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『男をこじらせる前に』湯山玲子さんインタビュー 「文化にハマって”競争”を飼い慣らそう!」

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映画・音楽・食・ファッションなどを題材に雑誌・書籍のコラム執筆やテレビでのコメンテーターとして活躍している湯山玲子さん。『女装する女』(新潮新書)や『四十路越え!』(角川文庫)など、一貫して女性の生き方に関しての考察を続けているほか、大音量でクラシック音楽を聴く『爆クラ』や、自ら寿司を握る『美人寿司』といったイベントも主宰しています。

そんな湯山さんが、最新刊『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(角川書店)では、これまで遡上に乗せてきた女子と対となる男性について正面から取り上げ、その生態や問題点を喝破する内容が話題に。「マツコ・デラックスはなぜ何を言っても許されるのか」といったことから「日本男性がなぜマザコンなのか」といったことまで、さまざまな事象を巡っています。

ここでは、そんな湯山さんに『男をこじらせる前に』についてのインタビューを敢行。特に、高度成長期からバブル期以降のロスジェネ世代が、どのようにすれば“競争”する事と向き合っていけばいいのか、お聞きすることができました。

「努力せずに“子ども”でいる国力が日本にはもうない」

ーー今回、湯山さんにお話しをお聞きしようと思ったのは、『男をこじらせる前に』を拝読して、今の20代から30代のインターネット世代の男性をどう見ていらっしゃるのかな、と感じたからなんです。その世代は『ガジェット通信』の読者とも重なります。

湯山玲子さん(以下・湯山):その世代はこの本の対象の一つとして想定していました。とはいえ、インターネットを中心としたコミュニケーションの大変化はどの世代も受けていて、非常に影響されているんですけどね。しかし、それが10代の時から当たり前にあった世代だと、一番目につくことが、「ずっと子どもでいたい」という欲望ですね。
要するに、生身の他者と関わらなくても、ネットで事足りる。となると、現実の「理不尽」を避けて通れるわけで、それは大人になる機会がない、ということです。それでもいいんですけれど、それを持たせるだけの国力がもう日本にはない。そこが一番の問題です。

ーーとはいえ、1970年代にアメリカで「アダルトチルドレン」の問題が顕在化していて、日本でも90年代には既に多くの研究も出されています。ここ数年の課題でもなく、日本特有ということでもないですよね。

湯山:私は1960年生まれですけれど、ずっと子どもでいたいために戦ってきたという感覚もあるんですよ。ましてや私は女で、子どものお母さんになる道が歴然と決められていて、それは男と違って、青臭い、子どもっぽいことを許され無い立場ですから。「子ども」を死守するためには財力も必要だし、世間に何も言わせないための仕事や地位が必要だった。非常に特権的だし、そのための教養も要りました。
でも今は、そんな努力をしないでも、ずっと子どものままでいられる。今の先進国は消費社会だから、ラクでトクなサービスがあふれていて、ずっと家に引きこもっていてけっこうそれでも刺激的。それだけ簡単ならば大人にならずに「子ども」のままでいるよね、と。

ーー「子ども」であることを勝ち取るのではなく、与えられているというお話ですね。

湯山:その通りです。私達の世代だと、現実もそんなに”情報化”されてなかった。パンクやサーフ文化、ディスコなど今までに日本になかった”初めて”も多かったので、ファンタジーとの両輪を模索できたんです。それが今では、現実をあまりにも早く失望しちゃっているように感じます。

ーーご著書の中に、「マザコン上等で生きるしかない」という章があります。「子ども」でいられるということは、母親の存在が強いということでもありますよね。

湯山:もちろん。本にも詳しく書いていますが、結婚したとたんに妻を女として見られなくなる夫が”当たり前”の日本では、母親の恋人は息子になります。近親相姦までは生きませんけど、精神的にはそうだ、と私の周囲の母親友人もそう言っている。でも、私自身はマザコン男が好きかと言えば「やめてくれ」と思いますよ(笑)。

ーー仮に結婚して別の家で住んでいても、理由をつけて夫の母親がやって来る……ということもあります。

湯山:仮に男女がパートナーになるとして、女は今は母娘膠着が激しいといいつつも、それがきちんと意識されている。しかし、男は自分にその自覚が無い。無いので、母親からの料理の差し入れを受け取り続ける。女はその介入が死ぬほど嫌いなのに、それがわからない。女がファザコンでもそこまでいかない。私は(ジャズミュージシャンの)菊地成孔君にファザコンだと言われ続けているけれど、はっきりと人間として独立しているよね。

ーーそれは、男性が「自立」していないという話に思います。どうして「マザコン」のままになってしまうのでしょう?

