ゲーム規制を聞いて“権力は腐敗する”を思う

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タケルンバ卿日記

今回はタケルンバさんのブログ『タケルンバ卿日記』からご寄稿いただきました。

ゲーム規制を聞いて“権力は腐敗する”を思う
最近は確信犯だと思っている。

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やはり今の少年たち、ゲームなんかの影響でですね、バーチャルとリアリティーの区別がつかなくなってしまって、バーチャルなものに影響され過ぎて、それで犯罪に走ってしまうということが多々あるんですね。
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テレビゲームの影響というかバーチャルとリアリティーの区別がつかなくなって犯罪に走るということがあるわけで、そういう意味では今の子どもたちにとってゲームソフトだとかですね、こういうものが与える影響というのはすごく大きいというふうに思っています。
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「定例記者会見(2005年3月2日)結果概要」 知事のページ : 神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/00/1199/chiji/kaiken/h16/050302.html

ゲーム脳とか言い出す規制首長パターン。本当にゲームが少年犯罪に影響があるならば、ゲームが出現した前後を比較した場合に、後の方が悪化しているはず。具体的には1983年の『ファミコン』発売の前後であるとか、『スーパーファミコン』、『プレイステーション』、『ニンテンドーDS』。そうした人気ハードが出た後に少年犯罪件数の悪化なんかが認められれば、確かにゲームの影響があるのかもしれない。

しかし実際にはそれを示すデータは得られていない(トップ画像参照)。
「少年犯罪データベース 少年による殺人統計」『少年犯罪データベース』トップ画像参照
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm

少なくても、殺人事件という重大な犯罪ひとつをとってみても、ゲームの影響が感じられる統計結果は得られてない。1980年以降はほとんど同じような数値なわけだし。

でだ。「ゲームが少年犯罪に影響する」という論理についてだ。本来“影響する”という点に関しては特段の意味はない。何故なら影響には良いものと悪いものがあるから。“影響する”という点だけをとってみれば、それは良いとも悪いとも言えない。

「ゲームは少年犯罪に影響します」という話だと結論がない。価値判断が示されていない。良い影響であるのか、悪い影響であるのかが、これだけではわからない。そこで普通は証拠を示して、その影響が良い影響か悪い影響かを結論付ける。少年犯罪の増加と関連付けることで、ゲームは少年に悪い影響を与えるという話が可能になる。しかし実際は逆。悪い影響は与えていない。

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内閣府の世論調査で、未成年による犯罪や不良行為などの「少年非行」が5年前に比べ増えたかを聞いたところ、「かなり増えた」「ある程度増えている」と答えた人がそれぞれ37.8%で計75.6%に達した。
ただ、実際に身の回りで問題になった少年非行は「特にない」と答えた人は44.3%で、2005年1月の前回調査より9.4ポイント増えた。警察庁のまとめでも昨年の刑法犯少年の検挙数は7年連続で減っている。
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「少年非行増えた」と7割が回答、実際は… 内閣府調査」 asahi.com(朝日新聞社)より引用
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY201101290285.html

こういうデータを証拠にするならば、「ゲームは少年に良い影響を与えている」とすら言える。少年犯罪の動向によってゲームが少年に与える影響を論じるのであれば、悪いデータをもってゲームをたたくのと同様に、良いデータをもってゲームを褒めないとバランス的におかしいし、論理的ではない。

問題は何でいつまでもゲームがたたかれ、ゲームが褒められないかということだ。何故“ゲームが少年に悪影響”という証拠のない話がまかり通り、“ゲームは少年に好影響”という話が出てこないのか。“悪影響だから規制”なのだから、“好影響ならば推奨”でもおかしくない。「あれやるな、これやるな」なのだから、逆に「いいぞ、もっとやれ」になってもいいはず。

それが冒頭の確信犯ということだ。規制を言い出す首長は、ゲームと少年犯罪の関連を論理的に考えていない。論理的に考えていないから、自らが持ち出した論理が導く結論と逆のことを実行しようとする。
では何故そういうことをするのか。それが彼らの利益だから。論理的ではない結論であろうが、自由に反しようが、規制は彼らの利益になりうる。彼らにとっての利益とは、首長としての評価向上で、松沢神奈川県知事にとっては、知事としての評価向上。

そのため、彼らはなるべく規制をかけたい。警察権を使いたい。ちょっとでも治安が良くなれば、それは政治家としての実績になり、彼らの利益になる。都道府県警察を動かし、法を適切に執行したと。

また、規制しないよりはかけたほうが良いのだ。「私はきちんと仕事しました」アピールができる。何もしないで、不作為の責任を問われるよりマシ。やれることをやって、その結果悪い結果が出た場合、それは社会のせいにすればいいし、よりもっと大きい行政区のせいにすればいい。都道府県知事なら国のせいにすればいいし、悪いのは国会とか内閣とか首相なのだ。

恐らく“規制する”という結論を彼らは変えない。論理は結論を都合よく導く材料にしか過ぎない。少年犯罪の増加という論理で規制をとなえた場合、少年犯罪の凶悪化という論理に切り替えるし、凶悪犯罪もまた減っているという事実を突きつけられた場合は、個別の事案を出す。

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レインボーブリッジの下をジャンボジェットがくぐるゲームソフトがあってですね、それに影響されて、もう3年ぐらい前ですけれども、コックピットに入った少年はですね、そのゲームを自分も一度やってみたかったということを証言しているわけですね。これなんかを見ても、テレビゲームの影響というかバーチャルとリアリティーの区別がつかなくなって犯罪に走るということがあるわけで、そういう意味では今の子どもたちにとってゲームソフトだとかですね、こういうものが与える影響というのはすごく大きいというふうに思っています。
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「定例記者会見(2005年3月2日)結果概要」 知事のページ : 神奈川県より引用
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/00/1199/chiji/kaiken/h16/050302.html

量が否定されたら質。質を否定されたら個別事案。これが論理を無視する詭弁(きべん)の基本。

石原慎太郎氏におけるアニメ・マンガ規制も恐らく同じ病理だし、2期、3期と在任期間が長くなった首長特有の思考回路じゃないか。今はそうではなくても、やがてそうなる。今よりも大きな名声を求めて、今よりも大きな規制をかける。公権力による縛りをかけようとする。

「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」
ジョン・アクトン卿(きょう)の言葉は正しい。

執筆: この記事はタケルンバさんのブログ『タケルンバ卿日記』からご寄稿いただきました。

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