『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』しゃべり出したオーブンは人類と友だちになれるのか⁈
シャープが家電を友だち化しようとしている。その名も「ともだち家電」。キッチン家電として登場したのが「プラズマクラスター冷蔵庫 SJ-TF50B」と、この”水で焼く”健康志向オーブンとして定番人気の新型『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』(実勢価格 税抜約210,000円・2015年10月30日発売※受注生産)だ。何とこのヘルシオはネットに接続し、人語を解するという。一体どういうことなのか、検証してみた。
世間では一見顔文字に見えてしまう”IoT”なるものが大流行。これはInternet of Thingsの頭文字をとったもので、簡単に言うと通電しているものはみんなインターネットに繋いでしまえという思想。当然この中には家電が含まれており、今回のシャープの「ともだち家電」もその流れを受けたもの。
冷蔵庫やオーブンレンジが常時、ネットに接続されるということにどんなメリットがあるのかピンと来にくいかもしれないが、近年これまたブームのクラウドサービスに接続することによってその可能性は無限大になる。ネット上のクラウドに蓄積された多くの情報を、各家電などが引っ張ってくることが可能になる。単純なところではレシピ。この『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』もシャープのクラウドサービスからメニューを引き出し、人気の高いヘルシオメニューを教えてくれるのだ。
もちろん2010年の第7世代からタッチパネル式カラーディスプレイを搭載するようになった「ウォーターオーブン ヘルシオ」なので、前モデルのXP1WFでもネット上の情報を得ることは可能だったのだが、今回の『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』で業界初、音声でコントロールすることが可能になったのだ。
なぜ音声かというと、調理中の手は汚れていることが多い上に手が離せないことが多いので、声で操作できるのは自然な流れ。人間が話しかけ、『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』が少々アニメ声テイストの女声で答える。実際に話しかけてみると、液晶パネルが音声を認識して、答えを返してくる。認識中なことがわかる画面はなかなかにSF。とても面白い。
クラウド上のレシピデータにアクセスして最適なメニューを提案してくれる
使いたい食材を告げると、クラウド上に蓄積されている「ヘルシオレシピ」(380メニュー※2015年11月現在)から選んで提案してくれる。
「じゃがいもを使ったメニューを教えて」
と聞けば、少し考えた後(ネット接続して情報を得た後)、
「じゃがいもの薬味あえはどうですか?」
との返答とともにヘルシオレシピが液晶パネルに表示される。
地味な機能ながら、日々の献立ほど主婦(主夫)の頭を悩ませるものはないわけで、この提案はありがたいのではないか。また提案される「ヘルシオレシピ」にしても、常にクラウド上に追加されていくわけで、時間が経てば経つほど賢くなっていくというのも今までの家電ではありえないことだ。
通常は購入した時、そのタイミングで開発された最高の機能を得ることはできるが、そこから進化することはあり得ないのが家電。それがネット上のクラウドサービスに接続することによって、常に最新の情報に更新することができるというのは、さすがIoTであり「ともだち家電」だ。時を経ることによって「ヘルシオレシピ」が充実していけば、ある意味これまた流行りのビッグデータ状態になるわけで、その可能性は果てしない。
しゃべり出したヘルシオは少々アニメタッチでフレンドリーな女子の声だった
気になるのは音声認識機能。スマホなどで「OK グーグル!」とか「ヘイ、Siri!」と叫んでいる人にとっては一般化しつつある機能だが、その認識精度を試してみると可もなく不可もなくといったところだ。
ある程度は『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』に人類の方がすり寄り上画像の指さし部分に向かって、理解しやすいように滑舌よく話してやる必要はあるが、よほど訛りなどがきつくない限り正確に認識してくれる。スマホなどに比べると聞かれる範囲はある程度絞られているわけで、そうした可聴語彙の問題もあるだろうが。もちろん調理に関しての指示もこの音声認識機能での使用が可能。「オーブンで180℃ 30分」と告げれば、その通りに動いてくれる。手が汚れている状態でパネルを操作しないで済むのは掃除の手間を考えるとありがたい。
また、ネット接続ならではの機能として面白いと思ったのが人気ランキングの表示。巷で人気のヘルシオレシピの順位が出るのだ。人気メニューを選ぶとクラウドにも伝わるため、現時点で日本で一番料理されている(もちろんこのヘルシオ限定だが)メニューがわかることになる。これは本格的に料理シーンに大きな影響を与えるのではないだろうか。
