ハムはハムでも食べられないハムってなーんだ?『ハムフェア2015』取材レポート
ハムと言っても生ハムやボンレスハムのことではない。
アマチュア無線家のことをハムという。
毎年この時期に東京ビッグサイトで開催されているアマチュア無線の祭典である「ハムフェア2015」を取材した。
移動体通信全盛のこの時代にアマチュア無線と聞いて、「そんな古臭いもの」と思う方が多いかもしれない。
しかし、電気通信の基礎を作ったアマチュア無線はキングオブホビーと呼ばれる黄金期もあったが、現在でも日夜技術は進歩し日本製の無線機は世界中で高く評価されている。
写真はトリオ製の真空管式短波帯アマチュア無線機だが、現在のケンウッドがトリオの時代から無線機を作っている。ケンウッドと聞けばオーディオメーカーという認識が一般的だろうが、通信機メーカーでもある。
国家資格が必要な趣味は多くない。アマチュア無線はその数少ない一つ。無線従事者免許を取得しないと電波を出すことができない。
しかし、第1級から第4級まで区分されたアマチュア無線技士の免許だが、第4級であれば国家試験も難しくなく、講習会で修了試験に合格すれば免許証がもらえる。
なお、無線局は人(無線従事者)と物(無線局)両方に免許が必要だ。ちょうど、運転免許証と車検証の関係に似ている。
写真は日本のアマチュア衛星。
衛星通信というのは何も放送局や電話会社だけのものではない。アマチュア無線にも専用の通信衛星が各国から打ち上げれられており、衛星を介して通信ができる。もちろんそれなりのアンテナが必要ではあるが、放送局のようなパラボラアンテナは必要ない。
なお、商用の通信衛星や放送衛星とちがい、アマチュア衛星は一般的に静止軌道ではないので、頭上に衛星が来た時だけ通信が可能となる。
アマチュア無線家は電波の知識が豊富なので、会場内のミニFM局では専門的な話題で放送をしていた。入場者は無線機でラジオを聞いていたのが面白かった。
意外と有名人でもアマチュア無線家は多数存在し、免許が失効した人もいるかもしれないが、今井美樹さん(JE6FCM)、タモリさん(JA6CSH)、優木まおみさん(JM6CRT)等が有名。
他にも、故小渕恵三元首相(JI1KIT)、故フセイン・ヨルダン国王(JY1)、ファン・カルロススペイン国王(EA0JC)等、VIPもいる。
カッコ内はコールサイン。
最新の全世界を相手にする写真のこの短波帯アマチュア無線機は70万円。(ケンウッドTS-990)
趣味にお金をかけるのは、どの世界も同じ。
一方、写真のようなハンディ機も存在しこれならば常時持ち歩ける。
ここまで読んでいただいた読者はすでにお気づきかもしれないが、記者はアマチュア無線家でもある。アクティブではないが、JJ6TJEというコールサインを持っている。
阪神大震災の時は西宮市で被災し、通信網がほぼ遮断され、まだ携帯電話が一般的ではなかった時代に、アマチュア無線が役に立った。
東日本大震災の時は東京都に住んでいたのだが、交通網が完全にマヒして帰宅困難者という用語が登場したのは記憶に新しい。
この際にも、アマチュア無線で近隣の情報を交換し合い、的確なルートで帰宅出来た経験がある。
撮影に協力してくれたコンパニオンさんにトランシーバーというものについてイメージを聞いてみた。
「そうですね。子どものころに、お父さんのお友達がアマチュア無線をやっていたような気がします。あとは、トランシーバーというと、救助隊の人が持っているようなイメージがあります」
概ね一般の人はこのような認識だろう。しかし、普段使っている携帯電話やスマホも広義では無線局だし、放送局だって無線局だ。
NHK東京第一放送は「JOAK」というコールサインを持っているし、FM放送、地上デジタルテレビ放送、衛星放送だってコールサインはある。
携帯電話やスマホは移動体通信会社が免許を受けている。
写真はコンパニオンにインタビュー中の記者
無線の世界では公式にモールス符号による電信は廃止されたが、アマチュア無線の世界や軍事用途ではまだまだ現役だ。
写真はモールス符号を送信する「電けん」のいろいろ
会場内ではハムフェアの特別記念局が「8J190Y」というコールサインで開局、アマチュア無線家がオペレートを楽しんでいた。
このコールサインは8Jが日本、1が関東地方、90Yは日本アマチュア無線連盟が90周年記念を迎えたことを表す、特別に指定されたコールサインだ。
この時間帯のオペレーターはJH1VDM渡辺くん。小学校6年生の12歳だ。
写真はオペレートする渡辺くん
ちゃんと無線局免許状が掲げられていた。
この無線局を運用するオペレーターは法令により「無線業務日誌」を書かなければならない。ログと呼ばれる無線通信の記録である。
写真はオペレーターの渡辺くんが記入したログ
渡辺くんは、4年生の時に第3級アマチュア無線技士の免許を取得、今回は7MHz帯という混雑するバンドで見事なオペレートを見せた。
第3級アマチュア無線技士と言えば記者と同じ資格である。いわばこの世界では同僚のようなものだ。
第1級アマチュア無線技士の資格を持つお父さん(JN1GEW)に魅せられて免許を取った渡辺くんは冬には第2級アマチュア無線技士の国家試験に挑戦したいと意気込む。
アマチュア無線をしている友達はいないそうで、ぜひ友達同士で免許を取って楽しんでほしいものである。
写真は慣れない取材にお父さんのアドバイスを受けながら応じるJH1VDM局・渡辺くんとインタビューする記者・JJ6TJE
日本の電波行政を管轄する総務省もブースを出し、免許の電子申請についての広報をしていた。
クラブブースでは、様々な楽しみ方があるアマチュア無線の世界でそれぞれのクラブが趣向を凝らして出展していた。
交信を楽しんだ後は交信証(QSLカード)の交換も楽しみの一つ。
印刷会社も出展し、QSLカードの受注を出張受付したいた。
資格が必要なので敷居が高いと思われがちな趣味ではあるが、逆に一生ものの趣味になる可能性が高いのもアマチュア無線。
東京では第4級及び第3級のアマチュア無線技士国家試験に限っては事前の受験申請が必要ない当日申し込み、即日合格発表の試験日もある。その気になれば1日で第4級と第3級の両方を取得することも可能。試験は4択マークシートだ。
資格を増やして悪いことはない。一度チャレンジしてみてはいかがだろうか。
※写真は記者もしくは同行カメラマン小野寺稔昭撮影
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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