堀江貴文被告緊急記者会見(2) 「マスコミの歪んだ正義感で犯罪者にされる」
最高裁から上告を棄却されたことで近く収監される見通しとなった堀江貴文被告は2011年4月26日17時から、都内で自由報道協会の主催により開かれた記者会見に出席。証券取引法違反の罪に問われた「ライブドア事件」で無罪を主張し、検察との『徹底抗戦』を続けてきたことを振り返り、「起訴もされていない時点から完全に犯罪者扱いだった。マスコミのある意味歪んだ正義感で、犯罪者じゃない人を犯罪者にしてしまうことがある」と語った。
(堀江貴文被告緊急記者会見(1) 「ゆっくり刑務所の中で本でも読みたい」)
以下、本記者会見全文。
ジャーナリスト・岩上安身氏:
堀江氏の事件が起こった当時、検察の正義・無謬性、裁判所の無謬性は疑われていなかったのではないかと思う。しかしこの数年のあいだ、立て続けに検察の捜査というのは、もしかするととんでもないものではないか思わせる事件、事案が起こった。小沢氏の事件、村木事件、前田検事の事件。この一連の事件を経て、検察は改革をすると言っている。
こうしたなりゆきをみて、どこに検察の問題はあったのか。今の検察の改革のあり方に、不十分な点はないのか。また、検察と一体になって動く司法記者クラブというマスコミの動き方、一方的な集中報道のあり方、こうしたことに問題点はなかったのか。数年前のライブドア事件のときに語りつくせなかった思いがあるのではないかと思う。検察、裁判所、マスコミにこれらに対して今の思いのたけを聞かせてほしい。
堀江貴文氏(以下、堀江氏):
私も恥ずかしながら検察というものを、検察があることは知っていたが、自分が捕まるまでは具体的にどんなものか知らなかった。それから検察を勉強するようになって、日本でも有数の「検察マニア」になっていると思う。調べれば調べるほどこの仕組みの怖さを感じた。
なんという本か忘れたが、検察とマスコミの関係を書いた本があった。それを読んだら、すごくまともで正義感のある記者の人たちが、検察に厳しい目を向けている記者が危ないと書いてあった。なぜなら、深い部分で検察官と繋がってしまうからだと。まさに僕はその通りだと思った。検察官も人間だから、不条理であったり、不合理な動き方をする人間や、罪を犯す人間が検察の中にもいる。村木氏の事件でそのことは露呈したが、あの頃、最高検が現役の検察官全員にとったアンケートで、26%の検察官が被疑者・被告人の供述に反して調書をとったことがあると答えたベタ記事を見た。僕は「やっぱりな」と思った。自分もそういった調書を取られそうになったし、自分の周りにもそういった人たちがたくさんいた。
元外務省の佐藤優氏の「憂国のラスプーチン」という本にも書かれている。ああいった形で協力者を見つけて、協力者が落ちることでターゲットとなる。ライブドア事件の場合は私だが、私を首謀者に祭り上げたいという思いはすごく伝わってきた。ただ、残念ながらその当時、僕は全く知識がなく、そういったことに対してただ「違う」、「無罪です」と言うことしかできなかった。なので、すでに手遅れだが、こうなってみて思うのは、これから同じような目に遭う人たちが出てこないことを祈るばかりだ。そのためには、検察官は正義の人であり、絶対に嘘はつかないし、間違ったことはしないという無謬性。これを信じないで欲しい。
しかも、今これは日本だけでなく世界でもそうだが、三権分立の埒外にあり、三権分立から事実上独立している検察というモンスターに対して、全く押さえがきいてないような状態にある。日本は特に深刻で、いつ何時皆の前に検察官が現れて、捕まえられるかわからない。特に目立ったりするとその危険性は高まる。あるいは、新しいこと、皆を良くしようと思って新しいことにチャレンジしようとしても危ない。保守の枠を飛び越えて新しいことをする人たちを潰す。検察の人たちは、もともとそういう人たち。そういったことに対しては皆厳しい目を見せた方が良いのではないのかと思う。
実際のところ検察官の人達は僕たちが絶対見ることのできない証拠を持って、それをひた隠しにすることもできる。強制捜査権というものあるが、強制捜査権というのは非常に強い権限。本当に人のプライベートを全て調べて、都合が良いように解釈をしてストーリーを作ることができる。それを隠すこともできる。調べて突き止め、ピンポイントでこの書類って言わないと出してくれない。実際私は事件の過程で、部下が横領行為をしていた証拠を発見したが、本当に偶然発見できたようなもので、弁護士の力がそこの部分に関してはすごく強かったということで発見できた。これがもし発見できなかったら、僕はもっと厳しい刑に処せられていたのかもしれないと思うとゾッとする。逆に言うと2年6ヶ月ぐらいで済んだ。これだけ検察に楯突いて、ガリガリにやりあって、2年6ヶ月で済むというのはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。しかしながら、これから2年6ヶ月(刑務所に)入るわけだが、その中でも言うべきことは言おうと思う。
検察の問題に対してこれまでは、みんな怖がっていた。それは首相も含めて恐れている。政治資金規制法なんて作った政治家自身が悪いんだが、政治資金規制法なんて違反しない方が難しい。それは立法府がつくったのだから、それはお前ら(政治家)が悪いんだろと言ったら終わりになる。しかし、そんな変な法律をつくらない様なことは、国民もそういった動きをしていかなければいけないと思うし、そういった報道や検察リークに流されない、ひとりひとりがリテラシーを持って自分で判断をするという時代が来ないと永遠に解決しない問題なのかもしれない。
