東京でも半分以上の医療現場で「心因的病状悪化」 震災による影響が明らかに
東日本大震災の影響は、直接大きな被害を受けていない地域の医療現場にも影響をおよぼしているようです。QLife(キューライフ)は、『大震災の医療現場への影響実態調査』結果を発表しました。調査には、茨城県を除く関東地方(栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川の1都5県)の医師252人が回答、実施期間は3月24~25日です。
同調査の結果によると、関東では半分以上の医療現場で患者に「震災で心因的な病状悪化」が見られることが明らかになりました。病状悪化は、「子ども」よりもむしろ「大人」に認められ、特に「女性」「高齢者」に多いとする医師が多数を占めています。
典型的な症状は、「不眠」「めまい・浮遊感」「血圧上昇」の順に多く、「余震」や「テレビ映像」がきっかけになっておう吐や目まい、耳鳴りが出現した人も。「心労と過労で軽度のアトピー性皮膚炎が悪化」「阪神淡路大震災の被災者で、今回の震災で当時を思い出してパニック発作を発祥」「定期受診している人全員がふだんより20~30血圧が高い」などの報告が寄せられているようです。
3分の1の医療現場では、直接大きな被災を受けていないにも関わらず「向精神薬の処方」が増えた患者さんが認められました。原因となった「強い不安」の具体的内容は「余震が続く(20%)」「悲惨な映像(14%)」「震災に対して漠然と不安(9%)」の順に挙げられ、映像による精神的影響が少なくないことを示しています。また、「放射能」への不安から向精神薬の処方に至るケースも7%認められました。
3らに、42%の医師が「今後、自分の患者さんのなかでPTSDを生じる人がいる」と予想しています。この結果について精神科医の冨高辰一郎氏は「災害被害を直接受けていなくても、報道や余震を介して身体症状や精神症状を悪化させる患者が多いということは大変興味深い」とコメント。また「医療者として大切なのは、震災に対する患者の不安や心配を理解しながらも、そういった症状すべてを病的なものとして扱わず、かつ冷淡になり過ぎず、重症度に応じた対応をすることではないか」と考察しています。
実際に、関東では余震や放射能への不安で心が休まらず、いつもより精神的な疲労を感じている人も多いのではないかと思います。こんなときは、家に帰ってテレビを見るよりも身近な人に会って素直に不安を話しあったりするほうがいいのかもしれませんね。被災地のことはもちろん心配ですが、ときには息抜きをする時間も作ってみてはいかがでしょうか?
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京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。
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