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『龍三と七人の子分たち』北野武監督インタビュー「寂しさや悲しさがあって笑いは倍増する」

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オレオレ詐欺で騙した相手は元・ヤクザの組長だった! 北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』が4月25日より大ヒット上映中です。

本作は、金も居場所も失うも、普通のジジイになれるはずもなく毎日くすぶっていた元・ヤクザ達が、若い者に勝手な真似はさせられねぇと、昔の仲間を呼び寄せ、世直しに立ち上がるというコメディ。

龍三親分役に藤竜也(73)、七人の子分たちに、こちらも北野作品初出演となる近藤正臣(72)、『アウトレイジ ビヨンド』に続く出演となる中尾彬(72)、ほか小野寺昭(71)、品川徹(78)、樋浦勉(71)、伊藤幸純(72)、吉澤健(68)が登場。平均年齢72歳(撮影当時)の超がつくほどの豪華ベテラン俳優陣たちが、さまざまな逆境にも負けずに暴れまわる“ジジイ”たちを熱演します。

今回ガジェット通信では北野武監督にインタビューを公開。こんな面白い話どうやって思いついたんですか!? など、色々とお話を伺ってきました。

(撮影:wosa)

―本作、拝見させていただいたのですが、オレオレ詐欺で騙した相手が元ヤクザとか、引退した元ヤクザのおじいちゃんが今は寂しく暮らしているとか、あり得ないほど面白いのに、今の時代あり得そうな描写の連続にゲラゲラ笑ってしまいました。

北野武:俺の本職はお笑いだからね。『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』って暴力映画が続いていたから、今度は“ベタ”な誰でも笑える作品を作りたかったんだよね。それで、テレビのコメディではちゃんとした役者は使っていないから、映画では芸人を使うのをやめようと。本人達はコメディだと思っていなくて真剣にやっているのに、それが可笑しいというのを撮りたかったから、役者さんには「コメディだと思わないでください」ってお願いしていて、それが上手くいって良かったね。

―そもそも、本作の発想はどういったきっかけで生まれたのですか?

北野武:「ヤクザのじじいが団結したら手のつけようが無い」という、この映画の基になった話は何年か前に書いていて。「“俺たちに明日は無い”ってもうすぐ死ぬからな」というのは漫談のネタでもやってたんだよね。今の高齢化社会とかオレオレ詐欺とか、意識して作ったわけじゃないんだけど、たまたま時代にうまくハマったなって思ったね。

―以前からあったアイデアを映画化したと。拳銃が大好きな“早撃ちのマック”や、トイレで敵を襲う“はばかりのモキチ”などそれぞれのキャラクターもハンパ無く個性的でした。

北野武:この映画のキャラクターとか設定は、ほとんど撮りたいシーンからの逆算で作ったんだよね。例えば、ジジイの適役の京浜連合の西っていうのがいつもダーツをやっているんだけど、そこにジジイがやってきて五寸釘を投げて“ナインダーツ”(ハイスコアの難しい技)をやるっていうシーンを撮りたかったから「五寸釘のヒデ」ってキャラにした。

―なるほど、撮りたいシーンが先に決まっていたんですね。

北野武:そう。龍三の左手の指が3本しか無いというのも、最後の方に出て来るオチの為に最初に説明させるっていう。それぞれのキャラクターを説明する為のネタはたくさん撮ったんだけど、全部入れると3時間を越えちゃうから結構カットした。でも出来上がった映画を見ると2時間あっという間でもっと長くても大丈夫だったかなって思ったね。

―この映画を観た方は絶対にその未公開シーンを観たがると思います! ぜひDVD特典などにしていただきたい……。本当に登場人物が魅力的なんですよね。

北野武:本人たちは気付いていないけど、周りからすると寂しいジイさんなわけじゃない。そういう寂しさとか悲しさがあった方が笑いって倍増するんだよね。葬式の時に限って思い出し笑いしちゃうみたいなさ(笑)。


―“龍三と七人の子分たち”が平均年齢73歳ということで、他作品と違う苦労はありましたか?

