全ての人間を集めて缶詰状態にして、一気にプロトタイプまで作っちゃうっていうハッカソンみたいな会議なんですけど。

最近のLIGブログリニューアルも、2日間デザインスプリントをやって作りました。デザイナーとかエンジニアも、どうしてそれを作るのかという点が最初から共有できているから、完成まで一気に持って行けるのがメリットです」

「少し余裕がある」ぐらいの仕事量が、マネジメントには向いている

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 技術者には「自分でやったほうが早い」と考えて、仕事を他人に振ったり任せるのが苦手な人もいる。しかし林さんはマネジメント職こそ、自分の仕事量に余裕ができるくらい周りに振るべきだと話す。

「最初は自分がやった方が早いんですけど、任せているうちに将来的に自分が楽になるし、その人のスキルアップにもなるので、基本的にはどんどん任せたほうがいい。誤解を恐れずに言いますが、私は仕事を抱えるのがあまり好きじゃないんです。むしろちょっと余力が残っているぐらいの仕事量が理想だと思っていて。というのも、社員の誰かにトラブルがあったときに、管理職としていつでも助けにいけるようにしておきたいと思っているんです。だから基本的な仕事は任せつつ、いざというときに動ける準備をしておく。

振り返ってみると、プレーヤーとして動いているときから、効率化をはかってみたり、若手が入ったら任せてみたり、どんどん振ることはやっていました。仕事を振るための屁理屈こねるのは得意なほうなので(笑)、振るのはうまかったと思います。」

自身の経験から理想の職場環境の構築を試みる林さんが、マネジメント職の立場として大切にしていることも、とてもシンプルだ。

壁を作らないことですね。変に肩書きがつくと、部下から話しかけづらくなりそうじゃないですか(笑)。向こうから気軽に相談できる空気を作るのも、管理職の仕事。今ぐらいの会社の規模だったら、顔色が悪そうだったら声をかけるとか、社員ひとりひとりの様子を見てあげたいなと思っています」

個性を極力尊重しながらも、組織として確かな技術力を担保する。難しい問題に聞こえるが、それが絶妙なバランスで適えられているのがLIGという会社のようだ。推進力に長けつつもヒトを大事にするマネジメント層が屋台骨となり、その元で個性を発揮して伸び伸びと仕事に打ち込む社員の姿を見ることができる。

文:カツセマサヒコ

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