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今週の永田町(2015.4.28~5.13)

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【与党、安全保障関連法案を最終合意】

今週11日、自民党と公明党は、安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)を開催し、政府が提示した安全保障関連法案の全条文案を審査し、最終合意した。関連法案は、改正する法律10本を束ねた一括法案「平和安全法制整備法案」と、新たに恒久法として制定する「国際平和支援法」の2法案となった。

 

現行法を改正する一括法案では、以下の10法案が改正される。

○武力攻撃事態対処法

集団的自衛権の行使が可能とする存立危機事態の定義<第2条>で他国への武力攻撃であっても日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合とし、判断基準として武力の行使は事態に応じ合理的に必要と判断される限度<第3条>、他に適当な手段がない<第9条>と盛り込むことで「武力行使の新3要件」を条文化

○重要影響事態法(現行の周辺事態法改正)

事実上の地理的制約を撤廃のうえ、そのまま放置すれば日本への直接の武力攻撃に至るおそれのある重大影響事態と位置付け、日本の平和のため活動する米軍や友好国の部隊への後方支援を可能にするとともに、支援メニューも拡充など

○国連平和維持活動(PKO)協力法改正案

治安維持任務や駆け付け警護などの任務拡大、国連主導のPKO以外でも国連安全保障理事会などの決議を踏まえた活動や欧州連合(EU)など政令で定めるその他の国際機関の要請にもとづく人道復興支援や治安維持活動などを「国際連携平和安全活動」として容認。このほか、PKOを含めて任務の遂行が妨害された場合を安全確保業務として武器使用も可能にするための武器使用基準の緩和、司令官などを務める自衛官の国連派遣、大規模災害に対処する米軍などに対する物品・役務の提供など

○自衛隊法

グレーゾーン事態での他国軍防護や在外邦人の救出活動を可能にし、存立危機事態における自衛隊の権限や平時の物資支援を拡大、海外での規律違反で不測の事態に陥ることを防止するねらいから、自衛官の上官命令への多数共同による反抗や部隊の不法指揮、防衛出動命令を受けた者による上官命令反抗・不服従などの国外犯処罰規定を追加など

○集団的自衛権行使関連4法案

存立危機事態での機乗輸送規制(海上輸送規制法)・捕虜の扱い(捕虜取扱法)、他国軍への支援(米軍等行動関連措置法)と施設利用(特定公共施設利用法)を可能にするなど

○国家安全保障会議(NSC)設置法改正案

NSCの審議事項に「存立危機事態」「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」の認定などを追加

○船舶検査活動法

日本周辺有事に限定していた任意の船舶検査に係る地理的制約を外し、「国際社会の平和と安全に必要な場合」にも実施可能に

このほか、平和安全法制整備法案の付則に、道路交通法や国民保護法、サイバーセキュリティ法など計10本の法律の技術的改正も盛り込むようだ。

 

 一方、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的に、自衛隊を海外に派遣して他国軍隊への後方支援を随時可能にする「国際平和支援法案」では、「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動」に対し、自衛隊を派遣して他国軍を支援する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」<第1条>とし、国連総会か国連安全保障理事会の決議を要件に、現に戦闘が行われている現場(一部の捜索救助活動を除く)でなければ、自衛隊による他国軍への燃料補給や弾薬の提供・輸送などの後方支援を可能にするとしている。

 自衛隊派遣にあたっての国会承認については、例外なき事前承認を要求した公明党に配慮して「総理大臣は対応措置の実施前に、基本計画を添えて国会の承認を得なければならない」とし、迅速な派遣手続きを行うため、衆参両院は承認を求められてからそれぞれ「休会中の期間をのぞいて7日以内」に議決するよう努力規定が盛り込まれた。国会承認から2年後の継続手続きについては、国会閉会中または衆議院解散時に限って「その後最初に召集される国会で承認を求めなければならない」と事後承認を認めている。

 

自民党と公明党は、協議会での最終合意を受け、それぞれ党内の了承手続きに入った。自民党は12日の総務会で、反対を唱える村上誠一郎衆議院議員が採決前に退席したため、全会一致での了承となった。公明党は、14日に了承手続きを終える。与党の了承手続きが済み次第、政府は同日、国家安全保障会議(NSC)と臨時閣議を開催し、関連法案を決定する。

