西岡参議院議長、語る(3) 「小沢さんは日本にとって一つの存在だと思う」
菅政権を批判してはばからない参議院議長の西岡武夫氏は2011年6月14日、ニコニコ生放送とUstreamで放送された「山本一太の直滑降ストリーム」に出演。東日本大震災以降の危機の時代を乗り切るためのリーダーは、「electされる(選ばれる)のではなく、evolveされる、生み出されるというほうが望ましい」と語った。
また、内閣不信任案決議を採択する衆議院本会議で小沢一郎氏には当日、本会議に「出たほうがいい」と電話で伝えたと話し、「小沢さんの存在は日本にとっては、一つの存在だと思う」と語った。
以下、山本氏と西岡議長の番組でのやりとりを全文、書き起こして紹介する。
■ポスト菅に仙谷氏は「論外。論ずるに値しない」
山本一太参議院議員(以下、山本): 西岡議長も(参議院議長を務めるため)今は党籍を離脱しておられると思うが、(それまでは)民主党におられて・・・。
西岡武夫参議院議長(以下、西岡): いや、会派をね。
山本: あ、会派を。失礼した。会派を離脱しておられる。私が民主党議員もいないのにこうやって批判するのはややアンフェアかも知れないが、私が今の菅政権、その前の鳩山(由紀夫)政権から見ていてちょっとおかしいなと思うのは、確かに自民党にも反省すべき点はたくさんあり、いろいろ古い派閥政治というので分かりにくいと批判されたこともあるが、一応自民党だったら例えばある幹事長のもとで選挙をやって大敗したら、必ずその幹事長は辞める。なにかある議員にものすごいスキャンダルが起きたら、どんなに有力な議員でも例えば次の総裁選挙には出られない。
何かやっぱり、責任を取って他の人たちにもう一回任せるということがあると思うが、特に菅政権は責任を取るという文化がないんじゃないかと。枝野官房長官に個人的な恨みはないが、幹事長としてやった選挙で大敗しても、次の組閣で官房長官になる。仙谷前官房長官は問責(決議)で責任をとってやめたのに、いつの間にか内閣官房副長官になって、なんとなくポスト菅の動きを仕切っている。岡田(克也)さんは外務大臣を辞めたと思ったら今度は幹事長。ということで、4、5人の人達が既得権益を持ってぐるぐる、いいポストを党と政府でたらい回しにしているように見えるが、西岡議長はどんな風にご覧になっているのか。
西岡: まあそんなに、見られてもしょうがないだろう。たしかに。本当は今、それぞれのポストずっと、こう挙げていくと、余程の度胸と自信と覚悟となければ、なれない。こんな大事な時に。
山本: 総理に、ということか。
西岡: 総理もそうだし、それぞれの大臣もそう。なんにもやろうとしないでポストだけほしがっているのは一体なんなのかと。菅さんが、本当に死に物狂いになってこの東日本大震災、福島の原発に取り組んでいるというならば分かる。(しかし)死に物狂いじゃない。
山本: 覚悟が感じられない。
西岡: 全然感じない。それが問題だと思う。
山本: 今、「共同正犯だ」と。つまり、内閣を支えてきた人にも責任があるのに何を言ってるんだというお話があったが、ポスト菅について、まぁいろんな名前が取りざたされていると。二つ、ちょっと議長に率直にお聞きしたいが、ひとつは仙谷前官房副長官という意見、説もあるが。
私は参議院自民党の政審会長として、やはりこの仙谷官房長官に対する問責決議案に賛成した。だから、私はまず官房長官に参議院が「No」を突きつけて、法的拘束力はともかくとして、西岡議長がさっき仰ったように、これで責任をとって辞めた仙谷さんが官房副長官に戻ってるということについても実は全く納得できない。さらにその仙谷官房副長官がポスト菅の総理になるということは、とっても参議院としては受け入れられないと思っているが、これについて西岡議長はどんなふうにお考えになっているのか。
西岡: 論外。論ずるに値しない。
山本: ありえないと。
西岡: ありえないというか。論外。
