石原慎太郎×田原総一朗(3) 「新銀行東京は成功した」

ニコニコ動画の討論番組に出演した石原慎太郎東京都知事

 石原慎太郎・東京都知事は、2011年5月17日に始まったニコニコ動画の討論番組『田原総一朗 談論爆発!』に第1回ゲストとして出演した。田原氏との対談の中身は外交関係にも及び、「尖閣諸島でろくなことをしなかった」と中国を批判する一方で、アメリカについても「国防総省は僕を憎んでいる」と口撃した。また累積赤字を抱えながら400億円の公的資金注入で批判を浴びた新銀行東京について、田原氏から”失敗″と振られると、「成功した」と反論し、「新銀行東京はいま、門前、市を成している」と主張した。

石原慎太郎×田原総一朗(2) 「東京に『隣組』を復活させたい」

 以下、番組でのやりとりの全文を書き起こして紹介する。

田原総一朗氏(以下、田原): あえて言う。他の人は絶対言わない。石原さんが銀行のことをボロクソに言うのは、新銀行東京が失敗したからではないか。

石原慎太郎東京都知事:(以下、石原): そんなものは成功した。昔、大きな銀行にいて役員になりそこなった人が――その銀行は潰れたんですけど、合併されて――やってくれた。なんで復活してきて、ちゃんと黒字を2年間出すようになったかというと、他の銀行が絶対やらないことをやった。それは、リスケという。リスケジュール。「あなたのお金は期限がこれまでだけど、無理だから延ばそう。延ばすがこういう努力をしなさい」ということを手取り足取り教える。それは銀行の責任。うちの銀行は小さいし、貸す額は少ないが、それでも500万、1000万、2000万円。ところが、大きな銀行は、500万、1000万(を貸してほしいという小さな企業は)潰してしまえと。そんなところでリスケジュールで、あんな企業の世話をするよりは・・・。

田原: 企業を潰してしまえと。

石原: 潰したい。スパっと切るわけ。そんな理不尽が通じているから、誰もこのごろ大銀行に金を借りにいかなくなった。てめえら何様か知らないが、本当によくない、日本の銀行は。

田原: 新銀行東京は、今よくなりつつある?

石原: それをやってきたから信用が出て、新銀行東京はいま、門前、市を成している。

田原: また、あえて聞きたい。石原さんが今度、都知事になったのは「やっぱり新銀行東京がこのままでは潰れるから、それを潰すのを延ばすため」と言う者もいる。

石原: とんでもない。もうちゃんとセカンドステージに来たから。どうやるかというと、東京の中小企業は素晴らしい技術を開発しているが、なかなか製品にならない。それをするために、私は「技術大賞」というものを設けて、ベンチャー・テクノロジー――昔は成功した会社に表彰していたのだが、そんなのはいい――これから成功する可能性のある技術を開発した会社に表彰をしている。それはしかし、物によったら、なかなか製品化するのは難しいし、日本の(技術)は進みすぎているから、本当は都合がいいのだけども、日本じゃ不必要だから、外国に持っていったら喜ぶものがいっぱいある。相手を中国にこれをやろうと思った。銀行のためにも。セカンドステージで。これは日本の経産省は全然動かないし、JETRO(日本貿易振興機構)も動かないから、僕がやる。その代わり「東京」対「政府」でやろうと。北京政府。北京の「市」じゃなしに。向こうのカウンターパート(対応相手)は、「一番最高責任者が出てこい」ということで。ナンバー3だか、ナンバー1の人と話し合いをして。向こうも喜んで。(そのときに)ある中国の大要人の娘さんと親しくなって、その人とも会った。それでそういうファンドを作ってやろうと思った。ところが、「あいつら」と言っては悪いが、尖閣諸島でろくなことをしなかった、中国は。僕は腹が立って「ダメ」と(関係を)切った。

