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eラーニングで「うつ」対策、マンガの効果に期待

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eラーニングで「うつ」対策、マンガの効果に期待

インターネットを使った認知行動療法に「マンガ」を用いた

東京大学の研究チームが「インターネット認知行動療法(iCBT) eラーニングプログラム」を使って、うつ病の予防効果があった、との研究結果を発表しました。実は、インターネットを使った認知行動療法自体は国際的にすでに行われていて、その研究結果も多く発表されています。その中で、この研究が注目されるのは、特に「マンガ」を用いたことでしょう。

ちなみに 、認知行動療法というのは、感情・気分と思考および行動の三者が相互に密接に関係していることに着目し、思考と行動から、うつの気分を変えようとするものです。特に「非合理的な思考」が問題の原因と考え、その誤ったものの考え方(認知)を一つ一つ実証的に、また行動を通して正していきます。この考え方は、1960年ごろ米国の精神科医アロン・ベックと心理学者のアルバート・エリスによって、それぞれ独立して提唱されました。

認知行動療法は、事実に基づいた客観的な効果検証が短時間で可能

数ある心理療法の中で、認知行動療法が少なくとも米国で最も広く使われているのにはいくつかの理由があります。その第一は、実施法がマニュアル化・標準化されていることです。これは、結果を客観的に判定するときには大切なことですし、また、今回のようなインターネット上での自学自習的な学習にも向いています。さらに、他の心理療法と比べて実施が短期間ですむということがあります。いわゆる「事実に基づいた客観的な効果検証が短時間で可能」という利点です。

実は、これらの背景には、米国の医療保険事情が関係しているといった指摘もあります。というのは、米国では最近はいわゆる「オバマ・ケア」といわれる国の医療保険が出てきましたが、基本的にはHMOと総称される民間の保険会社が医療の内容を事実上決定する仕組みになっています。つまり、保険会社としては対費用効果の観点から、心理療法の効果が客観的・実証的に示され、また短期間ですむものを求めるわけで、それに認知行動療法が合致し、したがって保険会社もその普及を後押しした、というものです。

認知行動療法では課題・宿題が多く出るため、負担となりえる

しかし、認知行動療法にも問題があります。それは課題・宿題が多く出るなど、受ける人にとってはかなり心理的な負担になることです。ちなみに、私自身も米国デンバー大学カウンセリング心理学博士課程在学中に認知行動療法を学びましたが「受ける方もなかなかしんどい」と感じました。特にうつの人の場合は、すでに思考力やエネルギーが落ちているわけですから、さまざまな課題をこなすのは、それ自体が負担となりえます。

その点、今回の学習プログラムは「一コママンガ」を使っているとのことなので、学習者へはよりわかりやすく、心理的負担の軽いものとなっているといえ、良いアイデアだと思います。

マンガの持つユーモア(おかしさ)を利用できるかどうか

このように、認知行動療法の学習プログラムにマンガを導入したというのは、学習者の理解をより負担のないかたちで促進するという面で、前進と言えるでしょう。

今後の課題としては、マンガの持つ特徴をさらに利用できるかどうか。それはマンガの持つユーモア(おかしさ)です。これは「笑いが精神的な健康に良い」という原理に基づいていて、それは生理学的にも証明されていますし、また「笑いのヨガ」の普及にも実証的に認められます。

したがって、この今後はマンガを単に視覚的に理解しやすくするために使用するだけでなく、内容そのものをユーモア(おかしさ)のあるものに工夫していくことができれば、と考えます。ただ、うつの人はユーモア(おかしさ)を感じるのが苦手ともいえますし、逆に言えば、「だからこそ、うつ」ともいえるので、学習者にとっても挑戦かもしれませんが。

(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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