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最強リーダーが明かす マイナス思考の克服法

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 部下を持ったり、チームリーダーをしたことのある人ならば、メンバーをまとめて最大限の成果を出す難しさを知っているはずです。
 どんなに精鋭揃いでも、リーダーの言動や行動一つで、チームを最高にも最低にもしてしまうというのが、マネジメントの怖さであり醍醐味。
 では、大きな成果を出しているリーダーはどんなマネジメントをしているのでしょうか。

 帝京大学ラグビー部を率いて、現在全国大学選手権6連覇中の岩出雅之さんは、著書『負けない作法』(森吉弘氏との共著、集英社/刊)で、最強チームを作り上げたマネジメントの哲学を明かしています。
 今回は岩出さん本人にインタビュー。自身のマネジメントについてお話をうかがいました。

――岩出監督の著書『負けない作法』(森吉弘氏との共著)についてお話をうかがえればと思います。岩出監督といえば、帝京大学ラグビー部を率いて、全国大学ラグビー選手権六連覇を達成、という偉業が際立ちます。この本に書かれている内容は、普段から岩出さんが学生に指導していることなのでしょうか。

岩出:はい。そうです。日常的に、寮生活においても、練習中であっても指導していることです。あまりにも基本的なことばかりで、初めはこんなことを本に書いていいのかなと心配になったほどです(笑)。
しかし、周囲の方々のお話を聞いていると、この基本を改めてまとめることも大切だとわかってきました。私にとっては日常的に当たり前のように行っていることですが、多くの学生、若いビジネスマンには、それが習慣になるまで意識して行動しなければならない時間が必要です。
彼らが自分で行動できるように、なるべくわかりやすく説明することを意識しました。

――「作法0」の、「自分をニュートラルに保つ基本」は、勝負で実力を発揮するためにとても大事なことですが、学生に浸透させるのはなかなか難しいのではないかとも思いました。この基本を学生に行き渡らせるために、どんな指導をされていますか?

岩出:帝京大学ラグビー部は、全部員が共同で寮生活を送っています。日常生活の中で、先輩が後輩に自分の姿を見せることで、少しずつできるようになっていきますね。
本書を読んでいただければわかりますが、これらの作法は、「スポーツ選手だから必要」というものではありません。基本中の基本である日常生活の送り方です。だから、何も特別なことではありません。  
しかし、それがなかなか続けられない……。
当初、この基本を意識して始めた頃は、私も相当に口を酸っぱくして叱ったりしていましたが、今はほとんど叱ることはありませんね。日常生活をともに送る中で、先輩の真摯な姿を常に目にしていくことで、後輩たちは自分もそうしようと自然に変わっていきます。

――本書の「負けない作法」のキーワードとして「二軸思考」という考え方をあげていらっしゃいます。この「二軸思考」について、詳しく教えていただければと思います。

岩出:両極にある2つの軸を意識し、常にその真ん中に立ち続けようということです。
まず前提として、自分にとってのベストな状態とは何であるのか、ということを理解しなければなりません。多くの方が、成功体験を元に、勝利したり、あるいは物事がうまくいったりした時の状態を、ベストだと認識しているでしょう。しかし、私はそうは考えません。
ベストな状態とは、“良くも悪くもない状態”、つまりニュートラルな状態のことです。
ラグビーを例に挙げましょう。
ラグビーで勝利が続き、チームに楽観ムードが漂ってくると、私は非常に気になります。なぜなら油断が生まれるから。油断が生まれると、プレーが雑になりミスも生まれやすくなります。そして、ケガにもつながる可能性が高まります。
一方で、負けが続き、チームが悲観ムードに包まれると、今度はチーム全体が深刻になりすぎてしまうため、この場合も私は用心します。深刻になると、頭が回らなくなり、「自分で考える」「自分で決める」といった、ラグビーにとっては非常に大切な姿勢が失われ、自分たちの本来の実力が出せなくなってしまうからです。
つまり、勝利にも敗北にも、本来の自分を見失ってしまう原因が潜んでいるのです。勝ったからそれがベストだとは言えません。
大切なのは、たとえば、最高と最悪、あるいはAという価値観とBという価値観、または悲観と楽観、という二極の軸を意識して、その真ん中に立とうとすることです。

――勝負に限らず、何かに取り組んでいる最中に「失敗するかもしれない」「もうダメだ」と弱気に捉えられてしまうことがあります。こういった時の対処法がありましたら教えていただけませんか。

岩出:まず、なぜそんな気持ちになっているのか、考えたことがありますか?
「失敗するかもしれない」「もうダメだ」という感情は、不安感や恐怖感と言われるものです。そしてその正体は、変えることができない過去、あるいはまだ起こらない未来に、心がとらわれていることから沸き上がる感情です。
不安や恐怖はそれなりの強さをもって、私たちの心を支配してしまいますが、「なぜ」そんな感情が沸き上がったのか、「何が」そう思わせているのか、その理由を探す方に心を向けてみるといいと思います。

――また、「大一番に強い人」とそうでない人がいますよね。「ここ一番」という勝負に必ず勝つ人は、どこが違うのでしょうか。

岩出:気迫を自分の力でつくりだせているかどうか、ということですね。
気迫とは、気の迫力のことです。でも、興奮とは違います。感情的になって盛り上がることではありません。理性でつくり出すものです。
私は、行動は「ハンドル=論理」、「エンジン=心理」、「ガソリン=感情」で成り立つと考えています。気迫とは、ガソリンだけでできるものではなく、ハンドル操作を誤らず、エンジンに直接作用するも
のだと思います。

――本書の内容は、大学ラグビー界の覇者を指導されている方とは思えないほど穏やかです。試合中であっても、エキサイトしたりすることはないですか?

岩出:ほとんどなくなりましたね。本書の内容である「負けない作法」に通じますが、勝負とは、相手との相関関係で決まることです。勝ちや負けといった結果に心がとらわれてしまうと、本来の実力を発揮することができません。監督である私がそんな状態では、チームは勝てませんよね(笑)。
それでも、試合をしていたら、特に厳しい試合の場合、「勝ちたい」という気持ちが沸き上がってくることもあります。でもそんなとき、自分のマインドを見つめ直して、選手に「焦らなくていいよ」と言えるかどうか、自分自身に確認しています。
私自身は、最大のピンチのときにいつでも笑える自分を見つけたいと思っています。

――自チームが苦境に立った時、選手たちにどんなアドバイスをしていますか?

岩出:あえて楽観的な声かけをします。
二軸思考でいえば、選手たちは悲観的になっています。悲観に偏ると、チームが深刻になってしまい、あらゆるものがうまく回らなくなってきます。ニュートラルな状態、普段の自分たちに戻せるように、バランスを取れるような声かけを意識します。
たとえば、「こんな緊張した状態でウォーミングアップなどしたことないだろう?」とか「観客の顔を見て来い」など、そのときどきに合わせて変わります。
(後編につづく)


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