北野武:みんなそれぞれ長いキャリアがあるから芝居が出来るっていうのは分かってたんだけど、やっぱり体力的な不安はあったよね。だから今回初めて“ホン読み”(脚本の読み合わせ)をしたんだよね。その時に、一人が「補聴器してるんですよ」って見せてきて、そうしたら別の人も「僕もしてるんですよ」って補聴器の自慢がはじまった(笑)。

―補聴器自慢ってなかなか無いですね(笑)。

北野武:後は日差しが強かったりすると、おじいちゃん達大丈夫かなって心配になったり。とにかく途中で死なない様に願ってた(笑)。舞台挨拶黙祷からはじまるのはやだなって思ってたね。あと、衣裳さんが困ってたよ。みんなのおしゃべりが盛り上がっちゃってなかなか衣裳を着てくれないんだって。年金の話とか、尿切れが悪いとか延々としゃべってる(笑)。あと衣裳着たまま帰っちゃったりね。

―皆さん、とっても仲良しで(笑)。役者人生数十年ですものね。

北野武:そんなおじいちゃんならではの話もありながら、役者魂を感じる瞬間も多かった。今の若い人と気合いが違うんだよね。藤さんも撮影がはじまったら一回も台本見ない、全部覚えて来ているから。品川さんも「おひけえなすって」から始まる長セリフがあるんだけど、映画ではカット割しているけど、実際は途切れずスラスラ言えたしね。

―そんな超ベテランの皆さんの中、敵役の西を演じた安田顕さんもとても印象的でした。

北野武:色々な作品で活躍している人だとは聞いてたんだけど、演技を観た事が無くて。でも、やってもらったらすごくハマってたね。「ちょっと怒鳴りを少なく」とか、多少お願いはしたんだけど意図をくみ取って演じてくれた。

―ジイさんたちと西たちの戦いはもちろん、最後まで結末が読めない展開にハラハラもしました。特にバスのシーンは大迫力でしたね。

北野武:結構迫力あったでしょ。実際すごいスピードで走ったから皆必死になってしがみついてたよね。藤さんに「指が3本に見える様に2本隠しながらつかまってたから大変でしたよ」って言われたんだけど、「中までは見えないですよ」って言ったらガックリしてたね(笑)。

―バスのシーンのロケ地もよく見つかりましたね。バスが商店街をなぎ倒し走るってすごいです!

北野武:バスが商店街をギリギリで走るっていう難しいシーンだから、最初はCGにしようかなとも思ったけど、CGだと余計にめちゃくちゃな事をしたくなるから嫌いなんだよね、やっぱりアナログが一番。実際の商店街を借りて、美術さんがセットを作ってくれて、それを毎回壊すと。

元々書いていた話にジジイが暴走族のガキと喧嘩するんだけど、「シルバーパス」でバスが無料だからバスで追いかけるというのがあったから、バスのシーンは絶対だったんだよね。

―ではバスのシーンが一番のお気に入りですか?

北野武:バスのシーンはもちろん、品川さんの「おひけえなすって」は好きだね。台本も自分で書いてるし、映像も自分で編集したのに、何度も同じ所で笑っちゃったね。普段は自分の漫才とか何度か見ると面白くないんだけど。


―本作、映画ですからジイさんたちが実際に戦っているわけでは無いのに「頑張れー!」って応援したくなっちゃうんですよね。それほどの皆さんの気合いを感じました。

北野武:やっぱり役者にとって映画って特別なんだろうね。みんなちゃんと緊張しているんですよ。品川さんは普段善人の役ばかりだから、撮影終わった後「これで俺はイメージチェンジができるかな」って喜んでいたらしいんだけど、今からイメージチェンジするってね(笑)。

―ちなみに、本作のベースとなった話は昔からあったとおっしゃっていましたが、映画を撮るにあたって詐欺について調べたりしましたか?

北野武:まあ、詐欺って本当に色々あるからね。一番笑ったのはフランスの「コマンドール」詐欺だね。お金を払うと勲章がもらえるっていう。俺がもらった事あるから、浅草キッドのところに「武さんはいくら払ったんですか?」って電話が来たんだって。金払って勲章もらえるなんておかしいと思わないのかね(笑)。最近は本当色んな詐欺があるよね、スカスカのおせちとかさ、昔は無かったよ。まあ、藤さんも今回のオファーに「出してやる詐欺」かと思ったらしいけどね。映画だって、その時間だけ観客を違う世界に連れて行くって詐欺みたいなもんかもね、それは不愉快にならないってだけでさ。

―今日は素晴らしいお話をどうもありがとうございました!

『龍三と七人の子分たち』公式サイト
http://www.ryuzo7.jp/

(c)2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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