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今週の永田町(2015.1.20~28)

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【26日、通常国会が開会】

今週26日、第189通常国会が召集された。イスラム教スンニ派過激組織「ISIL」によるとみられる日本人殺害脅迫を受け、与野党は、当面、4月の統一地方選をみすえての対決ムードを控え、政府の事件対応を後押しする協調路線で足並みをそろえた。自民党と民主党の国対委員長会談で、事件対応にあたっている安倍総理と菅官房長官、岸田外務大臣の審議出席について、事件の推移に応じて「柔軟に対応してほしい」との自民党の求めに、民主党が受け入れを表明。維新の党など野党も、事件解決に向けて政府に協力する意向を示した。

 ただ、野党側は、アベノミクスの是非とその問題点、後半国会で焦点となる集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障法制のあり方、今年発表する戦後70年談話を含む安倍総理の歴史認識などについて質すことで、攻勢を仕掛けていきたい考えだ。また、日本人殺害脅迫事件が収束した段階で政府側の事件対応について検証のうえ、問題があれば国会で質していく考えも示している。

 

 通常国会の前半は、来年度予算が年度内に成立するか否か大きな焦点となっている。政府・与党は補正予算の早期成立と来年度予算の年度内成立をめざしているが、野党側は徹底審議を求めている。予算成立後の後半国会では、農協改革や医療保険制度改革などの関連法案を国会に提出予定のほか、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案をめぐる論戦などが行われる。

安倍総理は、通常国会を「改革断行国会」と位置付け、「農業、医療、雇用、エネルギー分野での岩盤規制改革をさらに強力に進める法案を出す」と述べている。
 農協改革では、農家の自由度を高めるため、全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)による地域農協への監査・指導権限を法施行後3年以内に撤廃・任意団体へ転換するとともに、地域農協が「組合員に事業の利用を強制してはならない」という規制も新設する方向で、与党内の議論が進められている。また、農協の設立目的に「農業者の所得の増大」という表現も盛り込むほか、農業者以外の准組合員による農協事業利用の制限、JA全中や農産物を販売する全国農業協同組合連合会などを分割や株式会社化ができる規定も新設する。与党内には政府の農協改革案に慎重・反対論も根強く、政府・与党間の綱引きが行われているようだ。政府は、3月下旬までに農協法改正案を閣議決定のうえ国会提出する方針でいる。

医療保険制度改革については、実質的な混合診療拡大を盛り込んだ健康保険法改正案を国会提出するという。このほか、昨年11月の衆院解散により臨時国会で廃案となった女性活躍推進法案や労働者派遣法改正案なども再提出する。

 

 後半国会の最大焦点と目されている安全保障関連法案をめぐっては、関連法案を遅くとも5月の大型連休明けまでに国会提出することをめざして、2月から安全保障法制整備に関する与党協議会(座長・高村正彦自民党副総裁)を再開し、法案全体像や具体化について固めていく方針だ。

一方、民主党は、「従来の憲法解釈の範囲でやることには賛成の余地がある。しかし、明白な恐れで武力行使することには反対だ。大方針は決まっている」(枝野幹事長)と、政府が提出する安全保障関連法案が昨年7月の閣議決定にもとづく内容ならば関連法案に反対する姿勢を表明している。また、民主党としてのスタンスを明確にするため、集団的自衛権をめぐる党内議論を進めて意見集約を図るとともに、独自の対案を提示したいとしている。ただ、民主党内での意見の隔たりが大きく、細野政調会長が主張する安全保障基本法制定も党内に異論がでている。このため、民主党内でどこまで意見集約ができるかはいまのところ未知数だ。

 

 

【補正予算案の国会審議がスタート】

通常国会が召集により、第三次安倍内閣発足後として初めての国会論戦がスタートした。新内閣発足後は所信表明演説を行うのが恒例だが、国会日程が窮屈なものになっていることから、与党の提案により、安倍総理の演説は、来年度予算案の国会提出後に行う施政方針演説に一本化することとなった。予算の年度内成立をめざす政府・与党は、まず補正予算の成立に全力を挙げ、その後、来年度予算案を2月12日に国会へ提出して、同日中に安倍総理による施政方針演説など政府4演説を行う方針を固めている。

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継  

政府は、26日、生活者支援や地方活性化などを柱とする「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を裏付ける補正予算案(総額3.11兆円)を国会に提出し、麻生財務大臣が補正予算案に関する財政演説を衆参両院の本会議で行った。

