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飲酒運転撲滅へ本気の福岡県、条例厳格化は功を奏す?

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1度の飲酒運転摘発で「依存症診断」の受診を義務づけ

福岡県議会が、飲酒運転で5年間に2度摘発された人に義務づけていた「アルコール依存症診断」の受診を、1度の摘発で義務づけることを定めた県飲酒運転撲滅条例改正案を2月定例会に議員提案し、可決されたとの報道がありました。同条例は4月1日に一部施行され、9月21日に本格施行されるとのことです。

現行条例は、飲酒運転で初めて摘発された人には受診の努力義務を課し、5年以内に再び摘発された段階で義務化するとともに、受診しない場合は5万円以下の過料を科しています。

改正条例では、1度の摘発で診断の受診か飲酒行動に関する指導の受講を義務化するとともに、義務を果たしても必要があれば知事による継続指導や受診勧告を可能とする内容になっています。

飲酒運転の厳罰化に取り組む福岡県、過去に「禁酒令」も

福岡で2006年に発生した飲酒運転事故をきっかけに、全国的に飲酒運転の厳罰化が進んだことは記憶に新しいところです。福岡県では、飲酒運転の撲滅に向けて、いくつもの施策をとっています。

その中には、福岡市職員に対して平成24年になされた、いわゆる「禁酒令」のように、憲法上の問題を含むとして弁護士会から是正勧告がなされたものもありましたが、これも含め、非常に積極的な施策で飲酒運転の撲滅を実現しようとしている地域であるといえるでしょう。

依存症の治療を行い再発防止を図ることには、一定の意味がある

今回は「飲酒運転を繰りかえす人はアルコール依存症の可能性がある」として複数回の検挙をされた人に医療機関の受診を求めていた規定を強化し、1度でも飲酒運転で検挙された場合に医療機関の受診を義務化するものです。

研究結果でも、2003年に筑波大学の小畑文也助教授らが、アルコール依存症患者110名を対象に調査した際にまとめた「アルコール依存症患者の飲酒運転に対する意識」によれば、対象者のほとんどに飲酒運転の経験があり、うち6割が交通事故を起こしたと回答しています。このため、アルコール依存症と飲酒運転には有意な関係があると思われます。よって、飲酒運転撲滅のためにアルコール依存症の治療を行い、再発防止を図ることには、一定の意味があるでしょう。

行き過ぎた規制に当たらないか、見極めも必要に

しかし、すべての飲酒運転がアルコール依存症によるものとは言い切れません。また、違反の罰則は明らかではありませんが、罰則のある義務を課することは、やや厳しすぎる規制ではないか、という疑問も残ります。

私も複数の飲酒運転事件の弁護人を務めたことがありますが、確かにアルコール依存症が疑われることもあれば、ストレスなどアルコール以外の原因があったり、飲酒運転の自覚がなかったり(二日酔い運転など)、飲酒酩酊により自分が何をしているかわからなくなったケースもあり、アルコール依存症の検査が「万能薬」とは言いがたい気がします。

飲酒運転が許されないことは疑いようがなく、また、その原因が依存症にあるのであれば、病気を発見し治療することも必要です。しかし、これですべての飲酒運転が撲滅できるわけではないことと、規制として過剰すぎるかどうかという視点をもって、今後の動向を見守っていかなければならないでしょう。

(半田 望/弁護士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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