湯山:戦後の高度成長期に核家族になって、男は外で働き、女は家を守るという性的役割分担のもと、妻が第二のお母さんになってしまうか、そして、これが最も大きい要因なのだろうけど、仕事にあまりにもエネルギーを吸い取られ、妻と努力してエロス的関係を持とうとする努力を男が一切しなかった。これ、実は最近まで、続いています。
イタリア男のマザコンは有名ですが、それでも、ビヤ樽お腹になった妻にセクシー下着をブレゼントする夫が、母から息子のアモーレの重力を軽くしている。キリスト教圏の夫婦のセックスは、結婚の義務。ですが、日本にはそのモラルは無いんですよ。
女は更年期前、アラフォーぐらいから、ムラムラと性欲が上がってくる。男子中学生くらいだと思った方がいい(笑)。でも、男は家族になるとセックスをしなくなっちゃう。そうなった時に、女の愛情はぜんぶ自分の息子に行っちゃうんです。

ーーちょっと心がザワザワするお話ですね。

湯山:もちろんほんとうにセックスはしないけれど、支配して自分の男として育てたいという欲望が出る。それをやられるとおしまいだよね。

デキる女はパートナーの条件を下げている!?

ーーもうひとつ、気になったのは「バカな男」の株が急上昇しているというくだりです。賢くて頼れる男が好きな女性が多いように感じますが……。

湯山:仕事もできて性格もよくて、しかも社会のことを考えている「こじらせていない」女は、30代の男に大したことを求めていないですよ(笑)。収入や能力といったスペックはあまり関係なくなる。パートナーには、いつもほがらかで常に上機嫌でいてくれさえすればいいんです。バカだから仕事ができないだろうけれど、隣でニコニコして寝てくれればいい。そこまで女は条件を下げているんです(笑)。

ーー逆に、絶対に必要な要件ってあるのでしょうか。

湯山:とにかく人を愛する力が強いことですね。今の男は「俺だけを愛して」という愛され要求はあるけれど、愛を与えることをしない。理想の人間関係は、愛し愛されることですよ。それが分からなくなっているのは、母親の愛に取り込まれてしまっていたり、「男らしさ」に囚われてしまっているからです。

ーーあらゆる意味において、「男をこじらせる」というのは根深いんですね……。

湯山:「こじらせる」という言葉は 病気が治らなくなっちゃうことじゃないですか。中村うさぎさんが『女という病』という本を書いたけれど、どこにも実態のないイメージとしての男らしさや女らしさに取り込まれていて、自分とのギャップに拘泥しすぎて失敗すると、呪われるように人生がつらくなっていく。「あなたは男でも女でもなく、人間でしょ」という視点がない。「人として」ということがないんですよね。

日本人男子における「競争」

ーー特に自分のような30代のロスジェネ世代だと、進学や就職でつまずいて連敗続きで、何かを与える余地がないという人も多いと思うんです。

湯山:未だに「男は強く、女を守る存在」という意識だときついよね。高度成長期の「いい大学を出て、いい企業に入って出世する」といった物語は既に崩壊していて、自分でも「おかしい」と思っているのに、そこに乗っていないと、自分から進んでコンプレックスの沼に陥って、どんどん自罰していく。

ーー「競争」することに男がいかに囚われているか、ご著書では強調されています。

湯山:やっぱり男の子にとっては「競争」が血肉化されているので根深いですよ。

ーーでも、多くの男性は、自分が「競争」しているという意識はないのではないでしょうか? 何かを争うことがカッコ悪いと考える向きもあります。

湯山:そう、ハナの孔を膨らませて言うぐらいだから、競争は相当に意識されているんじゃないかな(笑)。競争から降りたら、上機嫌でいれば良いのに、競争勝者にもの凄く悪口を言いますもんね。ちなみに、日本人の男は「競争」が心底嫌いですよ。「勝っても負けても同じ人間じゃん!」と思えず敗北感にまみれてしまう。実力対実力という場面が嫌い。だから、みんな一緒の平等な条件下で、競わせる大学の共通一次入試みたいなシステムが生まれるわけです。女に負けるのも、基本大嫌い。企業や組織で女が出世できないのもそれが大きいですよ。

