ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

建築中の家が火災! その費用は誰が負担するの?

DATE:
  • ガジェット通信を≫

建築中の家が火災! その費用は誰が負担するの?(写真:iStock / thinkstock)

2014年9月、東京都多摩市で建築中の6軒の家が立て続けに放火によって全焼するという事件が起こりました。家を建築中の人、これから建てようとしている人のなかには、「もし自分の家がそうなったら、どうなるの…」と不安に感じた人も多いのではないでしょうか。

「平成26年版 消防白書」(総務省消防庁)によると、建物火災の原因は17年間連続して「放火」が第1位。年々減少傾向にあるとはいえ、「放火」が全火災の10.6%を、「放火の疑い」も含めると18.3%を占めるという現状があります。空気の乾燥するこの季節、夜は無人になる建築現場での火災は特に心配です。事前にどうなるか知って、万一の場合に備えましょう。

今回、お話をうかがったのは、マイタウン法律事務所の吉岡津弁護士。一級建築士として建築業界で職務経験を持ち、現在は建築関連の紛争を含め幅広い事件を担当している法律の専門家です。気になる事柄について質問してみました。Q. 建築中の注文住宅が火災や損壊の被害にあったら、再建築・補修の費用は誰が負担するの?

A. 基本的に施工会社が保険金で負担するが、例外も

民法では施工会社(請負業者)が建物を完成する義務があり、完成品を引き渡さないと代金を請求できないという決まりがあります。よって民法においては、火災や損壊などで建物を再建築する必要が生じた場合、施工会社が負担するのが原則となっています。

そのため、施工会社は「建設工事保険」や「火災保険」等に加入し、保険金を再建築費に充当して対処することが一般的。ただし、保険の加入は義務づけられていないので、なかには保険に加入せず、万一の場合は会社の資金で負担して再建築するという会社もあります。これはもちろん資金力がある会社の場合で、そうでない会社であれば、文字通り立ち行かなくなります。

でも、すべてのケースにおいて施工会社が負担するとは限りません。民法は原則ではありますが、「当事者間の合意」があればそれを優先する法則があり、実際には、建築主と施工会社との間で交わされた取り決めが適用されることになります。そしてその取り決めた内容は契約書(約款)に記載することが義務づけられています。

建築主にとっては「施工会社が負担する」と記載されていれば良いのですが、「建築主が負担する。ただし保険が適用される場合はそれを補填する」「双方で協議して決める」という内容のケースもあります。

いずれにしても契約前には十分話し合い、契約締結時に契約書(約款)を細かく確認する必要があります。Q. 地震や洪水などの自然災害の場合は、どうなる?

A. 自然災害は保険でカバーされないことが多く、建築主が負担するケースが多い

施工会社が建築中の建物に掛ける「建設工事保険」は、地震や津波、洪水などの自然災害が補償対象ではないことが一般的です(※注1)。
例えば、工事が8〜9割方進んでいたのに地震や洪水で全壊といった場合、よほど資金力のある施工会社でなければ、再建築する費用の用意は難しく、契約を履行する(家を完成させる)ことが不可能となるのが一般的。そのため、再建築費や補修費は「建築主が負担する」「双方で協議して決める」と契約書(約款)に記載することが多く、建築主が全額(または一部)を負担することになります。

そうした事態を避けるには、建築中の建物に「自然災害も補償するタイプの建設工事保険」「地震特約付きの火災保険」「地震保険」などを掛けておくと安心です(※注2)。ただし、保険に入っても満額が補償されるとは限らないので注意が必要です。

※注1:台風や洪水、土砂崩れなどの自然災害を補償対象にしている保険もある。
※注2:補償が広がる分、保険料は割高になる。保険には施工会社が加入するが、保険料は最終的に建築主の負担となる。Q. 施工会社のミスで再建築や補修が必要となった場合は?

A. 全額施工会社が負担。場合によっては契約解除も

施工会社の過失や管理ミスで火災や建物の損壊、資材の盗難等の被害が生じた場合は、責任は施工会社にあるため、当然、施工会社の負担で再建築や補修をすることになります。

重大な過失があると火災保険が適用されない可能性もあるため、再建築費や補修費を施工会社が捻出できなくなって建物を完成させることができず、債務不履行(契約違反)に陥ることも考えられます。そうした事態になったら、建築主はその契約を解除して前払金などの返金を要求することができ、契約解除による損害も賠償請求することができます。Q. 不可抗力によって引き渡しが遅れた場合、何か補償は受けられる?

