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ベル・アンド・セバスチャン『ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダンス』インタビュー

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2010年発表の『ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~』に続く、ニュー・アルバム『ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダンス』を日本先行で1月にリリースした“ベルセバ”ことベル・アンド・セバスチャン。60年代の英仏米のポップス、70年代のソウルやディスコ、80年代のポスト・パンクをグラスゴー出身のバンドらしい親しみやすいキャッチーなメロディで奏でる彼らの新作はいつになくダンサンブルな仕上がりに。またしても最高なアルバムとなったわけだが、その躍動感あふれるサウンドはどのようにして生まれたのだろうか。2月に行われた「Hostess Club Weekender」の出演直前にメンバーのサラ・マーティンとボビー・ギルディアが語ってくれた。

──約4年半ぶりのアルバムとなりますが、その間にもスティーヴィー・ジャクソンが12年にソロ・アルバム『(I Can’t Get No) Stevie Jackson』をリリースしたり、スチュワート・マードックが映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』を監督していたりと、あなたたちふたりはどうしていたんでしょう?

サラ「その間にはバンドのツアーも1年半ほどやっていたの。スチュワートの映画も手伝ったり、なんやかんやと忙しい4年半だったかな」

ボビー「ぼくはスティーヴィー、ザ・ヴァセリンズ、ティーンエイジ・ファンクラブのジェリー(ジェラルド・ラヴ)のプロジェクトであるライトシップス、マット・コスタ、ロシアン・レッドのレコーディングやツアーを手伝っていたんだ。あ、もちろんスチュワートの映画もね」

──なるほど、ふたりとも休む暇もなくという感じですが、ベルセバとして新作に臨もうとなったタイミングはいつ頃だったんですか。

サラ「2年近く前に行ったヨーロッパとアメリカを回るツアーを終わらせたら、曲作りに入ろうとはみんなで言っていたの。でも、スチュワートの映画作りが一段落するのを待って、その制作終りから公開を待つまでの間にアルバム作りを始めたのよね。曲作りはそれぞれが進めていたんだけれども、みんなが集まった段階で一気に進んでいった感じかな」

 

──スチュワートの映画はいかがでしたか。

ボビー「ぼくは出演もしているからね(笑)。だから制作の過程も横で見ていたんだけれど、完成試写を見てすごいことを成し遂げたんだなと思ったよ。だって、スチュワートが自腹を切って制作したようなものだからね。よく、がんばったなという気持ちでいっぱいになったよ」

サラ「さらに驚くのはサントラに入れる多くの曲も作って、ヴォーカルのキャスティングも決めてということをすべてスチュワートひとりがやったということ。大きなプロジェクトを背負い込むことを彼は全然怖気づかないの。すごく野心的な人だと思うし。なによりも映画を完成させたということがいちばん感心するわ」

──ふたりから見て、映画が新作になにかしらの影響が与えていると感じますか。

サラ「あれだけ映画に労力を割いた後だから、バンドの活動に戻ってスチュワートはすごく安堵したと思うの。もちろんバンドも大変なんだけれど、映画の制作に必要な時間と苦労に比べたら、慣れていることもあるから彼にとってバンドを動かすということはそんなに大変なことじゃないって、すごく感じていたんじゃないかしら。もちろん、お金さえあればどんな大作だって作ることができる。でも、そうじゃないのよね。彼のように低予算だとその分の苦労もあるわけだし。バンドは自分の思いひとつで能率的に機能させることはできるので、バンドに戻ってきて彼がほっとしている様子というのは私たちも見ていてわかったわ(笑)。」

ボビー「ダム・ダム・ガールズのディー・ディー・ペニーの参加は明らかに映画の影響と言えるね。彼女、実は映画の主役オーディションに受けに来ていて、主役という感じじゃないということで彼女の希望は叶わなかったんだ。年齢が行き過ぎていたというのは冗談だけれど(笑)。でも、スチュワートが彼女のことをすごく気に入ったみたいで、彼女に歌わせたいということで曲を書いたんだ。確かに、それは映画の影響だと言えるかもね」