政府は、関連法案とセットで、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態の3ケースへの対処方針についても閣議決定する。(1)武装集団による離島への不法上陸の恐れがある事案、(2)日本領海で国際法上の無害通航に該当しない他国軍艦の航行、(2)公海上での日本の民間船舶に対する侵害行為の3事態に警察当局や海上保安庁だけでできない場合、自衛隊による治安出動または海上警備行動などを速やかに発令するため、「大臣全員が参集しての臨時閣議開催が困難な時は、電話等により各国務大臣の了解を得て閣議決定を行う」「連絡が取れなかった大臣には事後に速やかに連絡を行う」と、手続きの簡素化・迅速化する。電話による閣議決定に加え、メールでの連絡、国家安全保障会議(NSC)の電話による審議も可能にするという。また、自衛隊や海上保安庁、警察庁、外務省など関係省庁による緊密な協力と対処能力の向上を掲げるため、「わが国の主権を守り、国民の安全を確保するとの観点から、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保する」と明記し、関係省庁の連携や情報共有など協力して対処するとしている。 

 

 

【関連法案の審議入りをめぐって与野党攻防へ】

政府は、翌15日に安全保障関連2法案を国会提出する。通常国会の会期末(6月24日)前に衆議院通過・参議院送付のうえ会期を大幅延長し、8月上旬までに成立させる方針だ。

当初、与党は、19日に連日審議することが可能な特別委員会を衆議院へ設置し、21日にも衆議院本会議で趣旨説明と質疑を行う日程を野党側に提案していた。しかし、民主党など「法案提出後に内容を精査する時間が必要」「法案の閣議決定から審議入りまでの期間が短すぎる。充実した審議ができない」として5月26日以降の審議入りを求めた。

冒頭から野党と対立する事態を避けたい自民党と公明党は、野党に配慮して、19日か21日に特別委員会を衆議院に設置、26日の衆議院本会議で審議入りの方向で調整し、15日の与野党国対委員長会談で野党に協力を求める方針でいる。

 

もっとも、民主党は「なぜ通常の安全保障委員会ではだめなのか」(民主党の高木国対委員長)と与党が求める特別委員会設置にも否定的な見解を示している。また、与党が求める関連法案の早期審議入り・一括審議も「強引にやれば無責任のそしりを免れない。中身に自信があるならば、時間をかけて国民に周知し、理解を求めて通せばいいだけの話」「中身に自信がないほど、国民が知らないうちに早く成立させようとするのではないか」(民主党の枝野幹事長)、「法案成立を前提に期限を切るのは、国会に失礼だ」(維新の党の松野幹事長)と、慎重かつ徹底した審議も求めている。

 

野党各党は、安倍総理はじめ政府・与党に厳しい姿勢で臨む方針だ。安倍総理が4月29日のアメリカ連邦議会・上下両院合同会議での演説で、安全保障法制の整備を「この夏までに成就させる」などと表明したことに、閣議決定・国会提出前に成立前提ありきの発言だとして一斉に反発した。野党各党は「法案提出すらなされていない段階で、これほどの重要法案の成立時期を外国、それも議会で約束するなど前代未聞」(民主党の岡田代表)、「憲法の根本原理の権力分立にかかわる問題。相当厳しく対峙したい」(民主党の枝野幹事長)、「特別委員会設置も、国会の会期延長も決まっておらず越権行為だ。国会審議が形骸化する」(民主党の長妻代表代行)などと批判している。

また、日米両政府が日米防衛協力の指針の再改定にあたり、安全保障関連法案で規定する自衛隊の活動拡大などを先取りした内容で合意したことも問題視して、「憲法解釈変更を含む大きな政策変更を国民にも国会にも説明なく、日米閣僚間で合意するのは異常で許し難い」(民主党の岡田代表)、「関連法案を提出していないのに日米で合意するのは順番が逆だ。国民が議論する手順が欠けていて、政権の姿勢は大いに問題」(維新の党の小野安全保障調査会長)、「国民の合意なく既成事実化するのは極めて問題」(社民党の吉田党首)などの批判がでている。

 

民主党は、通常国会中の成立阻止も視野に野党共闘を模索しているという。反対の共産党や社民党が民主党との連携をめざす方針を打ち出しており、維新の党も「重大問題なので次の国会に持ち越すべき」(松野幹事長)との慎重姿勢を示していることから、国会審議への対応で連携が進む可能性がある。