田原: 尖閣でね。尖閣諸島で中国の漁船がいっぱいやってきて、日本の水域へどんどん入ってくると。海域へ。日本の巡視船が、つまり海上保安庁が船長を逮捕した。

石原: あの事件は・・・(政策集団)青嵐会の仲間から金を集めて、関西大学の冒険部の学生を最初にやって、あそこ(尖閣諸島)にチャチだけど灯台を作ったのは僕。

田原: 石原さんと今、議員を辞めてるけど、弁護士で元民主党(の)・・・。

石原: 西村真悟は(それの)全然あと。それで、その時に青嵐会の仲間と拠金して、その後それを聞いて、右翼の(日本)青年社が「私たちがあとをやりたい」と言うから、「ぜひやってくれ」と。彼らは金を持っているからね。立派な灯台を作った。足りないところは直させて。それで運輸省に持っていって「ちゃんと海図チャートに記載してくれ」と頼んだら、外務省のバカが横槍を入れて、「まだ時期尚早だ」と、できて光っている灯台を認可しなかった。

田原: 「時期尚早」とはどういうこと。何が「尚早」なのか。

石原: 知らない。何が「尚早」なのか。とにかくあいつらは大きな国にペコペコペコペコするし、アメリカさんにはペコペコするし、ろくな役所ではない。(米軍基地のある福生市)横田を取り戻そうという会議だって、この頃、外務省は出てこない。

田原: あれも石原さんがいいと思ったの。東京の横田にある基地をやっぱり日本の民間空港でもいい、自衛隊でもいい、使おうじゃないか。

石原: 本当は貸すべき。共同資本にしたらいい。今度、航空自衛隊の本部があそこに移ったから。管制権だけを取り戻して。横田の管制区域というのはべらぼうに広い。新潟まで及んでいる。そこを日本の飛行機は飛べない。ヨーロッパから帰ってくるとき、ロシアの大陸から日本海に出ると、まっすぐ成田に来られずに迂回して太平洋に出て、そういうバカなことをしている。それ何にも日本人には痛痒を感じない。

田原: 痛痒を感じないのではなく、知らない。だから、「そこのところを通れるようにしよう」と、石原さんがやったと・・・。

石原: 少し通れるようになった。特に大阪とかソウルとか博多とかに行くところは、今まで(空港で)1車線の往復だったところが、3車線の往復くらいにして。これもあいつら(アメリカ)が嫌がっていたんだけど、狭いところで日本の飛行機が正面衝突しそうになって、片一方は急降下、片一方は急上昇した。(それで)住民が死にそうな大怪我した。それで初めて「しょうがねえな」と(空の)道路だけは開放したんだけれども。あの(横田)飛行場を使わせなかったらしょうがない。

田原: 外務省が協力しないの、石原さんに?

石原: うん。全然しない。

田原: なぜなのか。

石原: アメリカの国防総省が怖いから。日本の外務省、昔の国務省は、アメリカの人たちに「私たちは(アメリカの)東京支店です」と言っている。

田原: ヒラリー・クリントン(外務長官)に・・・要するに外務省は「私たちは東京支店」と言っているのか。

石原: ヒラリー・クリントンよりずっと前(の時代)から。それから、向こう(アメリカ)の財務省も日本の大蔵省を「東京支店」と言っている。

田原: だから石原さんは『NOと言える日本』(という本)を作ったんだ。あれで、石原さんはアメリカによく思われていないと。

石原: 全然よく思われていない。

田原: 今も?

石原: 今も。とにかく国防総省は僕を憎んでいる。だから横田の問題でこの間、高瀬(保)さんという、若泉(敬)さんと一緒に沖縄返還(交渉の密使)をやった人が――学校(首都大学東京)の教授を今でも頼んでやってもらっている――このあいだ笑って言って。「石原さん、ちょっと向こう(アメリカ)で一杯飲みましたら、国防総省の役人が本音をチラっと言いました。横田(基地)の問題は『That Ishihara・・・あの石原の野郎が言い出したことだ』と」と。