──では、スチュワートが映画から解放された安堵感が新作のダンサンブルなテイストにつながったのでしょうか。

サラ「スチュワートの頭の中に構想が生まれた時から実際に完成するまで10年間くらいかかっていることを考えると、今回のレコーディングはこれまでよりも比較的にスムーズに終わったと言えるかしらね(笑)。その勢いというのもサウンドに反映されているんじゃないかな。まあ、来年で20周年を迎えるバンドのキャリアがあるから可能だったし、ある程度は確立されているバンドだからというのもあるし。それにレコードを作れば、こうして日本でもリリースされて呼んでもらえるというサイクルが当たり前だと思っていたのがそうじゃないっていうことをスチュワートは思い知ったんじゃないかしら(笑)。特にインディーズの映画だったから一生懸命作っても、その後の展開がまったく見えないという状態を味わったので、自分が音楽の世界で置かれている立場の有り難みも感じていたみたいだし。レコード会社をはじめとする、まわりの人たちが助けてくれて、今のバンドがあるんだなということを、ね。映画って作って、配給に乗せれば普通に英米で公開されるものだって彼は思っていたみたい。そうは問屋が卸さないということを知って、あからさまにショックを受けていたのを私たちも見ていたので、バンドが今まで培ってきたものの大きさとか、それがゆえに得ている今の環境とかに対する感謝の気持ちがアルバムにはあると言えるんじゃないかしら」

ボビー「音楽の世界では当たり前だと思っていることが映画の世界ではそうじゃないってことがわかって、今まで20年近く音楽をやってきたからこその今の自分を見つめ直すきかっけにもなったと思うよ。というか、音楽の世界ではまわりにやってくれる人がいっぱいいるということもわかったんじゃないかな(笑)」

 

 

──映画ではないとすると、このダンサンブルなサウンドはプロデューサーのベン・アレンによるところが大きいということでしょうか。

サラ「ええ、そうだと思うわ」

ボビー「ほとんどというか、ほぼ全曲そうだよね。彼はぼくらのアルバムに自分のハンコを押したかのように彼らしさが出ていると思う」

──また、これまで曲を書きためてからアルバム全体を形成していくプロセスだったようですが、今回はツアーの合間などで書いた曲をその都度ごとに磨き上げていったようですね。

サラ「スチュワートに関して言うならば、レコーディングに入ろうという段階でいつもより曲を持っていなかったの。足りないということで、その後にかなりの勢いで曲を書いていったのよね。私は前もってアイデアをけっこう持っていて、3曲くらいは完成していたの。あと2曲くらいあって、もう少し手直ししたいなという状態でレコーディングに入ったんだけれど、考えてみたら1枚のアルバムに私の曲が6曲も入ることはありえないし、そうしたくもなかったし」

ボビー「グラスゴーにあるスタジオである程度は前準備をしておいて、思いついたら作業するというのが身についているから、特にいつものレコーディングと違うということは意識しなかったかな」

──その完成前のマテリアルを持ってアトランタにいるベンのところへ向かったわけですね。

ボビー「そうなんだけど、ベンはぼくらがこんな感じにしたいんだって言うと、それを一旦思いっきり極端な方向へ持っていって、最終的にぼくらと彼で折り合いつけるというやり方をするんだ。え、そこまでやるの!?って、思うことは何度もあったよ(笑)」

サラ「ミキシングの時なんて、最初の1、2時間は誰も入るな!と言って、入れてくれないの(笑)。その段階では口を出せないんだけれど、ある程度出来上がったところで“入ってよし”というメールが届いて、初めて聴かせてもらうの。そこから手直しをお願いすることになるんだけれど、微妙な変化を彼は一切受け付けようとしないのよね。たぶん、彼の辞書には“微妙”という言葉は書かれていないんだと思う(笑)。“ちょっとだけ上げてもらえるかな”と頼んでも、ガン! と上げちゃうし。違いがわからない変え方をしてもしょうがないというのが彼の持論らしくて、その微妙な攻防を繰り返しながら、どこかで折り合いを付けるの。そうそう、この間もベンがツイッターに“頭にくるんだよな、あのバンドのヴォーカルが歌を0.25デシベル上げるとか言いやがって”ってポストしていて、誰のことだろうって笑ってたの」

──スチュワートのことですか(笑)?

サラ「絶対そうに決まってるわ(笑)」

撮影 吉場正和/photo  Masakazu Yoshiba

文 油納将志/text  Masashi Yuno

Belle And Sebastian

『Girls In Peacetime Want To Dance』

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Belle And Sebastian

96年、スチュアート・マードックを中心にスコットランドはグラスゴーにて結 成。インディ・ギター・ポップの流れを汲んだサウンドと珠玉のメロディが生 み出すハーモニーで、唯一無比の地位を確立。数多くの作品をUKチャートに送り込んだ。また、マーキュリー・プライズやブリット・アワードなど数多くの名誉に輝いており、高い評価を得ている。その人気は衰えることなく、現在も多くの人々

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