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巨額の印税を前に… 公認会計士でも金銭感覚「狂った」

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 昨日からお送りしている第66回は、公認会計士でありながら作家としてベストセラーを連発、ビジネス書から小説まで幅広い作品を執筆し支持を集めている山田真哉さんが登場。新作『あいるさん、これは経費ですか?』(KADOKAWA/刊)では、芸能人や作家たちの「お金」事情はどうなっているのか…?誰もが気になるところを小説として描いています!

 超人気アイドルグループの元センターがひた隠しにする真実とは? タレントと事務所がお金でもめるのはどういうとき? 芸能人の裏側をえぐる衝撃の作品についてお話をうかがいました。その中編をお送りします!
(新刊JP編集部/金井元貴)

■巨額の印税、公認会計士でも金銭感覚は「狂った」

――『あいるさん、これは経費ですか?』は芸能界、出版業界を舞台にした小説ですが、特に出版業界にはかなり切り込んでいると感じました。

山田:3曲目の「職業・新人作家」は某出版社の某新人文学賞をモチーフにしたのではないかと思われる書き方をしていますね(笑)。賞金が巨額で、実力が疑問視されている小説が文学賞を受賞するという。実際、内部の話は知らないですよ。本当は何が起きていたのか分かりませんが、こういう事件もありえるということです。

――最近も芥川賞と直木賞の発表がありましたが、賞金に税金はかかるのだろうかと疑問に思っていました。

山田:その部分は正確に書いています。賞の体裁によってケースが分かれるんですね。例えば先日お笑い芸人の又吉直樹さんが純文学作品を『文学界』に発表しましたが、もしあの作品がなんらかの賞を取った場合、その賞金は一時所得になるであろうと思われます。
ただ、あのような形で『文学界』が注目されて、大増刷という状況になったのは、出版界にとって嬉しいニュースです。結局、作品だけで評価されるわけではなく、誰が書いたかも重要になると思うんですね。芸人が芸人のことを書くというのは興味がそそられますし、何を書くんだろうと思うじゃないですか。
となると、やはり会計や税金のことも、会計士や税理士が書くべきだし、芸能界を舞台にするならば芸能人専門の会計事務所を経営している自分が書くべきだという、ある種の使命感を持ってこの本も書きはじめました。

――芸能界の「お金」にまつわるお話をもっと聞きたいのですが、例えば「一発屋芸人」の方々がいらっしゃいますよね。彼らは貯金などをちゃんとしているものなのですか? 税金が払えなくなるということはあるのでしょうか。

山田:貯金をしていない方が多いように思いますね。
うちの事務所で実際にあったのは、CMの仕事が決まって1000万円のギャラを受け取りました。そこで1000万円の車を買ってしまいました。「アナタ何考えているんですか。ギャラ1000万円だと、アナタの場合40%は税金で取られますよ」と。だから、買うなら600万円の車にするべきなんです。でも、1000万円入ったら1000万円使ってしまう。これは芸能人に限らず、一般の方々にもいると思います。

――プロ野球選手が大減俸になったとき、ファンがよく「税金払えるのかな」と心配するんですね。

山田:ありますよね(笑)。特にプロ野球選手の場合は個人事業主ですが、必要なものはだいたい球団から支給されますから、経費になるものが少ないんです。だから、例えば年俸2億円をもらっていても1億8000万円くらい所得があるということになります。
税金はこの所得に対してかかるので所得税というのですが、1億8000万円だと所得税は7600万円くらいかかります。これは確定申告をして、翌年の3月15日までに納めます。さらに、翌年の6月から翌々年の5月まで住民税が発生します。この住民税は1億8000万円の10%なので、さらに1800万円です。結構後にかかってくるものなので、意外とダメージが大きいんですよ。

――もしかしたら使いきってしまっているかもしれない。

山田:住民税を払うために借金する人もいます。芸能人などの個人事業主は節税対策で会社を設立したりするのですが、プロ野球選手の場合はかなり特殊で、球団との個人契約なるのでなかなか節税対策は取れないんです。だから、かなり厳しいと思いますよ。

