「特捜部は恐ろしいところだ」なぜ検事は取り調べでその言葉を発したのか?

取調べ中の様子を語る石川知裕衆院議員

 小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反罪で起訴された小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員は2011年7月10日、ニコニコ生放送の特別番組に出演し、東京地検による取り調べの際、担当検事が「特捜部は恐ろしいところだ」と発言したときの様子を語った。また、元検事の市川寛氏は、自らの体験を基に同発言が出た理由を推測した。

 陸山会事件とは、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金収支報告書に虚偽記入や不記載があったとして、石川議員を含む小沢氏の元秘書3人が政治資金規正法の罪に問われている事件。今年の2月に行われた初公判では3人とも無罪を主張。裁判の行方が注目される中、東京地裁は6月30日、検察側が証拠請求した石川議員ら元秘書3人の供述調書の一部について「威圧的な取り調べや利益誘導があった」などと任意性を否定し、証拠として採用しないことを決めた。裁判所の判断の根拠となったのは、担当検事が発したとされる「特捜部は恐ろしいところだ」という言葉だ。

 石川議員は取り調べ中に東京地検特捜部の田代政弘検事から「特捜部は恐ろしいところだ。何でもできるところだぞ。捜査の拡大がどんどん進んでいく」と言われたと主張。これに対し、田代検事は否定したが、東京地裁は石川議員の主張を認め、「威迫ともいうべき心理的圧迫があった」として供述調書の証拠採用を却下した。決め手となったのは石川議員が保釈後の再聴取のときに録音していた取り調べのやり取りの様子。そこでは、田代検事が同発言を認める様子が記録されていた。

 田代検事がこのような発言をした理由について、個人的に田代検事を知っているという元検事で弁護士の市川寛氏は

「彼(田代検事)自身は追い込まれて、石川さんから所定の供述を取らなければいけないというプレッシャーがあったので、そういう言葉を使わなければいけなかったのではなかったのか」

と、検察官当時に自分が置かれていた立場に重ね合わせて語り、上層部が描いたストーリーに沿った供述を取らなければいけないという強いプレッシャーが検察内部にあることを指摘した。市川氏は冤罪事件として知られる佐賀市農協事件に主任検事として関わった際、事情聴取した元組合長に対して「ぶち殺すぞ!この野郎!」と暴言を吐いたことが原因となり検事を辞職している。

 市川氏の発言に対し、石川議員も

「罵倒して脅すように『恐ろしいところだ。何でもできる』と言ったわけではなかった。田代さんが私に言ったのは『(検察は)こういう恐ろしいところだから、どうなるかわからない。(特捜部を)止められるかわからない』というセリフ。恐らくそういう組織の中で、結果を出さなければいけない。一人一人が追い詰められていくのはそういうところなんじゃないか」

と述べた。

(三好尚紀)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]元検事・市川寛氏の発言から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv55870396?po=news&ref=news#42:00

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