A. 基本的には補償はなし

火災や自然災害、第三者による破壊、盗難などの不可抗力によって引き渡しが契約書で定められた期限を過ぎてしまった場合は、どちらかが悪いというわけではないので、「痛み分け」と考えられ、基本的に引き渡しが遅れたことに対する補償はありません。契約書(約款)上も、不可抗力などの正当な理由があれば施工会社は建築主に対して工期の延長を請求できる、と定められることが一般的。ただ、契約書(約款)に、理由が不可抗力であっても何らかの補償の取り決めがあれば、それが適用されます。

引き渡しが遅れると、建築主の家賃支払いが延長したり、仮住まい費用が発生したりしますが、不可抗力が原因の場合には、それらも施工会社が負担することは、基本的にありません。

また、建築主のなかには、「一度壊れた家に住むのは苦痛」「火災で近隣に迷惑を掛けてつらい」など、精神的被害に対しての慰謝料請求を考える人もいますが、これについても、不可抗力が原因の場合、どちらが悪いという話ではないので、慰謝料等は受けられません。会社によっては金一封程度の見舞金を贈るところはあります(仮に、放火の犯人、盗難の犯人が見つけられたのであれば、彼らに損害賠償請求するのが筋です)。

一方、施工会社の過失で引き渡しが遅れた場合は、施工会社が違約金を支払うことが一般的(※注3)。そうした取り決めは契約書(約款)に記載する義務がありますので、事前に確認しましょう。

なお、引き渡し遅延の理由が施工会社の過失であれば、追加家賃や仮住まい費用なども施工会社が負担するのが筋ですが、上記の違約金の定めにより、違約金の計算方法が定められている場合には、当該計算方法で算出された金額以上は請求することができません。

※注3:工事の遅延理由が建築主にある場合(代金の支払い遅延や設計変更等)は、建築主が施工会社に違約金を払わなくてはならないケースもあります。Q. 新築マンションや建売住宅が火災や損壊被害にあったら?

A. 民法上では買主の負担だが、契約解除が可能。ただし契約書への記載は任意なので要注意

「工事請負契約」である注文住宅と異なり、マンションや建売住宅は、「売買契約」という契約形態になります。

民法では売買契約の場合、たとえ自然災害のような不可抗力で引き渡し前の建物が滅失(=修復不能な損壊)したとしても、買主は代金を支払わなければならないし(「危険負担の債権者主義」といいます)、修復が可能な場合であっても、その再建費・補修費は買主が負担することになると思われます(民法では、特定物の引き渡しは、現状における状態での引き渡しで足りることになっているからです)。

つまり民法上は、建物の工事請負契約と売買契約とでは負担する側が全く逆なので、要注意なのです。

ただし、そうなると買主側が一方的に不利になってしまうため、契約書(約款)で、「建物が物理的に住めない状態の場合は、買主は契約を解除できる」「補修費が比較的軽微であれば売主が費用を負担する」等の取り決めを交わすのが一般的。宅建協会が作成している標準約款(約款の見本)にもそれらが記載され、多くの不動産販売会社が適用しています。

売買契約では、こうした取り決めをするのは義務ではなく任意となっているため、なかには契約書(約款)でなんらの取り決めもしない会社もあります。その場合は、すべて民法の原則にしたがって買主負担となってしまうので要注意。契約前に話し合い、契約書(約款)を細かく確認することが大切です。Q. 建築主・買主が契約時に注意すべき点はありますか?

A. 契約書(約款)をしっかり確認する

施工会社・不動産販売会社のなかには、義務づけられた取り決めを約款に記載していないケースや、国土交通省や建築業界団体、宅建業会のつくっている標準約款(約款の見本)に比べて、建築主・買主が不利な内容になっているケースも見受けられます。

万一の事態に備えられるよう、いざというときの取り決めについて、契約する前にしっかり確認することが重要です。建築主・買主側に追加の要望があれば、話し合うことも必要です。
国土交通省の「民間建設工事請負契約約款」はインターネット上で閲覧できるので、手元の契約書(約款)が適正な内容のものか確認するために比較してみるのも良いでしょう。

注文住宅でも建売住宅でも、国交省、建築業界団体、宅建業会等のつくる標準的な契約書(約款)は、いずれも当事者の公平にある程度配慮してつくられています(保険契約の取り決めについても同様)。
しかし、一方で、契約(約款)の内容は当事者が自由に取り決めることもできます。自然災害などの万が一の不測の事態に備えられるよう、契約書の内容をきちんと把握して、後悔しない家づくり&住宅購入に臨んでください。

取材協力:マイタウン法律事務所 吉岡津氏●民間建設工事請負契約約款
HP:http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000092.html
●マイタウン法律事務所 吉岡津氏
HP:http://www.e-bengo.jp/kenchiku/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/03/10/79031/

【住まいに関する関連記事】2人に1人が火災保険と地震保険を同時加入。地震保険は加入すべき?
16万戸を突破した「長期優良住宅」の実力は?
さくら事務所、「万が一に備える!マンションの防災対策ポイント」紹介
完成後も間取りを選べるマンションの新しい“買い方”を提案
住宅トラブルの相談が増加!もし入居後、ひび割れや雨漏りに気づいたら?

住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
SUUMOジャーナルの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。