麻生財務大臣は、補正予算案について「地域の実情に配慮しつつ消費を喚起すること、仕事づくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取り組みを通じて地方の活性化を促すこと、災害復旧等の緊急に対応を要することや復興を加速化することに重点を置いた」「経済の脆弱な部分に的を絞り、スピード感を持って対応することで経済の好循環を確かなものとするとともに、その成果を地方に広く早く行き渡らせることをめざしている」と説明した。そのうえで、「長引くデフレ不況からの脱却を確かなものとし、経済の好循環を拡大していくためには、本補正予算の一刻も早い成立が必要」と予算成立への協力を呼びかけた。

 

27日の衆議院本会議と28日の参議院本会議で行われた財政演説に対する各党代表質問で、野党は、「行きすぎた円安や実質賃金の減少など、国民生活を苦しめている」(民主党の前原議員)と、アベノミクス批判を展開して政策転換を迫った。消費税率10%への引き上げの1年半延期はアベノミクスの失敗が原因だとも指摘した。こうした批判に対し、安倍総理は「消費税率8%への引き上げにより、個人消費などに弱さが見られたことから延期を判断した」と説明したうえで、有効求人倍率や賃上げ率が高水準にある点などを示して「好循環が着実に生まれ始めている」と反論した。そして、「社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たし、国の信認を確保するため、10%への引き上げは景気判断条項を付すことなく確実に実施する。そうした経済状況をつくり出す決意で、三本の矢の政策をさらに前へ進めていく」決意を述べた。

 また、新規国債発行をせずに政策経費(国・地方)をどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化させる財政健全化目標の達成が困難になっていることについて、安倍総理は「歳出全般にわたり聖域なく徹底的に見直す」と強調した。麻生財務大臣も「2016年度予算の概算要求基準に間に合うよう、夏までのできるだけ早い時期に策定したい」と述べた。

このほか、野党側からは、補正予算案に盛り込まれている地方自治体向け交付金などはバラマキ施策だとの批判や、国会議員の定数削減や公務員人件費などの削減など「身を切る改革」の実行を求める意見も出された。さらに、日本人殺害脅迫事件への対応と中東情勢などについても安倍総理らを問い質した。

 

28日、衆議院予算委員会で補正予算案の趣旨説明が行われた。与党は、2日間の質疑を経て30日の衆議院本会議で可決、参議院送付をめざしている。参議院予算委員会での審議を経て、2月3日にも参院本会議で可決・成立させるシナリオを描いている。

一方、野党側は、統一地方選をみすえ、徹底審議を求めていく構えだ。27日に開催された野党9会派の国対委員長らによる会談で、「巨大与党にしっかりした審議を求めるには野党の協力が欠かせない」として、徹底審議に向けて野党間の連携を深める考えで一致した。また、来年度予算案の審議も十分な審議時間の確保を要求し、成立を急ぐ政府・与党を牽制していく考えだ。

 

補正予算案の審議日程をめぐっては、27日の衆議院予算委員会理事懇談会で、今週中にも衆議院を通過させたい自民党が委員会質疑を2日間程度とすることを主張したのに対し、民主党は5日間の開催を要求した。民主党は、「緊急性がなく、2014年度に前倒しすることで15年度の見かけ上のプライマリーバランスを確保しようという思惑も透けてみえる」(細野政調会長)と、補正予算案に反対する方針だ。維新の党も来年度予算案を提出する2月12日まで国会日程に空白をつくるのは望ましくないとして、民主党に同調した。

28日の理事懇談会で再協議した結果、29日と30日に安倍総理はじめ全閣僚出席のもと質疑を行い、30日に委員会採決することで合意に至った。30日、衆議院本会議に緊急上程され、同日中に衆議院通過・参議院送付となる見通しだ。

 

 

【予算委員会での論戦、国会日程をめぐる与野党攻防に注目を】

補正予算の早期成立の見通しがたちつつあるが、野党側は、衆議院予算委員会に舞台を移し、格差拡大や地方の疲弊などアベノミクスの問題点や、予算案に盛り込まれたバラマキ施策などに焦点をあてて安倍総理に論戦を挑む方針でいる。今後、予算委員会だけでなく、集中審議や党首討論の開催を与党に求め、国会論戦など通じて攻勢を強めることも視野にいれているようだ。

野党がどのようなテーマ・政策争点で論戦を仕掛け、議論をどの程度、深めていくことができるのか。国会日程などをめぐる与野党攻防とあわせて、ウォッチしていくことが重要だ。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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