ーーなるほど。受験や就職活動で「競争」した気になっているんですね。

湯山:競争プレイだよね。本当の競争は、それこそ、ルール無しの結果オーライ。切った張ったの勝負じゃないですね。

「『YouTube』でクラシック通に一ヶ月でなれる」

ーー受験や就職が成功や失敗の体験になっていることも含めて、男性が「競争」から逃れることはできるのでしょうか?

湯山:例えば私の内部にあるミソジニー、女嫌いは根深くて簡単には取り出せないけれど、それを客観視して、抑圧ではなく生かしていくことができる方法を知っているんです。それと同じ。否定するのではなく、「俺の中に”競争”があるよね」というダークサイドを可愛がる方法を知った方がいい。それには競争する快感ではなく、愛して愛されることを経験した方がいい。何も恋愛だけではなくて、「ありがとう」とか感謝を惜しみなく与える。それで、ほがらかに自立することです。

ーーご著書では、そういった「競争」と向き合うために文化的なものに触れる、というお話もされています。でも、そういった趣味が何もないという人も多いのでは、と思います。

湯山:それはもう、今すぐに始めてください。文化系は人を助けるよ。どうせ心を預けて追求していくのならば、先人が良きものや美しいものを積み上げてきた体系のあることがいい。そういった歴史はリスペクトしないとダメだし、一生をかけても価値のあるものですよ。

ーー湯山さんはクラシック音楽を爆音で聴く『爆クラ』といったイベントもやっていらっしゃいますが、それってもともと知識や素養がおありだったからなのではないでしょうか。30代でお金も知識も体力もないような男子は一体どうすれば……。

湯山:私達の世代だと、いい音楽に出会うにはレコード屋に通わなければならなかったものが、今は『YouTube』で聴けるわけです。クラシックの「通」になりたければ、はっきり言って、一ヶ月でなれます。
とにかくやると決めれば、とことん情報を被せていって、嫌いなものの輪郭を自覚し、好きなものを捕まえにいく。その個人の感覚に、歴史的な知識や時代の批評も照らし合わせていく。それはもの凄い意思と筋力が必要だけど、文化的な知的な喜びとはそういうものなんです。あとは、インプットだけでなくて人と会う場を作ってアウトプットすることで脳に定着する。男友達でも女友達でも、場所は居酒屋でもいいから会って話をすることです。

ーーネットではなく、直接人と会う機会を自分で作りましょう、ということですね。

湯山:そうですね。それは是非やって頂きたい。30代の男に危機感を持ってほしいのは、「アナタ、お母さんが死んじゃったらどうやって生きていけばいいの?」という話です。お金がないのも大変だけど、一番マズイのは他者との豊かな人間関係がないこと。女はカフェなどで会って、愚痴を言い合ったりする友人関係ネットワークがあるけれど、男にはない人も多い。もっとお友達と会って遊んで、与えたり与えられたりすることを知った方がいいです。それが「競争」を克服して飼いならすことにもなりますから。

ーー私自身も、もっと誰かと会って話すように心がけます。ありがとうございました!

最新イベント情報

湯山玲子×津田大介「『男』それは、いまここにある危機。――あなたの『男』は、こじれてる!?  男が無いことにしてる『生き方問題』を、徹底的に語ります。」 @yuyamareiko @tsuda

日時:2015年5月8日(金)
   19:00~21:00
会場:ゲンロンカフェ
チケット:前売券・2600円/当日券3100円(1ドリンク付)
     ※ゲンロン友の会特典・割引などあり
URL: http://peatix.com/event/84256 [リンク]

湯山玲子公式サイト
http://yuyamareiko.blogspot.jp/ [リンク]

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記者:

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: http://yaplog.jp/parsleymood/

TwitterID: parsleymood

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