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中小企業がICTを活用できていない一番の問題点とは?

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 ビジネスにおいてICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)が必要不可欠になった昨今、会社に導入したはいいものの全く使いこなすことができていないと困っている経営者も少なくありません。

 では、どのようにすれば課題をクリアして、ICTを使いこなすことができるのか?
 今回、新刊JPは『業績をあげるとっておきのICT活用術』(セルバ出版/刊)の著者である五島一輝さんにお話を伺いました。この本は中小企業向けにICTの活用方法が紹介された一冊で、ICTを使った経営や業務の効率化について説明をしています。
 五島さんへのインタビュー、今回は前編です。
(新刊JP編集部)

■言いなりになるから失敗する「ICT導入」

――『業績をあげるとっておきのICT活用術』はICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を導入しても業績があがらない中小企業向けに書いた、ICT活用の入門書ですが、本書を執筆した経緯を教えていただけますか?

五島さん(以下敬称略):私自身、IT業界に長くいるのですが、ICTの知識がないためにおかしな選択をしてしまっている中小企業が多いように思ったんですね。他のもので置き換えると、自動車を買うべきなのに自転車を買ってしまったり、軽自動車でいいのに、ベンツを買ってしまったり、というようなイメージです。
前者の場合、「とにかく安く」と求める中小企業側に、とにかく買ってもらいたいベンダーが安易に迎合してしまい、結局役に立たないものを購入してしまう。「安物買いの銭失い」というわけです。後者の場合は、ベンダー側も悪意があって余計なものを買わせているというより、「もしかしたら相手が困るかも」と過剰に心配して、オーバースペック(過剰仕様)のものを提案していることがよくあります。

――なるほど。

五島:一方、中小企業側も知識がないので、疑問に感じていたとしても、結局それを受け入れてしまう。その結果、役に立たない、あるいは、まったく使いこなせいということになる。そういった背景があったので、何か力になればというところで本書を書いたのです。

――去年、Windows XPのサポートが切れましたが、いまだに使い続けている人もいます。ICTにまつわる知識がないとそういった変化に対応できにくくなりますよね。

五島:XPを使い続けていて、セキュリティで問題が起きたら取り返しがつきませんからね。ところが、ただバージョンアップすればいいという話でもありません。これは非常に厄介な問題なんですよ。
使っているソフトがXPじゃないと動かなくなる、そういったことで悩んでいる中小企業が結構あるんです。裏技的な対処法もありますが、必ずうまくいくとは限らない。新しいOSに対応しているソフトを入れるとまた大きな費用がかかる。
これは納得いくものではないですよね。資金的に余裕があれば渋々でもやるのでしょうけど、あまり余裕がないと後回しになってしまいます。

――中小企業がICTを活用できていない一番の問題はどこにあると思いますか?

五島:一つだけ挙げるとすれば、経営者が「俺はITが分からない」ということで、ベンダーや社員に丸投げしてしまっているところでしょう。そうなると、経営者にとってしっくりこないICTが導入されることがあり、使い始めると違和感を覚えるということがよくあるんですね。
どういうことかというと、経営者と社員はITに対して少し違った見方をするんです。社員は自分たちの業務効率が上がるようにするという視点ですが、経営者は利益という点に着目しています。
丸投げすると、ある社員の仕事は楽になったけど、それで終わり、場合によっては他の社員の仕事が増えてしまったなど、利益に結びついていないということになる。結局、個別最適なんですね。現場で働いている社員に経営者の考えを理解することは難しいですし、会社全体を俯瞰する全体最適の観点を持つことも難しい。ですから、まずは経営者側が無関心から抜け出すことが大事なんです。

――人に任せるのではなく、経営者が求めることを具体的に示すことで関わっていくこと必要があるということですね。

五島:そうですね。社内のいろいろな人の意見を聞くことは大事ですが、それぞれ、自分の担当としている持ち場に一番興味を持つことは当たり前ですよね。だから、社員に、会社全体のことを考えろというのは難しいし、現実的ではないんですよ。経営者の想いは、やはり経営者でないとわかりません。

――この「ICT」はもともと「IT」から派生した言葉ですが、特別な意味があるのですか?

五島:「ICT」は業界がつくり出した言葉です。「IT」においてもコミュニケーションが重要視されることが多くなり、「IT」の進化版と感じてもらうために打ち出した用語です。「IT」と何が違うかというと、実質的に差はないと言っていいでしょう。

――ICTを使いこなせていない企業に共通する特徴はありますか?

五島:いくつかありますが、代表的なのがコストの観点だけで判断してしまうことですね。「ICT導入にいくらかけたら、これだけコストが下がる」ということだけ考えて進めていくと上手くいきません。ICTだけでコスト削減できるわけではないですから。それを使いこなす人たちの意識が大切です。
日本の場合、現場の担当者たちは実は優秀な場合が多い。自ら工夫もできます。ただ、ソフトウェアに融通が利かないと、工夫の余地がなくなり、「もっと効率を上げていこう」という気概までなくなっていくんです。このあたりにどう配慮するかで、導入効果は結構違ってきます。
どうしてもICT単独で効果を求めがちになりますが、導入の際は人が使うツールであることを意識しておくべきです。そうしないと、狙った効果を出せないままになってしまいます。

――企業において特に重要視すべきがセキュリティ面です。ウイルス対策ソフトなどを入れながら情報漏洩に努めないといけない部分ですが、中小企業に取り巻く環境はいかがですか?

五島:中小企業の場合、セキュリティに関する知識は、大抵の場合高くない。ウイルス対策ソフトを入れているものの、あるパソコンのウイルスの定義ファイルが更新されていなかったとか、OSだけではなく、OfficeやAcrobatなども含めたセキュリティアップデートの状況を全社的には把握できていないとか、ということはよくあります。このように、ウイルスなどに対する感染対策も十分とは言えない企業もまだまだあります。
ただ、より深刻なのは情報漏洩への対策です。故意、過失を問わず、対策が出来ていない企業が多い。経営者としては社員を信じるというところになるのでしょうけど、例えば電車の中にノートパソコンを置き忘れたなど、過失で漏洩してしまうこともあります。
だから、社内からデータを持ち出す場合は、暗号化などの手続きをきちんと踏まないと持ち出せないようにするなどして、漏洩リスクを低減するようにしておく。そうすることが、取引先だけではなく、社員の為でもあるということに、是非、気付いてほしいですね。

(後編へ続く)


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