“顔の見える”被災地支援 八戸のレストランを“予約”して漁師さんと地元にエール!

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デジタルメディア研究所

日本全国そして世界中から行われている被災地支援の取り組みは、資金や物資での支援から被災者が“もと通り”に働きながら暮らせるように考えるものに幅を広げつつあります。今回紹介するのは、青森県八戸市のレストランを“予約”して炊き出しを支援するというちょっとユニークなしくみ。震災で首都圏に魚を運べず困っている漁師さんや、客足が遠のいて困っているレストランのシェフを支えるとともに、被災した人たちにおいしいごはんを食べて元気になってもらおうと始まりました。

仕掛け人は、デジタルメディア研究所の橘川幸夫さんと亀田武嗣さん。東北地方とりわけ八戸市と深いつながりを持っていたお二人は「何ができるのか」を相談。「東北の人たちとの関係性を重視し、一時的な支援ではなく、東北のみんなが元の普通の生活に戻れる」ように、仕事や生活を支援する中長期的な体制を組むことを考えたそうです。

八戸では、漁師さんが漁に出て魚を水揚げしたものの、首都圏への物流システムが断絶しているため、焼却処分にせざるをえないという状況があります。「漁師さんも、じっとしていられなくて仕事に出たのですが、がっかりしていると思います」――そこで、つきあいのある八戸のイタリアレストラン オステリア・デル・ボルゴに連絡し、一風変わった“予約システム”を提案しました。

まず、レストランが全国各地から1名5000円のコース予約を受け付け、その費用でレストランは地元の食材を仕入れて地元の人たちに無償で食べてもらう。予約した人は、八戸に日常が戻ったときに訪れて、2500円のランチコースを食べることができる、というもの。つまり、半分は地元の人の料理のために今すぐ使われ、あとの半分は“予約者”のために担保される。そして、復興の兆しが見えたときには八戸に全国から人の流れを作ることもできるというわけです。

橘川さんは、「実はこれ、『グル―ポン』をはじめとした共同購入型クーポンのしくみと同じなんです」と言います。「ただし、お金を払った人は損をするから『グルーソン』と名付けました(笑)」。たしかに、「損をする」と言えばそこまでですが、直接被災地の人に届けたいものを届け、いつかその人に会いに行くこともできると考えれば、お金の価値に換えられない何かがそこにあるように思うのです。

今後は、共同購入型クーポンの仕組みを持つ企業との提携も模索しながら、他の地域の店舗などへ取り組みの輪を広げることを考えているそうです。橘川さんは、「復興に向けて動きだしている人たちに必要なのは、一時的なカネやモノだけではなく、“仕事”をしたいのだと思います。それが将来につながる」とも話してくれました。それぞれの被災地には、それぞれに異なる産業があり、仕事と暮らしがありました。復興へのロードマップは、“仕事”を取り戻すことから始まるのかもしれません。
 
東北地方太平洋沖地震の被災地域に対して~顔の見える支援を! 被災地に日常生活を戻すための支援を!
 
 

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Kyoko Sugimoto

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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