今回の原発関連の報道、地震関連の報道を見ても、まだまだ個々人の情報リテラシーの力っていうのはすごく低い。また同じような間違いを犯してしまうかもしれない。だけれども少しずつでいいから、我々ひとりひとりが情報の力を磨いて、検察もちゃんとした組織になって欲しい。未だに、会見の録音も録画も認めてないような組織だから、それには程遠いと思う。最高検が検察改革の記者会見をやっていると聞き、あえてこの時間にやらなくても良いのになっていうふうに思う気持ちもある。
しかしながら、声をあげ続けていかなくてはいけない。これはインターネットっていう新しいメディア、個人が声を出せる新しいメディアが生まれ、佐藤優氏とか鈴木宗男氏みたいな勇気のある人達が出てきて、「検察っていう問題があるんだよ」と皆に教えてくれた。こういった勇気のある人達をこれから変えていかなくてはいけないと思うし、僕もそういった勇気のある人達の仲間になって、これからも声をあげ続けていかなくてはいけないと思う。
言い続けるしかない。これはできの悪い社員を教育するやり方と同じ。僕は最初会社を経営していて、誤解していた。できの悪い社員って一回言っても絶対分からない。同じミスをする。じゃあどうやってその社員はミスをしなくなるのか。言い続けるしかない。これも、5回や10回じゃダメ。100回以上言わないと、その部下は間違いをしてしまう。できの悪い検察にもたぶん1回や2回じゃ済まなくて、5回、10回、100回ぐらい言い続けないと分からない。だからしつこく言う。
(発言者不明):
マスコミについてはどうか。
堀江氏:
マスコミについても同じで、これは多分同じ人達が自分の記者クラブであったり、社会部にいて、検察の人達を取材して、時には批判をしてやっていくと、やっぱり同志になてしまうのだと思う。同志になってしまうのは、こういうケースではある意味仕方がない部分であると思う。ただし、損させないような仕組みっていうのは多分できると思う。記者クラブであったりとか、そういう仕組みをもっと流動性のあるものに変えて、新陳代謝をして、常に新しい気持ちで、検察であったりとか、そういう組織と向き合うような体制を作れば良いのではないか。
もうひとつは、横並びで同じ報道を続けるっていうのは止めたほうが良いのではないか。物事は、今回の件で分かったのだが、2面性がある。だから、ライブドア事件についても、私の主張は無罪だし、私のことを支持してくれている学者のひと法学者の人もいるし、少しおかしいのではないかと言ってくれる人もたくさんいる。でも、その側面から見ると確かにおかしいが、逆の検察官から見てみるとあいつは金のことしか考えない、金の亡者で、ついには違法なことまでやって金をもうけようとした、金の亡者だと、検察官らの目から見ればそう思える。
そのような目で見て証拠を探すと、良いとこだけをつまみ食いする。これは我々も同じで、無罪であることの証拠をたくさん用意して無罪だろという。向こうは向こうで、いえいえ僕らに不利な証拠はいっぱいピックアップして有罪だろと。物事には必ず2面性があって、ゼロか1かって完全に割り切れるものではない、0.5があったり、0.4があったり。これはゴルフも一緒なのだが、例えば4.5も3.5も切り上げたり、切り下げたりすると4になる。だから、バーディーに果てしなく近いパーもあれば、ボギーに果てしなく近いパーもある。しかし、パーは一緒。
それと同じですごく有罪にすごく近い無罪もあれば無罪にすごく近い有罪もある。それを結局、有罪か無罪に振り分けているだけの話で、特に検察官から見れば、有罪のほうのバイアスがかかりやすいし、裁判官もそう。そういった二面性ってものがあるってことをわかった上で、報道する側としてはだいたい検察寄り。だけど、そうじゃないって見方が当然あっていいはず。村木氏の事件だって、もしかしたら何か無罪じゃない証拠があるのかもしれない。無罪ということになったたからそのようなことはないと信じたいが、可能性はゼロではないと思う。だけどもそれは、もう無罪判決が出たら、「無罪、無罪」という話になってしまうし、有罪判決が出たら「有罪、有罪」ということに全員が横並びになってしまう。
ライブドア事件なんて、起訴もされていない時点から完全に犯罪者扱いだった。それも当然判決に影響を与える。それを皆自覚して欲しい。犯罪者じゃない人を犯罪者にしてしまうことが、マスコミのある意味歪んだ正義感でそうなってしまうことがある。これは断言できる。なので、多面的な見方をすべく、そこで健全な競争をして欲しい。テレビ局だったら、民法、NHKを合わせて6局、7局あるわけで、その中で、全員が同じ見方をしているのは気持ち悪いしおかしいと思う。絶対黒、絶対白ってことは絶対有り得ない。多面的な見方をすることを心がけて欲しい。僕のケースも最初はそうだったが、最近だんだん少しはそうではない、無罪ではないかというような意見をする人たちも増えてきた。
(堀江貴文被告緊急記者会見(3) 「日本では、お上に逆らったら首を切られる」)
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]堀江貴文被告緊急記者会見、記事内全文起こし部分から視聴
http://live.nicovideo.jp/watch/lv47840618?ref=news#16:30
(山下真史/宮川幸輔/三好尚紀/土井大輔/丹羽一臣)
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ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
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