山本: では論外に加えてもうひとつお聞きしたい。仙谷副長官のほかにもいろんな名前が出ている。議長が仰ったように大臣をやるのにも覚悟がいる。総理をやるのにも本当に命がけの覚悟がいるときにこれからポスト菅を選び、その人が普通だったら総理になるわけだが、いろんな名前が出ている。前原(誠司)前外務大臣、昨今急に露出も増えて認知度が高まってきた枝野(幸男)官房長官、野田佳彦財務大臣、ちょっと根アカな戦略家みたいな樽床(伸二)前国会対策委員長、あるいはTVで非常に知名度の高い原口一博さんとか。本当に群雄割拠みたいな感じで。
西岡: 「雄」ではない。群「雄」ではない。
山本: 「群割拠」の感じか。こういう方々が出てきて、いろいろ次の首相候補として取り沙汰されているが、議長から見てどういう方が次の、ポスト菅にふさわしいのか。さしつかえがなければ、どなたがいいと思っているのかお聞かせ願えれば。
西岡: 今のは全部共同正犯。だって今の方たちは菅内閣にいたわけだから。
山本: 全員が「菅内閣にいた」ということ自体で(ダメということか)。
西岡: それはそうだろう。党の要職にもいた(人もいる)。
山本: するとまったくいないと。論外だと。
西岡: それともうひとつは、こういうときは菅さんが辞めなければ出てこない。今言われているのはどういう根拠で言われているのかわからないが、とにかく辞められるのが先。
山本: 議長が仰った「こういうときは辞めないと出てこない」というのは、実際に総理が辞めてポストが空席になって、一刻も早く次のリーダーを選ばなければならないというプロセスのなかで。「乱世の奸雄」というとあれだがこの危機の時代を乗り切れるようなリーダーが、いろんな要因で出てくると。こういう意味か。
西岡: そう。
■”ポスト菅”として西岡議長の頭にあるのは・・・
山本: なんとなく議長の頭にある方は。
西岡: このあいだもTVで言ったのだが、こういう際は、もちろん選挙というのは民主政治の基本だが、electされる(選ばれる)のではなくevolveされる、生み出されるというほうが望ましい。それはなかなか難しいだろうが。
山本: まあしかし、選ばれるよりもこのなかで新しい胆力を持った人が発見されるとか、代表選びのプロセスのなかで新しい人が進化して出てくるのがもっとも望ましいと。
西岡: まあ、とにかく辞めさせないとダメ。菅さんを。
山本: その点については私も議長と500%と一緒。せっかくなのでもう一度、アンケートをさせてもらいたい。ポスト菅について話が出たが、ニコ生ユーザーの皆さんはポスト菅に誰がふさわしいと思っているのかお聞きしたい。「1.仙谷副長官」「2.前原誠司前外務大臣」「3.野田佳彦財務大臣」・・・枝野幸男官房長官は入れなくていいか。「4.該当者なし」。
西岡: 私がいま申しあげた「共同正犯」。その方たちばかりではないか。
山本: しかし、「共同正犯」じゃない人を探すのがなかなか難しくて。アンケートなので、もしかすると今の議長のお話を受けて「該当者なし」という方が多いかも知れないので、あくまでもひとつのサンプルとして取らせていただく。
ニコニコ動画・七尾功記者(以下、七尾): 発表する。予想通り。これはもう結果から言う。1位が91.4%で「該当者なし」。
山本: これはニコ生ユーザー方々は西岡議長の発言に相当影響を受けられたんじゃないかと思うが。
七尾: ちなみに2位以下を申し上げると、5.1%で前原氏。野田氏が1.9%。最後に仙谷氏で1.6%。一位は繰り返すと、該当者なしで91.4%。
山本: 西岡議長がお考えになられているように、少なくともニコ生ユーザーの方々は全員が共同正犯だと思っていることが明らかになった。そこでもう議長の共感はいろいろうかがってきたが、やはり議長は菅総理は出来るだけ早くやめるべきだと。6月末までにはちゃんと蹴りをつけて辞めるべきというふうにお考えか。
西岡: 今日でも辞めるべきだと。