――そもそも、プロスポーツ選手も芸能人も会計の知識を持ち合わせている人はほとんどいないわけですからね。

山田:そうなんですよね。お金持ちになりたいというハングリー精神があっても、税金に詳しいわけではないから、頑張っていっぱい稼いでいっぱい税金払う人がほとんどだと思います。税の知識は自分の稼ぎを守ることに直結するので、そういうところを踏まえてこの本も読んでくれると嬉しいですね。
もちろんそれは一般の方々も同じで、年収1000万円ってすごいと思うことかもしれませんけど、実際税金や社会保険なども引くと、手取りは700万円くらいになるんです。年収500万円だと400万円。そう思っていないと、ムダに気分だけが大きくなりますよね。

―― 一気に大金が入ると、やはり金銭感覚は狂ってしまうのでしょうか。

山田:狂ってしまう人はたくさんいますよ。例えば食費って、家族がいても月5万円から10万円くらいだと思うのですが、1ヶ月500万円という人もいますからね。外食をしてみんなにおごっていれば、それくらいになる。年間に直すと6000万円ですよ。ほかに洋服、アクセサリー、車とか、移動も全部タクシーを使ったり。家の近所のコンビニに行くのもタクシーに乗るんです。そんなことをしていると月に数百万円は余裕で消えていきます。
かく言う僕も『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が売れたときは、金銭感覚がおかしくなりましたからね(笑)

――山田さんでも金銭感覚が狂うんですか?

山田:そうなんです。通勤にタクシーを使っていました。当時、電車通勤をすると1回乗り換えがあったんですね。それが面倒で。タクシーだと片道1200円くらいなんですが、まあひどい話ですよね。

――お金があるからタクシーでもいいだろう、と。

山田:通勤だから経費で落ちますしね。それを1年くらい続けていたのですが、今思うと何であんなことやっていたんだろうと思います。

――お金に関する知識が豊富な山田さんでも、そうなってしまうんですね…。

山田:僕は公認会計士ですし、すごくケチケチしているので(笑)自分だけは狂わないと思っていたんです。それでもタクシー通勤をしてしまうわけですからね。
ただ、僕は経費になるものにしか使わなかったのですが、その部分の知識がないと、経費にならないものに使ってしまうことになるんです。例えば自動車を4台買って、4台分全てを経費で落とすのは難しいでしょう。だから、もし自動車を買いたいけれどどうすればいいのかという相談を受けたら、中古車を買いなさいとアドバイスします。経費に落ちやすくて、4年落ちの中古車ならば、1年で経費に計上できます。それを売るなり譲るなりして、また別の車を買えばいいわけです。
事前に税理士や会計士に相談できればそういうアドバイスを受けられるのでしょうけどね。

――売れていない段階から税理士や会計士のお世話になることってあまりないですよね。

山田:だいたいは売れてから相談に来るか、税務調査が入ってしまったことがきっかけで来るか、ですからね。つまりは末期の状態なんですが。芸能界で税理士なしで確定申告をやり続けるのは難しいですね。

――これが書かれているのが、4曲目「職業・作詞家」のエピソードですね。

山田:税務調査が入るまで何もしないというエピソードですね。こうなった挙句に、調査が入って申告漏れの事実がメディアに出てしまうと、大変な事態になりますから。そうならないための役目を税理士は担っているんです。
また、もう一つ、税理士には大きな役目があります。それは、芸能人の方々が活動しやすい環境をつくることです。お金の面からどういう戦略で仕事をやっていくのかを一緒に考えたりします。
また、売れていない役者さんや芸人さんに対して、いつ見切りをつけるのかアドバイスをすることも重要な仕事です。夢だけでは生きていけませんし、今後の人生設計もある。だから、「お金の面から考えたとき、あなたはこの先やっていけませんよ」と死神役を請け負うこともあるんです。「いつ諦めるの?」「今でしょ」という感じで。本人は線引きできないものですから、第三者がアドバイスをしないと踏ん切りがつかないんですね。

(後編に続く! マネージャーや事務所すらも把握できなかったアイドルの秘密とは!?)


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