いまのところ、十分な審議時間の確保で野党各党の足並みが揃っているものの、民主党と維新の党との間で政策・主張の隔たりも横たわっている。関連法案すべてに反対する民主党は、将来的に容認する可能性に含みを残しつつ「専守防衛の観点から安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」としているが、維新の党は「国際法で個別的自衛権の範囲内と言えるところは認める」(江田代表)と容認しており、存立危機事態をより厳格化に規定する修正案をとりまとめている。

また、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定には反対で、「特措法をつくって議論するほうが確実性も高く、透明性も高まる」(長妻代表代行)と主張する民主党に対し、維新の党は、国会の事前承認を「自衛隊派遣の可否だけではなく、具体的な活動計画も含める」(江田代表)などの独自の恒久法づくりを進めている。

 

 こうした野党側の対決姿勢を強めつつある傾向に対し、自民党の高村副総裁は「あまり横暴なことをしたら選挙に負ける」と、拙速な強行採決などは極力避け、丁寧な国会審議を心がけていく考えを示した。その一方で、「抽象論としては議会の中で審議したうえで常にいろいろなことがあり得る」と、是々非々で対応する維新の党や方向性が一致している次世代の党などとの修正協議に応じる可能性も示唆した。野党間の分断を図りたい与党の思惑も見え隠れしており、民主党が描くとおり野党共闘が実現するかは不透明だ。

今後、関連法案の審議日程などをめぐって与野党の激しい攻防が繰りひろげられていくこととなるだろう。

 

 

【労働者派遣法改正案が審議入り】

12日の衆議院本会議で、派遣労働者の柔軟な働き方を認めることを目的に、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける「労働者派遣法改正案」の趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。同法案は過去2度、国会提出されたものの、いずれも廃案となった。政府は、派遣労働の固定化への懸念・批判が出ていることを踏まえ、直接雇用を促す姿勢を示すねらいから「派遣就業が臨時的・一時的なもの」との文言を明記するなどの修正を施したうえで通常国会に再提出していた。
*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継

 与党は5月中に衆議院通過・参議院審議入りし、通常国会中に成立のうえ、今年9月1日施行をめざしている。安倍総理は、12日の衆議院本会議での趣旨説明で「多様なニーズに対応した働き方を実現する観点から今後、より一層の改革を押し進める」「働き方の選択がしっかり実現できるような環境を整備していく」と改革意義を説明した。塩崎厚生労働大臣も「派遣で働く方の一層の雇用の安定や保護を図るものだ」と強調した。 

これに対し、格差是正解消を旗印に掲げる民主党や、改悪批判を展開する共産党や社民党などが「生涯派遣で低賃金の労働者が増える」「派遣の固定化、不安定化につながる」と改正案成立の阻止を掲げており、徹底抗戦する構えを鮮明にした。こうした批判に、安倍総理は「派遣元の責任を強化し、派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化した。一生派遣の労働者が増えるとの指摘は不適切だ」と反論しつつ、「計画的な教育訓練を新たに義務付けるなど、派遣労働者のキャリアアップを支援する」と理解を求めた。 

 民主党は、他の野党と連携して成立阻止をめざすが、維新の党が同一労働・同一賃金推進法案を準備したうえで、政府提出の労働者派遣法改正案への賛成に含みを残しているだけに、成立阻止のハードルは高くなっている。

 

 労働者派遣法改正案の衆議院通過後には、柔軟な働き方を広げて労働生産性を高めるねらいから、労働時間ではなく仕事の成果に応じて賃金を決定する高度プロフェッショナル制度の創設や、実際の労働時間にかかわらず労使間であらかじめ合意した時間を労働時間とみなす企画業務型裁量労働制の対象を新商品開発・立案や課題解決型営業などにも拡大することなどを柱とする「労働基準法改正案」が審議入りとなる。与党は、6月中に衆議院通過・参議院審議入りし、会期延長後の通常国会までに成立させる方針だ。

 ただ、民主党や共産党、社民党などは「残業代ゼロ法案」と位置付け、成立阻止を掲げている。今後、労働者派遣法改正案や労働基準法改正案の審議・採決日程をめぐって与野党攻防が繰りひろげられることとなりそうだ。

