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是枝裕和×菅野よう子『海街diary』インタビュー

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「今回、僕としては初めて、役者さんの芝居に音楽を当ててみようと思ったんです」。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという日本映画を代表する若手女優が四姉妹を演じた話題作『海街diary』。古都・鎌倉を舞台にしたこの物語を映像化するにあたり、是枝監督にはこんな思いがあったという。音楽を依頼した相手は、アニメーションから実写映画、ポップス、CMまで幅広いジャンルで活躍する菅野よう子。今回が初参加となる是枝組で、「光と影が拮抗する物語で、時間の流れそのものを表現したかった」と振り返る。季節の移り変わりと、そこで生きる人々の息づかいを繊細に写しとったこの名作は、どのように誕生したのか──。日本の映画界と音楽界をそれぞれ代表する才能に、語ってもらった。

 

──お二人は今回が初顔合わせですね。是枝監督はどういう経緯で菅野さんに音楽を依頼することになったのですか?

是枝「最初は何となく『登場人物は四姉妹、物語の時間も四季。だから音楽は弦楽四重奏がいいかな…』と思っていて。脚本を書く際はモーツァルトとか、いろんな作曲家の弦楽四重奏を聴きながら進めていたんです」

菅野「ふむふむ」

是枝「で、実際に撮影が始まり、音楽はどうしようかなと考え出した頃、たまたま現場でその話になったんですよ。『どんな音が合うかなぁ』って。そうしたら近くに長澤(まさみ)さんがいて。彼女が菅野さんの名前を挙げてくれました。『私、一度でいいから菅野さんの音楽が流れてる映画に出てみたいんです』って」

菅野「わぁ、光栄!(笑)」

是枝「で、菅野さんが音楽を担当された朝ドラ『ごちそうさん』のサントラCDがあるじゃないですか。『ゴチソウノォト』。あそこに入っている、えーと、ほら……なんとかマーチ」

菅野「『モスリンマアチ』?」

是枝「それ(笑)。スタッフの一人がその曲を持ってきてくれて。すでに撮り終えていた映像に、現場のパソコンでいきなり乗せてみたんですよ。その時点ではもう『春』のシーンは撮り終わっていたので、四女のすずとクラスメートの男の子が、桜並木の下で自転車を二人乗りするシーンに付けてみた。そしたらあの短い曲と映像とが、ぴったりはまっちゃったんですね」

菅野「へええ」

是枝「それがもう完璧だったんですよ。曲が一番盛り上がるところで、二人が上を見上げたら、そこに満開の桜があって──みたいな(笑)。まったく違う作品のために書かれた曲なのに、まるで誂えたみたいにマッチしていた。パソコンの画面を眺めつつ、『うわー、こんなことってあるんだ』ってスタッフとびっくりしまして。これはもう、お願いするしかないだろうと」

菅野「そうだったんですね! 今、初めて知りました」

是枝「行き当たりばったりと思われると恥ずかしいので、お話ししてなかったんです(笑)」

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菅野「実は最初にお話をいただいたとき、私は『ん?』って思ったんですよ。品良く上質な作風の是枝監督がなぜ、画面を壊すともっぱらの評判の私に──」

是枝「ははは(笑)」

菅野「広告の仕事が多く、世の中的には職業作家とされる私にオファーしてくださったのか。なかなか結びつかなかった。吉田秋生さんのマンガが原作なのでもしかしたら、『マンガ=アニメーション=菅野』みたいな単純な発想だったりするのかなとか(笑)。いらぬ深読みもしつつ、直接お目にかかってお話ししたんですよね。その際、弦カル(弦楽カルテット)のイメージで行きたいんですと、最初の希望もうかがって」

是枝「そうでした。たしか、先ほどの『モスリンマアチ』も含めて菅野さんが手がけられたサントラ楽曲をいろいろ集めて、僕なりに(粗編集したフィルムに)当てたものを持っていって、見ていただいたんですよね」

──アコースティック楽器を用いた、愛すべき“小品”といった趣の楽曲が多いですね。音楽の基本コンセプトは、どうやって作っていったんですか?

菅野「まず前提として、映画音楽のオーダーって、監督さんごとに本当にそれぞれなんです。例えば『今回、演技がイマイチだったから音楽で盛り上げて』とおっしゃる方もいるし……」

是枝「うーん、なるほど」

菅野「もちろん『演技の邪魔をしないように』という方もおられる。なかには「こう撮っちゃったんだけど、音楽で何とかこっちに持っていけないかな」という相談もあったりするんですけど…。是枝監督が私に何を求めているのか、最初にお話しした際は、あまりはっきりした答えがなかったんですね。実際の作業が始まってから、『あ、そうか。自分でも今、分かりました』みたいなことが多くて(笑)」

是枝「いやぁ、ほんと、いつも何も決まってないんですよ」

菅野「『なるほど。そっか。それでいきましょう!』みたいな感じで(笑)。最初にイメージを決め込むんじゃなくて、やりとりを通じて探っていく姿勢が伝わってきた。私にはそれがすごく面白かったんですね。是枝監督、見かけによらずグルーヴィーな方だなぁと」

──どの場面にどのくらい音楽を付けるかというのも、お二人でキャッチボールしながら決めたんですか?

菅野「はい。ただそれも、やりながらどんどん変わっていく感じがあって…。一番最初、ざっとフィルムをつないだ長いバージョンを見せてもらったときには、私は『場のテーマ、つまり、鎌倉のテーマ曲を書こう』と決めたんです(笑)。たしか監督ともそういうお話をしたんですけど……」

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