さらに自分が気に入ったメニューを「星3つ!」と堺正章ばりに評価して伝えておくと「高評価メニュー」として本体に蓄積してくれる。このデータもまた蓄積されると面白いビッグデータになりそうだ。個人的にはテレビの料理番組で放映されたレシピがそのままこの『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』に表示されるようになったらもっと面白いことになるのではないかと思った。
スマホアプリと連動することによって通勤電車の中でもメニュー決定が可能
さらに「ともだち家電」関連でいうと、スマホアプリ「ココロボ〜ド」を使用してスマホと連動できるのも興味深い。
外出先でこのアプリでヘルシオに献立を相談すると季節や天気、カレンダーの祭事や家族の予定などを鑑みたメニューを提案してくれた上で、買い物リストをその場で作成。さらに決めた献立レシピを『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』にダウンロードできるのだ。そしてその指示に従って調理を始めることになる。
ここまで来ると確かに”ともだち”なのかもしれないなと思う。むしろ博識なお手伝いさんの頭脳を手に入れたと言う感じが正解かもしれない。このお手伝いさん、初期投資は高いが時給は発生しないというのがいい。とにかくすごい世の中になったものである。
注意したいのは、この『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』を「ともだち家電」として使用する場合は常時接続のブロードバンド回線が必要で無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントが必要だということ。ネット環境がないと普通のヘルシオになってしまうので注意したい。いまどきそんなに無理な環境ではないが、無線LAN環境がない場合は機器を別途購入しなければならない。無線LAN設定もワンボタンに対応しているので説明書を見ながら設定すれば難しくはないだろう。ただ電子レンジに干渉するのが無線LAN(特に2.4GHz帯)というのも有名な話。その点をメーカーに確認したところ、レンジ使用時は自動的に無線LAN機能はスリープするように出来ているそうだ。
肝心のオーブンレンジ機能は進化した自動調理機能が特徴
『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』は最上位モデルのAX-XP200がベースとなっているので、調理機能も充実している。過熱水蒸気を使用して余計な油分を落としてヘルシーに焼き上げる独自のウォーターオーブンはヘルシオの代名詞だが、初期モデルと変わったのは水タンクの位置。サイドに存在していたものが底部に移動することによって庫内は2013年モデルと比べて5cm広くなった。それでいて2段調理可能、全体の幅はコンパクトになっている。
極めつけとなるのは自動調理機能「まかせて調理」。食材の温度や状態を自動的に判断し、その分量も自動計算して調理時間を弾き出し、冷凍のままでも対応する。すごいのは冷凍食品・冷蔵食品・常温食材を混在させても判別してしまうこと。面倒臭い調理時間の計算が不要というのは数字が苦手、という主婦(主夫)にとって何よりの機能だろう。他にも焼き・蒸しを同時進行させるなどの複合技も使える。それらを駆使して野菜の栄養素を失わずに、揚げ物などの油は落とし、減塩も実現するヘルシーメニュー調理はさすがだ。
従って『ウォーターオーブン ヘルシオ AX-XP2WF』は食事制限を課されている高齢者や成人病・メタボ/ロコモ予備軍にとっては絶大な安心感につながるのでオススメ。本来は食べることを避けた方が良いメニューも食べられるという点がQOLを高めてくれるだろう。
同時に、調理を果てしなく楽にしたいと考えるなら「まかせて調理」もポイントが高い。そして音声認識機能を搭載することによってその操作を楽にしてくれる上、ネット経由でレシピをゲットしてくれる「ともだち家電」機能も、これからの進化次第の部分は多いが興味深い。問題はやはり価格が高いこと。受注生産ということでまだ割高な段階だと思う。
それでも先進的な家電の未来をいち早く体験したいのなら購入を検討すべき。すでにキッチンにタブレットが必須というクックパッド・ユーザーも多いと思うので敷居は思っているほどは高くないはず。初期ユーザーとして今後の「ともだち家電」の進化に期待しつつ使用するというのはいささかPC的発想だが、そうした人々が家電の未来を作るのだ。
【スペック】
総庫内容量 30L(2段調理対応)
庫内有効寸法 幅395×奥行305×高さ240mm
質量 約25kg
電源 AC 100V(50Hz-60Hz共用)
定格消費電力 レンジ 1,460W オーブン/グリル 1,410W/1,410W
クックブックメニュー 488種類 自動メニュー 430種類
オーブン・グリル加熱方式 過熱水蒸気(ウォーターオーブン)/過熱水蒸気(ウォーターグリル)/熱風コンベクションオーブン/グリル
オーブン温度 発酵(30/35/40/45℃)100〜250・300℃
レンジ出力 1,000W/600W/500W/200W相当
省エネ設計 省エネ基準達成/待機時消費電力ゼロ/電源オートオフ機構
付属品 調理網2枚/角皿2枚/別冊クラウドサービスガイド/クックブック(取扱説明編/料理編)/別冊クックブック/ミトン
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