 

 

【野党、西村副大臣の発言撤回を追及】

 環太平洋戦略的連携協定(TPP)交渉について、西村内閣府副大臣は、アメリカ政府が守秘義務をかけたうえで連邦議会議員に極秘扱いの協定案閲覧を認めていることを引き合いに「テキストへのアクセスを認める方向で調整したい」と、日本の国会議員に協定案の開示を進める意向を示していた。しかし、その後、一転してその発言を撤回した。

 

このことに、野党側が「西村氏がきちんと経緯を説明し、約束した情報開示を一定の範囲で行うことが必要だ」(民主党の岡田代表)、「政府・与党内の意思統一はどうなっているのか」(維新の党の柿沢政調会長)、「米議会では情報が開示されているTPPの内容が、日本の国会議員に開示されないのは極めて問題だ。説明責任を求めるよりも開示すべきだ」(共産党の山下書記局長)などと反発した。

特に、民主党と維新の党は、国会議決にもとづき、TPP交渉を含む通商交渉での交渉状況や関係資料、交渉結果による影響と対策について、政府は、少なくとも月に1回は国会の所定委員会(秘密会)に報告するとともに、国会が必要な報告や記録提出を求めた場合は国会に適切に対応することなどを定めた「国民経済及び国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある通商に係る交渉に関する情報の提供の促進に関する法律案」を、4月24日に共同で衆議院に再提出している。

 

こうした野党側の反発に、西村副大臣は、12日の参議院外務防衛委員会で「どのような情報提供の工夫ができるか、引き続き検討するのが真意だった」と釈明したうえで、「私の発言で誤解、混乱が生じた。誤った印象を与えたことは深く反省している」と謝罪した。また、12日の衆議院農林水産委員会理事会でも情報開示をめぐる混乱について陳謝した。

野党側は「西村氏が発言を撤回した経緯と趣旨について納得できる説明がないと、通常の審議には応じられない」と、関連委員会での法案審議には応じない構えをみせたため、与党も、13日の衆議院農林水産委員会でTPPをテーマにした一般質疑を計5時間行うことで同意した。

 

 民主党など野党は、引く続き西村副大臣の真意を質していく方針だ。14日の衆議院農林水産委員会で、全国農業協同組合中央会(JA全中)の中央会制度を廃止や地域農協の経営状態などを監査してきた監査・指導権限を撤廃し、法施行から3年半後にはJA全中を特別認可法人から一般社団法人に完全移行することなどを柱とする「農協法等改正案」が審議入りする予定となっている。与党は、5月末~6月上旬に衆議院通過・参議院審議入りし、通常国会中に成立させる方針だが、西村副大臣の発言撤回への追及が続けば、農協法等改正案の審議にも影響を及ぼす可能性もある。

 また、政府提出の農協法等改正案について、民主党や維新の党などが、安倍総理が主張するほどの大改革には値しないなどと批判している。民主党は、国や自治体に「農協運営の自主性」を尊重するよう義務付けるとともに、都道府県をまたいだ農協などの設立も可能にする対案骨子をまとめた。党内調整を進め、近く国会に提出するという。また、維新の党も独自の対案づくりを進めている。

 

 

【安倍総理の記者会見、重要法案の審議に注目を】

12日に労働者派遣法改正案が審議入りし、14日には農協法等改正案が審議入り予定で、いよいよ与野党対決型の重要法案をめぐっての本格論戦がスタートする。来週20日には、通常国会初となる党首討論が開かれる予定だ。今回の党首討論では、安倍総理に民主党の岡田代表、維新の党の江田代表、共産党の志位委員長が挑む。

 

 14日の臨時閣議で安全保障関連法案が決定され、その後、安倍総理が記者会見を行って、国民に向けて安全保障法制の整備意義や法案内容などを説明する。安倍総理がどのように説明するのかについて、注目しておきたい。

また、今後、重要法案をめぐって与野党攻防が繰りひろげられることとなり、展開次第では荒れることも予想される。相次いで審議入りしている重要法案について、どのような論点・切り口で質疑を行い、どのような答弁を引き出していくのだろうか。各党の政策・主張やスタンス、野党提出の対案内容なども抑えながら、それぞれの国会論戦をチェックしておいたほうがいいだろう。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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