大塚英志氏、ドワンゴの新人研修で「インターネットという世界がうっすらわかった」

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大塚英志氏

 漫画原作者や小説家、あるいは評論家と多くの肩書きを持つ大塚英志氏を講師に迎え、ドワンゴの新入社員たちが「新人研修」という名目のもと「お話を創る」企画が実施された。2011年6月8日には、それぞれが2週間かけて描きあげた作品がニコニコ生放送を通じて公開された。社員たちの絵本を分析した大塚氏は、「ネットは抽象的で、固有性や『わたくし』や世界の豊かさが、すぽんと抜けたような場所のように(思って)、一方的な偏見を持っていた」が、できあがった作品を見てその考えが変化したようで、「ドワンゴという会社だとか、インターネットという世界が、『そういう場所なんだ』ということがうっすらわかった気がして非常に面白かった」と語った。

 大塚氏に課題として与えられ、新入社員らがこの日までに創りあげてきたのは、欠けている「台詞」や「絵」を書き(描き)くわえることでストーリーが完成する絵本『きみはひとりでどこかにいく』の中身。これまでにも高校生や美大生らを相手に同様の課題を与えてきた大塚氏は、ストーリーが進む過程でキャラクターに起こる変化を分析・パターン化し、過去の作品に照らし合わせて紹介したが、

「だいたい、こういった分類のなかに、(この課題を与えて)出てくる作品は納まっていたわけです。ところが、今回(ドワンゴ社員)15人の作品を拝見したんですけども、半分前後ぐらいは、納まらない『新種』だったんですね」

と、ドワンゴに就職した人間や、「ウェブという環境のなかで当たり前に成長してきた世代」が描くものに新鮮味を覚えた様子だった。

いろんな意味でドワンゴ社員の特徴みたいなものを集大成した作品

 なかでも大塚氏が「いろんな意味でドワンゴ社員の特徴みたいなものを集大成した作品」として紹介したのは、主人公が自らの顔を「まっ白な紙」で覆い隠した状態でストーリーが始まる作品だった。ほかにも「絵の線が極端にうすい絵本」や「風景に具体性がある絵本」など全員分の絵本を解説した大塚氏は、

「ネットは抽象的で、固有性や『わたくし』や世界の豊かさが、すぽんと抜けたような場所のように(思って)、一方的な偏見を持っていたが、これを見て、『ああ、ちょっと違うんだな』と」

「『わたし』に関しても、堂々とキャラクターを描くのではなく、いわば、『わたし』を描くことへの『ためらい』がある。(中略)この出し方、セーブの仕方というか、『わたし』の描き方がすごく面白かったです」

と評価。「ドワンゴという会社だとか、インターネットという世界が、『そういう場所なんだ』ということがうっすらわかった気がした」と、今回の「新人研修」に満足した様子だった。

(古川仁美)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「ドワンゴ社員の特徴みたいなものを集大成した作品」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv51022156?ref=news#1:11:45

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