特殊な日本の新卒採用。欧米とは真逆の方針は今後も続く
日本の新卒採用は欧米と比べかなりユニーク
今年も新卒の内定式の時期が近づいてきました。今年はサイトへのエントリー開始時期が12月から3月へ、選考開始時期が4月から8月へと変更となり話題になりました。しかし、新卒時期に企業が一斉に学生の選考を実施し、新卒入社として育てていく日本型雇用スタイルは長い間変わっていません。この日本のスタイルは、欧米と比較するとかなりユニークな制度のようです。そこで今回は、欧米の新卒採用と比べた特徴と、今後の方向性についてお伝えします。
日本の新卒採用で具体的な募集要項を目にする機会はない
バブル崩壊前の日本では、「優秀な学生を採用し、OJTや研修等、コストをかけて教育して将来の経営を担う人財として育てる」というのがスタンダードでした。有名大学出身者の囲い込みなどが積極的に行われていた時期です。その後、教育コストもかけられなくなりグローバル競争も激化するにつれ、「自立的に動き、貢献できる学生を採用」と軌道修正されました。志望動機や志向性を見るために面接に時間をかけ、大学名を伏せたエントリー制度にするなどの工夫が見られました。
それでも、「社会人経験がなく、職種とは関係がないさまざまな分野の学生を採用する」という点は基本的に変わっていません。文系、理系という大きな括りはありますが「○○学部で○○を学び、○○ができる方」など、具体的な募集要項はあまり目にすることはなく、「2016年3月に大学卒業見込みの方」という表記が一般的です。
企業と学生の双方が無駄な時間を費やしている
そのため、学生側は可能性を考え、より多くの企業にエントリーし、採用活動の中で希望の見極めを実施します。一方で、企業側は多くのエントリーの中から本当に希望する学生、貢献度が高い学生の見極めが必要となり、お互いに時間と労力をかけての採用活動が続いているのです。
一方、欧米は特に新卒採用をしていないことで知られています。欠員募集の際、応募してくれば採用という形で職種別の採用が一般的です。そのため、学生も学生時代から専門性を磨き、長期のインターン経験を積み、ある程度の知識や経験を身に着けてからエントリーする場合が多いのです。指定校、指定学部による選考もあり、企業と学生の双方が無駄な時間をかけることないシステムとなっています。
時間と労力が必要な日本の新卒採用は今後も続いていく
欧米とは正反対ですが、時間と労力をかける日本の新卒採用は今後も続くと考えられます。なぜなら、企業側は「従業員」というよりも「一緒に働きたいメンバー」として新卒採用を位置付けており、多くの学生たちの中から選抜することに意義を感じているようにも見受けられるからです。また、学生側も「さまざまな業種、職種を見る機会」として就職活動を捉えているように見受けられます。内定をもらっても、敢えて他の企業の選考を受け続け、納得ができるまで続けるケースも少なくありません。
そのため、企業側にはコストの負担増や内定学生の囲い込み、学生側には学業が疎かになるという影響が問題視されています。これらを改善するには、必要な人物像をさらにクリアにして必要な経験、スキルを明示ししてくこと、学生側も早い時期から業種や職種の知識をつけ、インターンシップ体験等により将来性を考えた行動をとることが重要となるでしょう。新卒採用に時間やコストをかけすぎて、その他の活動の重要な機会を逃さないように、グローバル時代であるからこそ気を付けていきたいものです。
(島谷 美奈子/キャリアカウンセラー)
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