田原: 「あいつが言い出したことだから、あいつがいる限りは横田問題はケリをつけない」と。

石原: まあ、魂胆はそうだろう。日本で一番滑走路持っていて、一番使われていない飛行場だ。

田原: だけど、逆に聞きたいのだが・・・。

石原: 僕と亀井(静香)が強引に、羽田(空港)に4本目の滑走路をあけた。あれは、僕と亀井が15分でやった。

田原: あれ、石原さんと亀井さんがやったのか。羽田の4番目の滑走路。

石原: それで国際化した。そしたら、成田(空港)は慌てて、いままで(夜)10時までなのが、11時に延ばしてくれたから、飛んでくる飛行機も楽になって。今まで・・・変な風に話が飛ぶが、大災害(東日本大震災)で「節電、節電」と言うけれど、一番いい方法はサマータイム。サマータイムは一時日本でやっていた。できなくなったのは、成田(空港)がゴネて、(夜)10時までしか飛行機を入れないと言い出した。

田原: サマータイムをゴネているのは成田なの?

石原: 成田。それが11時に延ばした。羽田(空港の滑走路)が開いたので慌てて。森田知事もしっかりやってくれたから。だから、やればいい。すぐやれることをやらない。行政は小さなことも大きなこともあるが、できることをすぐやること。この間も仙谷(由人内閣官房副長官)に会って、いろいろ4つの首都圏の知事の節電のことで「あれをやりなさい、これをやりなさい」と言ったが、やらない。その代わり、言ったらそのショックで、パチンコ店も自粛して25%節電すると。

田原: 石原さんが言った。「パチンコ屋、自動販売機、あんなものやめちまえ」と。

石原: 自動販売機なんていらないよ、あんなものは。あんな物がマジメに立っている国は、日本だけ。

田原: ちょっと待って。自動販売機いらないと。(アシスタントに向かって)どう思う、あなたは?

アシスタント: (驚いた様子で)はい。

石原: コンビニで買って、家で冷やしとけばいい。

アシスタント: コンビニも・・・?

田原: コンビニはやっていいのか。「自動販売機はやめちまえ」と。

石原: コンビニだって、深夜はいらない。深夜にやっているから、「コンビニエント」なんだろうが(笑)。自動販売機は、ヨーロッパでは一晩でなくなるから。かっぱらわれて、壊されて。自動換金装置、ATMっていうのか。あれも、なかに現金が入っているんだから。あんな物がやられずに置いてある国、自動販売機がどこへ行っても無人で置いてあるのは日本だけ。

田原: それはやはり、日本が素晴らしいのでは?

石原: 素晴らしくない。そんなのに甘んじているから、こういうザマになった。

田原: 僕はベトナムに行って言った。日本人たちに、あるいはベトナムの人たちに。「今度の東日本大震災で東電はどうしようもない」あるいは「菅政府はどうしようもない」と。ボロクソに言った。(そうしたら)「いやいや、田原さんはそういうけど、いま世界の国は日本を見直している」と。たとえば東北の人たちが避難所へ、小学校、中学校の体育館へ避難して、2ヶ月もいる。ふつうなら、あんなものは暴動が起きる。混乱が起きる。あるいは東京でも震災の(起こった)日は交通が全部マヒした。その後も間引き運転。ふつうなら暴動や混乱だと。「でも、日本人はちゃんと行列を作って待っている」と。「素晴らしい」と言う。

石原: それは日本人の素晴らしさはそこにも出ているが、一方、日本人が当たり前のこととして、いままで享受してきた生活様式というのは、そこらじゅうに、自動販売機やコンビニがあって(というもの)。なんというか、使えるものは使って、贅沢をつくして浪費してやってきた。ただ、今度の災害で、日本人のもともとの本性が浮き上がってきて。僕は被災地に行ってみても、あそこで頑張って感謝しながら、我慢してくれる人は、本当に美しいし、涙が出るほど懐かしい。だけど、それで済むようなものではない。

石原慎太郎×田原総一朗(4) 「世論とは何か。我欲の塊ではないか」

◇関連サイト
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv49658192?ref=news#17:07

(ふじいりょう、村井克成、亀松太郎、秋本直樹、大住有、岩本義和、土井大輔、丹羽一臣)

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