山本: 私はそれについてはまったく異論はない。ひとつ議長にお聞きしたかったのは、衆議院の内閣不信任決議案を巡るいろんな騒動があった。私も民主党議員―名前はいえないが、何人かから電話がかかってきた。当初はとても届かないと思っていたのに、前日の夜、あるいは当日の朝ぐらいには実は80人以上集まって、あのままいくとほとんど内閣不信任決議案は成立する見込みだった、と。これはいろんな報道機関とかマスコミ関係者の意見を総合しても、相当の確率で成立しそうだった。そのなかで鳩山前総理が民主党の代議士会、あそこで不思議な発言をされた。みんな菅総理が退陣すると信じて、なかには悔しい思いをした方もいると思うが、断腸の思いで「反対」に回ったわけだが、結局否決されたあとは全然目途も言わず、まるで「続投に意欲」みたいな感じになっている。あの時、議長は小沢氏と話をされたことをおっしゃっていたと思う。そこら辺の経緯についてもう一度うかがえれば。
西岡: 私はずっとテレビを観ていた。あれは小沢氏が本会場におられないから、おかしいなと思って(小沢氏に)電話をした。そして「どうされたんですか?」と聞いたら「いや出ない」と言うから「出たほうがいいんじゃないですか?」と申し上げた。自分が出たらその前に、今の代議士会を受けて、全員の自主投票っていう風に決めちゃった、その方々の間で。そこに自分(小沢氏)が出て行くと、当然自分(小沢氏)は賛成する、これまでの発言からすると。そうするとかなり混乱する。そうすると若手のみなさんが中心だから「みんなが非常に気の毒だから、自分は欠席した」。そう言われた。
山本: それについては議長はどういう風に思われたのか。
西岡: 私は「出たほうがいい」と言った。
山本: 今日、いろいろ核心の部分について議長と議論できたのは本当に良かったと思う。議長の、改めてこれまでの政治活動を今日「直滑降ストリーム」の前に拝見させていただいた。まさに波乱万丈というか非常にドラマチックな政治活動、政治家人生を送ってこられたと思う。興味があったのは、今回小沢さんの行動についても発言をされていたが、議長は新進党では小沢一郎氏と一緒に行動されたこともある。
西岡: 新進党は(私は)幹事長だった。(小沢一郎)国対委員長と(自分が)幹事長だった。
山本: 自民党時代もたしか経世会の小沢幹事長の時に、(西岡氏は)総務会長をなさっていた。議長は小沢一郎氏という方についてどういうお考えをもっているのかをぜひ聞きたかった。
西岡: 一言でいえない。
山本: 一言でいえなくても少し触りだけでもぜひ。
西岡: 消費税を導入した。竹下政権の時に。当時、私は税調会長だった。その時の幹事長が小沢氏だった。それから総選挙があって、その後の組閣の時に、党の三役に私が入って、(小沢氏とは)それからの付き合い。税調会長やっていた時から。だからその前は話もしたことなかった。その間、結局湾岸戦争があったり、政治改革の問題があったりして、その政策課題でずっと同じ考えで来た。その繋がり。
山本: なかなか言葉を選んで、いろいろな思いがあると思うので、言葉を選んで仰っているが、小沢一郎氏という政治家は今の日本に必要だと思われるか。
西岡: そうだ。
山本: なぜ必要か。
西岡: やっぱり自分の考えっていうのをもう曲げないところが大事。少なくなっているから。そういう古い、経験のある議員の中でも。もちろん政策的に私と違うところもある。あるけれども、それは相違は認めても。今仰った自民党時代、新進党時代を通じては、一貫してその政治家を目指し、この対外的にも、湾岸戦争の時に自衛隊を出そうとした。出せなかった。資金も出した。しかし、世界からは全然感謝されるどころか、っていう感じだった。そういうのを一緒に経験してきてるなかで、やっぱり私は、若手の議員の皆さん方に言いたいなって思っているのは、経験が豊かだっていうことと若いから駄目だっていうことは別。大いに若い方が総理になっていい。覚悟と使命感があれば。そういう意味では小沢さんの存在は日本にとっては、いろんな意見があると思うが、一つの存在だと思う。
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http://news.nicovideo.jp/watch/nw75412
(岩本義和、伊川佐保子、松本圭司、山下真史、土井大輔)
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