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『日本のいちばん長い日』原田眞人監督インタビュー「若い世代は戦争を学ぶ事を放棄している部分がある」

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現在公開中の映画『日本のいちばん長い日』。昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクションを『クライマーズ・ハイ』、『わが母の記』の原田眞人監督がメガホンを取った、今最も観るべき邦画です。

太平洋戦争終戦の舞台裏では何が行われていたのか? 日本の未来を信じ、今日の平和の礎を築くため、身を挺し闘った人々の物語に挑みます。ベテランから、躍進目覚ましい若手俳優まで、今の日本映画界を代表するキャストの豪華競演が実現しました。すべての日本人に伝えたい、戦後70年の壮大な記念碑となる作品となっています。

今回ガジェット通信では原田監督にインタビューを敢行。映画にかける想い、なぜこの映画を今作ったのか、など色々とお話を伺ってきました。

日本のいちばん長い日_原田眞人3

―映画を拝見して、終戦の裏側にはこんな事があったのだ、と知らなかった自分が恥ずかしくなりました。まず、今回この映画を作られたきっかけを伺えますでしょうか。

原田監督:岡本喜八版が封切られた時に、僕は18歳だったのですが、それで「宮城事件」というものを知り、すごい事があったのだなと驚きました。ただ、軍人が、髪を伸ばしていたり、目をむいて大げさな演技をしたりというのが気になってしまって。昭和天皇の姿が、ロングショットか背中か、というのはそういう時代でしたから仕方がないのだろうとは思いましたが。一番素朴な疑問は8月14日から15日にかけての時間の中で、東条英機はどこにいたのだろう、ということでしたね。後に、半藤先生の原作を読んで、これは昭和天皇を主役のひとりとして描かなければ成立しない話だろうとも思いました。岡本監督がやりたくてもできなかったことを、いつか誰かが映画にしなくてはいけないなと。

―そして実現したわけですね。

原田監督:その後、しばらく時間は空いてしまったのですが、興味はあったので資料を読んだり調べ物はずっと続けていて。そんな時にアレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』(2006年日本公開)が日本で公開されて、僕も初日に「銀座シネパトス」で見たんです。「右翼が乱入してくるかもしれない」という噂もあったし、観客は皆緊張した様子でしたね。内容については「宮城事件」の描き方も、外国の監督にしてはよく調べているなと。だけど、イッセー尾形のやった昭和天皇が、口をモゴモゴさせていたり、昭和天皇の晩年のくせをことさら強調していて、品位が無かったんですよね。その時点で、これは自分がやりたい、撮らなくてはいけない、という気持ちになりました。

―なるほど。昭和天皇をきちんと描きたいという気持ちがあったのですね。

原田監督:21世紀になって、ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』や、ハーバート・ビックスの『昭和天皇』という本が出て来て、特に『昭和天皇』は酷かったですからね。長い時間をかけて調べて書いているというのは分かったけど、学者特有の勘違いがあるというか。イデオロギー先行で真実を無視している部分が多々ある。秦郁彦さん、ピーター・ウェッツラーさんといった日米の知識人が既に指摘していることですが、僕に言わせると、ビックス本の問題点は、権力の座にいる者を描く時に、権力の座にいる事を疑似体験した事が無い人は分からないという事です。例えば、僕は映画監督だから撮影の場では最高権力者ですよね。ところが、宣伝の立場になった時にポスターは宣伝部が勝手に作ってしまって、それを変えるにはたくさんの時間がかかると。『駆け込み女と駆け出し男』なんてのも、あのポスター全然気に入っていなかったですから。でも色々な状況で諦めざるを得ない。

そんな時、自分の気持ちはそのポスターには反対なんだけど、そこは諦めて、少しでも良い所を探そうとする。昭和天皇も一緒でね、開戦も反対だったし、中国侵略も反対だったけれど、彼の想いは通らなかった。自分はそういうつもりじゃなかったのだけど、太平洋戦争がはじまってしまった、毒を持って毒を制す為に東条英機が首相になって。それが逆効果で、どんどん戦争は酷くなっていった。でも、そんな状況で「自分は戦争は反対でした」なんて言えないですよね。これは権力のあるポジションに就いた事のある人なら誰でも分かると思います。

―リーダーであるからこそ、とらなければいけない態度と。

原田監督:昭和天皇も、自分は好戦的では無いのだけど、より良い状態になる為に色々と言うわけですよ。それをハーバート・ビックスは「こういう好戦的な事を言っている」等と、ねじまげて書いている。ニューヨーク・タイムス紙の取材に答えて「戦争中にただ一人昭和天皇が自由だった」とも言っている。全然自由じゃないんですよ。僕も小さいながら権力の場に立っているから、力で蹂躙されて、その中で妥協点を見つける大変さ、葛藤も分かっている。

御前会議のときの、昭和天皇の「耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ」というお言葉も、15年の間彼が耐えてきた想いが込められているのであり、そこを僕は映画で描きたかった。

―原作はもちろん、色々な資料を読む中で、もっと盛り込みたいエピソードもあったのでは無いかと思います。

原田監督:この映画の中では、鈴木貫太郎と阿南陸軍大使の疑似家族を描いていますが、本当だったらもっと突っ込んで、昭和天皇と母の貞明皇后の関係も描きたかった。この母子はすごく屈折した関係で、「日本国民が死に絶えても戦った方が良い」といった事を言っていたお母さんですから、そこには何十年と続く確執があった。それを描くのは理想ですけど、今日本人がそこまで受け入れられるかも分からなかったし、上映時間も3時間を超えてしまうので、これからの課題とする事にしました。昭和天皇と鈴木貫太郎と阿南陸軍大臣の3人により、緊迫した状況をいかに切り抜けられたという事を描いた。

―今回の映画制作で改めて感銘を受けた事実や資料といったものはあったのでしょうか。

原田監督:2006年頃から改めて半藤先生の原作を読み直したり、畑中少佐に関する資料など、色々と調べているうちに、魅力を感じたのは井田中佐ですよね。井田中佐と竹下中佐。彼らは阿南大臣によって命を救われているわけで、どんな人物をどんな言葉で救ったのか、という事をきちんと描きたかった。これが岡本喜八版だと描かれていないんですよね。井田中佐が自分の言葉で書いた書籍もありますから、森赴団長のもとに説得に行って、皆でわーっと声をあげる、といったシーンは、彼の言葉を基に書いています。

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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