【日曜版】とにかく30億でヤッターワン! 【アニメ実写化の悲喜交々】
映画には価値があります。時に共通言語を生み、時にほほえましい論争を生むような、それは合コンの時に役に立つささやかなトリガーになるポテンシャルさえ持っています。そんな映画から得られる定価1800円の感動はそれを見る人の数だけ存在するほど幅広いものですが、ほぼ万人が許さなかったり、誰しもが盲目的にほめたりと、まったくもって謎に満ちたそんな不思議作品に出会えた時こそ映画の魅力を探る絶好のチャンス到来と言えるでしょう。そんな中、ちょっと前に見てきた『ヤッターマン』が興収30億を超えそうという大ニュースを耳にしました。深田恭子主演のこの作品、想像を絶する大ヒットの秘密は果たしてどこにあるのでしょうか?
アニメとか漫画を実写映画化すると、大体にして怖い目に遭います。悪魔の戦いを見に行ったハズなのに、見終わる頃には観客自身がデビルになってしまうやつとか、球を7個集めるやつとか、釣りまくるやつとかあれやこれやです。そもそも見たい作品には見たい絵があって、それが頭の中でもわもわ妄想で巨大化していきます。あんなんもあるんじゃね? こんなんもあるんじゃね? なんて興奮しながら考えてる時が一番幸せなわけで、そしてそれを上回る妄想を見せつけてくれるのがプロのお仕事のハズなのです。
では、なんか知らんけど世間の評判が異常に高い『ヤッターマン』の場合はどうでしょう。そりゃ主演がごっくんボディのフカキョンと親の七光で有名な嵐の櫻井翔であるならば、そのネームバリューでそこそこ興収も引っ張れるのかなぁとは考えられます。
でもね、なんでしょう。「すごく面白かった♪」「ヤッターマンの世界をずばり実写化してくれれて感謝です!」「CGの迫力に超興奮!!」とか、すごい違和感を覚えてしまうのです。九州に行ったこと無い人が、東京のもどきトンコツラーメンを食べて「本場を超えた!」とか口から泡を吹きながら絶叫してるような、そんな印象を覚えるのです。
もしかしたら『ヤッターマン』はアイドルと芸人の出る特撮コメディ映画としては、及第点なのかもしれません。でも、有名アニメの実写化として考えた時には、と考え込んでしまうわけです。漫画のコマ割りやアニメのレイアウトをそのまま忠実に再現するのが、実写化の正しい手法なのでしょうか。20世紀末を舞台にしたアレを見ても、その手法は必ずしも傑作を生むわけではないというのはみんな知っていることです。あれを本当に観客は求めているのでしょうか。
アレンジにほどがある球集めの例もあるので一概には言えないのですが、アニメーションで培ったダイナミックな構図や演出テンポ、緩急の効いた絵作りがなぜ実写に生かされないのかが不思議でならんです。つまり、原作を巧みに消化する能力やアレンジするセンス、そしてもっとも大切な“原作を愛する気持ち”が決定的に欠けている監督が多すぎるという、そんなお話です。色々と批判はありましたしクドいメッセージ性には辟易としましたが、紀里谷和明監督の『CASSHERN』は、見る人の想像を超えた絵を持っていました。小説じゃないのです。映画なのです。映画は「ビジュアル」なのです。
映画のエの字も知らない親の七光り素人が作ったびっくりアニメが76億5000万円も入ってしまうような、ブランドに目が眩むお客様ばかりがいる業界です。そりゃ映画業界もオタクや女子供を舐めた映画作りをしてきます。実写で再現したヤッターマンではなく、実写になったヤッターマンの活躍を見たかった、とそんなワガママを桜の下で思った4月なのでした。
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